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風のように早い 時の流れ

「あれ、止んだ?」
「うん、ピタっと止まったね。」
「空の神様が、雨のスイッチをオフにしたみたいだよ。」
「よしっ! じゃあ帰ろう!」
「レッツゴー!!」

二人のこざる達が、近くのスーパーに買い物に来て、
帰ろうと出口に行ったら、雨が降っていました。
こざる達は、折りたたみ傘を持っていたので、
このくらいなら傘をさして帰ろうとしたところ、
急にザーザーと大雨になりました。

「台風の影響だね。」
そう言って、こざる達は少しの間、待つと、
あっさり止んだのでした。

日曜日の今日、
こざる達は、これから台風がやってくるので、
お昼前に買い物を済ませようとスーパーへやって来たら、
きっと皆もそう思うのでしょう、たくさんの人で
大変に賑わっていました。

「日曜日だから、いつもよりも家族連れが多いね。」
こざる達は、皆がのんびりと買い物をしている様子が
とても好きです。

「あーでもない、こーでもないと品物を選んでいたり、店内に流れる曲を一緒に歌っていたり…」
「子供が調子にのってお母さんに怒られていたり、お菓子を買ってもらって嬉しそうにしている子供がいたり…」
「年配のご夫婦が協力して買った品物を袋に詰めていたり、若者のグループがジュースやスナックをたくさん買っていたり…」
「1人で買い物している人が、ちゃんと商品説明を読んで品物を選んでいたり…」

日曜日で、地元のスーパーだからなのか、皆、リラックスしています。

「どってことない今日のことも、後から思い出すと、
とても素晴らしい思い出の一日になっているかもしないよ。」
「よく今日という日は、もう二度ととないっていうけれど、
その通りなんだよ。」
二人は、うんうん頷きます。

こざる達が帰り道を歩いていると、あっという間に
太陽が顔を出して、青空が広がってきます。
先程の雨を降らせた黒雲は、もう遠くへ行っています。

「風で雲の流れが速いね。」
「うん、あっという間にどんどん流れていくよ。」
「時間の流れみたいだなぁ。」

スーパーで買い物していた人たち、
子供はどんどん大きくなり、大人もどんどん大きくなって…年をとっていきます。
また一緒に買い物しても、今の大きさ同士は今だけです。

「このトウカエデ、今は緑色の葉っぱだけど、
来月には赤く紅葉して、しばらくしたら枯れ葉になって落ちてしまうんだ。」
こざる達は、じっと緑色の葉っぱを眺めます。

「ついこの前、春にちっちゃな葉っぱを出したばかりなのになぁ。」
「今日は、もう白露だもんね。」
「人生は あっという間なんだよ、きっと。」
二人は、また うんうん頷きます。

小さかった こざる達が、りこちゃんに連れられてスーパーに買い物に来ていたのは、つい先日のことのように思えます。

「ただいまー。」
「おかえりー。」
こざる達は、こざるカフェに戻ってきました。

ラジオからは、静かに優しい歌が聴こえてきます。

「ねぇ もしも 君に もう一度 会えるとしたら
うまく言えるかな
いつかと 同じ 水彩の月の下でも
また その横顔 見てるだけだな」

秦基博の『水彩の月』です。

こざる達は静かに聴いています。

「話せなかったことがたくさんあるんだ
言葉じゃ足りなくて
僕は君へのこの想いにかわる明日を
あてもなく 空に 探してるよ」

「りこちゃんに、もうすぐお昼だよーって言ってくる。」
こざるちゃんは、そう言って、りこちゃんの部屋へ向かいます。

「気付けなかったことが たぶん あるんだろうな
ぬくもりに甘えて
僕も静かに悲しみさえも 受け入れながら
君のように 今と 向き合いたい」

「りこちゃーん、もうすぐお昼だよ。
美味しい野菜スープ作ったよ。ブドウもあるよー。一緒に食べよう!」

こざるカフェは、今日も ゆっくりゆっくり
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。


読んで下さって、どうもありがとうございます。
台風が去った後はまた晴れて暑くなるようです。
よい毎日でありますように (^_^)

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