見出し画像

大切なシュワシュワ

「また蝉の大合唱が始まったねー。」
「あ、雨が上がって明るくなってきてるよ。」

今朝は晴れていると思ったら、みるみる黒雲が広がって、
ザーッと雨が降り始めました。

「雨が上がったら、蝉たちが待ってましたとばかりに
鳴き始めたんだ。」

そうこう言っているうちに夏から秋へと季節が
移っていきます。
蝉たちも、夏が終わるのをわかっているのでしょう。

こざる達は、今日もいつものように、
りこちゃんと一緒に皆で賑やかに朝ごはんを食べました。
そして今は こざるカフェ開店の準備をしています。

「あぢー。」
こざるちゃんが そう言って、冷蔵庫を開けます。

「シュワシュワ飲む?」
「うん!」
「飲む飲む!」

シュワシュワとは、ラムネ飲料のことです。
こざる達は小さかった頃、ラムネを こう呼んでいました。
こざるちゃんは ラムネ瓶を 皆に渡します。

「かんぱーい!」

皆で そう言って、蓋を開けて飲みます。

「あー、美味しいねー。」
「シュワシュワするー。」
こざる達は、皆、嬉しそうです。

飲み終わったラムネ瓶を こざるちゃんが じっと見ています。

「ガラス玉?」
「うん、やっぱりとれないように出来ているんだね。」

以前、こざるちゃんは、他の子供たちと同じように、
ラムネ瓶の中のガラス玉が欲しくて、とろうとして
でも どうやってもとれませんでした。

「瓶を壊せばいいんだって。」
他の子供たちが教えてくれました。

でも、こざるちゃんはガラス瓶を壊しませんでした。
「だって、瓶もとっても綺麗だし、
ガラス玉をとるために割って壊すなんてできないよ。」

そして空っぽのラムネ瓶を大切に飾っておきました。

その様子を見ていた りこちゃんが、
「ちょっと違うけれどね」
そう言って、ビー玉をいくつか こざるちゃんにくれました。

こざるちゃんは大喜びで、ラムネ瓶の隣にビー玉を並べました。
光があたると、キラキラ輝いて、とっても綺麗です。

「あのラムネ瓶とビー玉、ぼくの宝箱に閉まってあるんだ。」
皆、うんうん頷きます。

「ぼく、ラムネ瓶を壊して中のガラス玉をとる方法は
全く思いつかなかったし、教えてもらったけれど、
絶対に壊したくなかったんだ。
もし壊して手に入れたとしても、ちっとも嬉しくなかったと思うよ。」
「うん、そうだよね。」
「そうだよ、わかるよー。」

こざるちゃんのラムネ瓶とビー玉の思い出、
大切な何かを教わった思い出です。

「りこちゃんも、シュワシュワ、飲むかなぁ?」
「ひゃっくり、出ちゃうかもよー。」
「ちょっと聞いてくるよ!」
そう言って、こざるちゃんが鼻歌を歌いながら、
りこちゃんの部屋へ向かいます。

「りこちゃーん、ラムネ一口飲む?
シュワシュワして美味しいよー。」

こざるカフェは、今日も ゆっくりゆっくり
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
ラムネという名前もノスタルジックで好きです。
よい毎日でありますように (^_^)



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?