「りこちゃん、昔話をテレビで見ようよ!」
こざるちゃんは、図書館で借りてきたDVDと
おやつを持って りこちゃんの部屋にやって来ました。

　りこちゃんも こざる達も『まんが日本昔話』が大好きです。
よく図書館で借りてきて、一緒に見ます。

　うとうとしていた りこちゃんは、パッチリと目を開けて、
ニコニコします。
こざるちゃんは、DVDをセットします。

「今日の おやつは、たまごボーロだよ。」
「うん。嬉しいね。」

　たまごボーロは、昔懐かしい甘さで、とても美味しくて、
口の中でスーッと溶けていくので、
高齢者でも 安心です。

「坊や、よい子だ ねんねしな  今も昔も かわりなく」

　昔から耳に馴染んでいる歌が流れて、
でんでん太鼓を持った 龍の子太郎が画面に映ります。

　りこちゃんと こざるちゃんは、たまごボーロを食べながら、
嬉しそうに見ています。

「むかーし むかし」市原悦子さんの声が聞こえてきます。
二人は『笠地蔵』を観ています。

　常田富士男さんの声も聞こえてきます。
二人の 声には表情があって、話し方、テンポ、抑揚、
本当に この番組にぴったり、まさに唯一無二の存在でした。

　りこちゃんも、ずーっと見て、聞いています。
若い頃、りこちゃんは演劇も大好きで、よく舞台を観に行っていたのです。

「笠のお礼に お地蔵さまがくれた贈り物で、
二人はいつまでも しあわせに暮しましたとさ。」
市原悦子さんの のんびりとした優しい声で 物語が終わります。

「ああ、りこちゃん、何度観ても、いいよねー。」
「うん、そうね、こざるちゃん。」
いいものは、繰り返し観ても、聴いても、ちっとも飽きません。

「また別のお話も、借りてくるね。」
「うん。ありがとう。」

昼間は曇って、雨も降った今日ですが、
夕方には明るくなって、お月様も顔を出しました。

　こざるちゃんは、さっき観た『笠地蔵』の優しい声が
お月様の方から聴こえた気がして、
しばらく見つめていました。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
子供の頃は、毎週、『まんが日本昔話』を楽しみにしていました。
よい毎日でありますように (^_^)