見出し画像

あの時があって、今がある

「わー、涼しいねー。」
「昨夜は、ちょっと寒く感じたよ。」

三連休の真ん中の日の朝です。
今日は晴れて気温が上がる予報ですが、
朝はとっても涼しいのです。

「昨夜は、皆でお月見できてよかったよね。」
「うん、りこちゃんも、とっても嬉しそうだったしね。」
皆、うんうん頷きます。

こざる達は 今朝も、いつものようにわいわいお喋りしながら、
朝ごはんの仕度をしています。

「入院している時も、病室の窓から、お月さま 眺めたよねー。」

りこちゃんは、数年前に入院して、手術をしました。
その後、無事に回復して、退院することができました。

「入院している時は、満月も三日月も関係なく、
月が見えたら お月見していたね。」
「りこちゃん、お月さま、見えるよ!って言ってね。」
お月さまは いつも見守っていてくれました。

「本当に元気になったよね。」
「昨夜も、お稲荷さんも おにぎりも、美味しい美味しいって
パクパク食べていたよ。」

あまりにパクパク食べて、こざる達が心配したほどです。

「食後の お月見まんじゅう、明日にしよう!って言ったら、
りこちゃん、残念そうだったよね。」
「そうそう!」
皆、大笑いです。

「体調崩して入院した時は、一気に食欲落ちたからね。」
「食べられなくなってきちゃって、それで大きい点滴つけたんだったっけ。」

りこちゃんは、食べる量が減ってしまって、
これでは危険だと、大きい点滴….. 中心静脈カテーテルという点滴を
つけることにしたのでした。

通常の点滴は腕や足の血管ですが、
中心静脈カテーテルは、ちょうど鎖骨あたりの
中心静脈に点滴を入れます。

その後、無事に手術も終えて安定してくるまでの
一ヶ月ほど、りこちゃんは その中心静脈カテーテルをつけていました。

「りこちゃん、食欲がなかった時も、毎日、リハビリを頑張ったんだよね。」
「栄養がしっかり行き渡っていなかった時は、体を動かすのは相当辛かっただろうけれど、
黙々と頑張っていたよね。」
「うん、大きい点滴つけて、頑張ったよね。」
「りこちゃん、実はすごい頑張り屋さんだったんだよ。」
皆、うんうん頷きます。

「あの時、理学療法士さんが言ってくれた言葉!!」
こざるちゃんが言います。

「あの言葉に救われたよね。」
皆、うんうん頷きます。

その大きい点滴、中心静脈カテーテルをつける決断をしたのは
こざる達です。

りこちゃんの体力が回復してきて、
外した後も、
こざる達はずっとカテーテルをつけたことを良かったのかどうか
考えていました。

「もしかして、"延命治療"だったのかなぁ?
りこちゃん、望まなかったかなぁってね。」

そんな話をリハビリしている時に、担当の理学療法士さんに話しました。

すると その理学療法士さんはサラッと言いました。
「いやいや、あれがあればこそ ですよ。」

こざる達は、はっとしました。
そうなのです。
あの時、中心静脈カテーテルをつけたからこそ、
今、こうして りこちゃんがいるのです。

手術する体力もついて、そして 回復して無事に退院できて、今があるのです。
今、こうして一緒に暮らせているのです。
延命ではなく、救命だったのです。

「何でも あの時があって、今があるんだよ。」
皆、うんうん頷きます。

けれども、それが延命だったとしても、
それぞれの選択なのだと思います。
これが正解で、これは間違いということではないのだと思います。

朝ごはんが出来たようです。

「りこちゃん、呼んでくるね。」
こざるちゃんが、鼻歌を歌いながら りこちゃんの部屋へ向かいます。

「りこちゃーん、朝ごはんが出来たよー。
今朝は、ハムエッグに 野菜と豆腐のサラダだよ!
昨夜、食べきれなかった お月見まんじゅうもあるよ!
皆で一緒に食べよう!」


こざるカフェは、今日も ゆっくり始まって
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
明日は敬老の日ですね。
よい毎日でありますように (^_^)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?