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うちに来ればいいよ

「また大雨なんだ。」
「短時間で一気に降ることが多くなったね。」
「スコールっていうのかな? 」
「以前とは気候が変わってきているんだよね。」

今夜も りこちゃんとこざる達は いつものように
楽しくお喋りしながら、 皆で一緒に夕飯を食べています。
テレビでは夜のニュースをやっています。

「りこちゃん、こっちの餃子は野菜たっぷり、キャベツたっぷり餃子だよ!」
「あら、美味しそうね。」
「はい、どうぞ。少しずつ、ゆっくり食べてね。」
こざるちゃんが、りこちゃんのお皿に野菜餃子をとってあげます。
りこちゃんが大きな口を開けて、パクっと食べます。
「うん、美味しい!」
皆、にこにこ嬉しそうです。

「そうか、今週で夏休みが終わるからだね。」
「何々、『8月31日の夜に』っていうんだ。」

テレビでは、子供達が夏休み最後の夜の不安で憂うつな気分を分かち合おうと
「#8月31日の夜に」というハッシュタグを立ち上げたと言っています。
「学校に行きたくない」「生きるのがつらい」といった気持ちを吐き出し、
共有できる場を目指しているとのことです。

「昔だって、夏休みが終わるのが嫌で、
学校に行きたくないよーって思う子供は普通にたくさんいたと思うけれど、
今は、学校に行きたくないことの度合いが違い過ぎるよね。」
「毎日、苦しんでいる子供達が多いんだよ。」
皆、うんうん頷きます。

「居場所がないって、辛いよね。」
「それがずっと続くんだもん、心身共に参っちゃうよ。」

「うちに来ればいいよ。」
じっと聞いていた りこちゃんが言います。

「りこちゃん、子供達のこと?」
「そう。」

りこちゃんは、子供が大好きです。
テレビを見ていて、子供達の悲しそうな顔、辛い顔、無表情の顔、
そして話を聞いていて、居場所がないなら うちに来ればいいと
思ったのです。

「そうだよね、ここに来れば安心していられるし、
りこちゃんも、ぼく達もいて、いつも賑やかだし、
美味しい食べ物を皆で楽しく食べられるしね。」
皆、うんうん頷きます。

こざるカフェは、空想でやっているカフェです。
実在していないのですが、もし実在していたら、
そんな子供達の居場所になりたいと思います。

「昔、よく近所の子供が学校帰りに来て、おやつ食べて、
夕飯食べて、テレビ見て、仕事帰りのお母さんが迎えにくる頃には
寝ちゃったりしていたこともあったねー。」
「あった、あった。」

狭い家でしたが、よく近所の子供達が来ていました。
昔は、そういうことも珍しくはなかったように思います。

「以前、りこちゃんも よく言っていたけれど、
人生には楽しいことも辛いこともたくさんあって、
時には我慢しなければいけないこともあるけれど、
でも無理する必要がないこと、我慢する必要がないこともあるから、
変に自分が悪いって思って頑張らないようにって。」
「そうだよ、昔の根性論の時代じゃないよ。」

そういえば、りこちゃんは戦前生まれですが、
所謂、根性とか根性論とか、そういった類のことは嫌いでした。

「うんとね、りこちゃん自身が 我慢すること、耐えることが
好きではなかったからね。」

およそ根性とは縁がない りこちゃんです。

「人生は楽しむために、嬉しいとか幸せって感じるために
あるんだよね。」
「すごく辛い時でも、また必ずいいこと、楽しいことがあるから、
絶対に命を落としてはいけないよ。」


皆、夕飯を食べ終わったようです。

「じゃあ食後のお茶、淹れてくるよー。」
「お願いねー。」

お茶当番の二人のこざる達が台所へ向かいます。

「りこちゃんらしいや。」
こざるちゃんが台所でラジオをつけながら言います。

「本当に、りこちゃんらしいよね。」
「そういう大人がたくさんいるといいなって思うよ。」
「うん、絶対にいるよ。」
「ねー。ちょっと水ようかんも持って行こうか?」
「うん、そうしよう!」


こざるカフェは、今日も ゆっくりゆっくり
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
大雨の被害がないようにと思います。
よい毎日でありますように (^_^)

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