見出し画像

お月さまは 同じように 輝いて

静かな日曜日の夜です。
りこちゃんと こざる達は、
今日も いつものように 皆で一緒に 楽しく 夕飯を食べました。
りこちゃんは、もう すやすや 寝ています。

こざる達は、お茶やコーヒーを飲みながら、
おしゃべりタイムです。

「りこちゃんには、言わないでいいよね。」
「うん。言わない方がいいよ。」

こざる達が話しているのは、りこちゃんの昔からの友人、
さとこちゃんのことです。

さとこちゃんは、りこちゃんと同い年、
80近くになるまで、1人で海外旅行へ出かけたりして
とっても元気に楽しく過ごしていました。

80を過ぎて、心臓の具合が少し悪くなって、しばらく入院しましたが、
元気になって退院して、りこちゃんも、こざる達も安心しました。

けれども、また体調が悪くなってしまって、
一人暮らしの さとこちゃんを心配した親戚の方達が、
施設を手配して、さとこちゃんは入ったようなのです。

「さとこちゃんの様子がわからないのは、すごく心配だけど、
そのまま りこちゃんに話したら、
りこちゃんは、もっと心配しちゃうからね。」
こざる達は、皆、うんうん頷きます。

「何年か前に、さとこちゃんが 遊びに来てくれたことがあったよね。」
「うん、ちょうど、今頃の時期じゃなかったかなぁ。」
「そうだよ、寒くなくなって、まだ暑くならないうちにって。」

そうなんです。
高齢者の合い言葉は「季節がよくなったら会いましょう。」なのですが、
今は「いい季節」の期間が短くなってしまって、
なかなかちょうどいい時期がないのです。
寒いと思ったら、急に暑くなる、そんな具合です。

「それで、帰りに、みんなで駅まで送っていったよね。」
「うん。電車がラッシュで混む前にって、少し早めに帰ったんだよ。」
「さとこちゃんが、改札を入って、それで歩いていって、
その後ろ姿を りこちゃんは改札のところで、
じっと ずっと見ていたなぁって、
ぼく、今でも、駅を通ると思い出すんだ。」
こざる達は、皆、うんうん頷きます。

「さとこちゃん、ズンズン歩いていって、
それでホームに下るエスカレーターのところで振り返って、
手を振ってくれたよね。」

こざる達は、その様子を思い出しています。
さとこちゃんに会うのは、あの時が 最後だったのかもしれません。

「うんと、ちょっとだけ ビスケット食べようか?」
みんなが寂しい気持ちになったのを 少しやわらげようと、
こざるちゃんが 明るく言います。

「うん、お茶もおかわりしようよ。」
「うん、そうしよう。」

窓の外は、きれいなお月さまが輝いています。
今夜は満月です。
さとこちゃんの ところでも、
同じように お月さまが輝いています。

こざるカフェは、今夜も ゆっくりゆっくり、
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
月を見ると、皆を静かに見守ってくれていると感じます。
よい毎日でありますように (^_^)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?