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気持ち新たに ランチタイム

今日は朝は晴れていたのですが、
だんだんと雲が広がってきて、
昼下がりには完全に曇ってしまいました。

「ところによっては、にわか雨が降るかもしれませんって
天気予報で言ってたよー。」
「この辺りも降るかなぁ。」
「雨雲は見えないけれど、どんよりとしてきたねー。」

天気は目まぐるしく変わります。
自然現象ですから、予報通りにはいきません。

こざる達は、いつものように 賑やかにお喋りしながら、
夕飯の仕度をしています。

「そろそろあのお嬢さんが来るかなぁって思ってるんだけど、
今日は来なかったね。」
「明日は来るかな?」

こざる達が話しているのは、先月、ランチタイムに来てくれた入社2年目の若いお嬢さんです。
とってもいいカフェですね、と喜んでくれて、
営業の仕事で、この辺りに15日頃に来るので、
また来月来ますと言ってくれました。
こざる達は、いつも その言葉通りに受けとります。

「もしかしたら、お世辞というか、挨拶代わりにそう言っただけなのかなぁ。」
「そんなことないよ。」
こざるちゃんが、きっぱりと言います。
「また きっと来てくれると思うよ。」
「そうだね、きっと来てくれるね。」
こざる達は、皆、うんうん頷きます。

そのお嬢さんは、昨年入社して、希望通り企画部門に配属になり、
新人の時は企画の仕事を一所懸命頑張りました。
2年目になって、どんな仕事が出来るかワクワクしていたのですが、
急な人事異動で、営業職となりました。

「すごく落ち込んだんだけどね。」
お嬢さんは言いました。
「でも、ちょっとやってみよう!って、思い直したの。」
こざる達は、静かに聞いていました。
「こうして、素敵なカフェにも出逢えたしね。」

人生もまた天候と同じように、目まぐるしく変化します。人生こそ予定通りにはいかないことが多々あります。

こざる達は、お嬢さんの嬉しそうな笑顔を思い出しています。
「きっとまた来てくれるよ。」
こざる達は、皆、うんうん頷きます。

「後から、あの時、営業職を頑張ってやって良かったって
そう思える日が 必ずやってくるよ。」
「いろんな経験、体験をしておくと、鬼に金棒だよ!」
こざるちゃんが そう言うと、皆が笑います。
「あれ? おかしい??」
「あのお嬢さんに、"鬼に金棒"はないんじゃない?」
「そうかー、鬼じゃないよねぇ。」
こざる達は、皆、大笑いします。


ラジオからは、やさしい歌声が聴こえてきます。

「日向で語らう人々は急ぎ
また白いビルに吸い込まれる
私と鳩だけ舗道に残って
葉裏のそよぎを眺めていた」

松任谷由実の『ランチタイムが終わる頃』です。

夕飯の仕度が出来たようです。

「りこちゃん、呼んでくるねー。」
こざるちゃんが、りこちゃんの部屋へ向かいます。

「かすかに響いてくる地下鉄に乗り
早引けをしたい そんな午後です」

「りこちゃーん、夕飯、出来たよ。
今日はハマグリのお吸い物、作ったよ!
皆で 一緒に食べよう!」

「ほらチャイムをならし コーヒー冷まし
もうすぐランチタイムが終わる」

こざるカフェは、今日も ゆっくりゆっくり
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
地震、心配です。どうぞ皆さま、ご無事で。
よい毎日でありますように (^_^)

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