見出し画像

じっくり ゆっくり コンソメスープ

今日は雨が強く降ったり、止んだり、また少し降ったり、
そして夕方になって、雨が上がりました。

こざる達は、皆でわいわい おしゃべりをしながら、
夕飯の仕度をしています。

「今夜はコンソメスープを作っているんだ。」
美味しくなるようにと こざるちゃんが早めに作り始めました。
「玉ねぎが ちゃんと飴色になるように ゆっくり 炒めたんだよ。」

コンソメスープは、とてもシンプルなスープです。
材料も特別なものではなく、作り方も難しくはありません。
シンプルな料理を 美味しく作るには、
じっくり ゆっくり 手間ひまかける必要があります。

「ぼく達、昨夜、りこちゃんが寝てから いつものように
皆で お喋りしていたんだ。」
毎晩、りこちゃんが寝た後は
皆で お茶を飲みながら のんびりお喋りタイムなのです。

「それで、ぼくが今、読んでいる本を皆に見せて、
それで じゃあ 明日はコンソメスープを作ろうってことになったんだ。」

それは青山ゆみこさんの
『人生最後のご馳走 ー 淀川キリスト教病院 ホスピス・こどもホスピス病院のリクエスト食』
という本です。

「この本の中で "はじめに"として書かれているんだけれど、
青山さんの大先輩が 闘病生活をしていて 亡くなる半月程前に、
その方が ある洋食店のコンソメスープを飲みたがっていると聞いて、
青山さんがそのスープを先輩に持って行った話が紹介されているんだ。」

その先輩は、ほとんど食事がとれていない状態だったのですが、
青山さんがスープを持ってきたと言うと、
「ぱっと目を輝かせて今すぐ飲みたい」と言い、
白いお皿を病院で借りてきてスープをいれてもらって、
眺めのよい来客スペースに移動しました。

「ちょっと読むよ。」
こざるちゃんは、そう言って一節を読みました。

"「ああ、アラスカのダブルコンソメやなあ。
先輩は低く唸り、まぶたを閉じて香りを堪能するように大きく息を吸い込んでから、
ほんの少しスプーンですくったスープを唇にそっとつけて、それを舐めた。
「うまいなぁ、うまいなぁ。ありがとう」
私の目をのぞきこむようにぐっと見てにっこり笑い、
再び目を閉じて、何かを思い出しているようだった。
(略)
先輩の顔を見たのはその日が最後で、私の中にはコンソメスープを飲んだときの
「うまいなぁ、うまいなぁ。ありがとう」の声と相好を崩した姿がいつまでも残っている。"

「ぼく達、この話を読んだら、
以前、りこちゃんが入院して手術した時のことを思い出しちゃって。」
「りこちゃんは、食べることが大好きなんだけれど、
入院して手術して、体力がすごく衰えちゃってね。」
「食べたいから食べようと頑張るんだけれど、
でも食べる体力が足りなくて、それでも少しずつ回復してきて、
だんだんと食べられるようになって、
そしたら みるみる元気になって、それで退院したんだよ。」
そうでした。

「それで ぼく達、この本を読んで、
りこちゃんが食べたいものを 美味しく食べられるようにしよう!って
改めて思ったんだ。」
皆、うんうん頷きます。

夕飯が出来たようです。

「あ! ちょっと夕焼けになったよー。」
曇っている空の西の彼方が、少しだけ夕焼けに染まっています。
「曇っていても、その雲の上は夕焼けなんだ!」

「りこちゃん、呼んでくるねー。」
こざるちゃんが、ハミングしながらりこちゃんの部屋へ向かいます。

「りこちゃーん、夕飯できたよ。今日は、コンソメスープ作ったよ!
皆で一緒に食べよう!」

こざるカフェは、今日も ゆっくりゆっくり
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
食べたいものを美味しく食べることは、
とても嬉しいことで、そして生きる力になります。
よい毎日でありますように (^_^)

この記事が参加している募集

推薦図書

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?