役場
役場の午後は長い。
職員の作業は、村で採れた芋を洗い、芋版を作ることに費やされる。彫刻刀を用い、彼らは丁寧に芋版を作る。村の名前を間違えないように、時間をかけて慎重に彫り上げる。
こうして完成した芋版で試し捺しをしてみるには、涙が必要だ。職員たちは目を閉じて、昔のことを思う。悲しかったことを思い出し、泣いてみようとする。
それでも涙が出ないときは、窓の外を見る。雨の日も風の日も、ただそこに立っている案山子を見る。
役場の午後は長い。案山子を眺めているうち、涙はほろほろと流れてくる。その苦い涙を集めて芋版に塗り、捺してみる。だれにも見えない村の名前が紙に捺されたら、もう仕事はない。役場の長い一日が終わる。
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