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【Love Is】(1968) Eric Burdon & The Animals エリック・バードンの名唱が光る後期アニマルズの名盤

アニマルズと言って思い浮かぶのが「朝日のあたる家」「悲しき願い」といったヒット曲です。1960年代のブリティッシュ・インベンションの波に乗ってビートルズ、ストーンズらと同じ時代に登場。日本でもエリック・バードンの黒いフィーリングに溢れた歌声で人気を博しました。

そんなアニマルズのマニアックな1枚。実は私、19才の時に初めて買ったアニマルズのアルバムが本作でした。初期のヒット曲を聴き親しんではいても、このサイケデリックなアニマルズにはハッキリ言って驚愕…。時代の波にどっぷり浸かったサウンドは好みの分かれる所ですが、彼等の最終作に当たる本作、これはやはり名盤です。

アニマルズは元々黒人音楽志向が強く、自作曲よりブルース、リズム&ブルースの古典を取り上げることを得意にしたバンドでした。しかしメンバーチェンジが激しく、1966年には一度解散。

その後オリジナルメンバーはエリックのみという状況で、エリック・バードン&アニマルズとして再出発しますが、折しも変わりゆくロックシーンの中で、活動の拠点は米国カリフォルニアへ。これ以後は音楽性が一変、当時華やかなりしサマー・オブ・ラブの中に身を投じたサイケデリックなバンドへと変貌するのでした。
「サンフランシスコの夜」「モンタレー」「スカイ・パイロット」といった自作のサイケヒットを生み出すアニマルズは、米国西海岸のフラワームーブメントの一角として君臨していきます。

エリック・バードン&アニマルズ名義としては5枚のアルバムを発表しますが、その最終作となるのが1968年12月に発表された本作です。2枚組の大作。この時のメンバーが、

エリック・バードン(vocal)
バリー・ジェンキンス(drums)
ズート・マネー(bass, organ, piano)
アンディ・サマーズ(guitar)
ジョン・ウェイダー(guitar, violin)

エリックとバリー以外は新メンバー。何と言っても注目すべきはアンディ・サマーズの参加です。後年、あのポリスで大成功を収めるアンディですが、ダンタリアンズ・チャリオットという英国サイケバンドの同僚だったズート・マネーの誘いから参加したとのこと。プロ駆け出しの彼のプレイが聴けるという意味でも、本作は興味深い作品といえます。

とはいえ、主軸はやはりエリック・バードンの歌です。本作は製作時間に余裕がなかった為、カバー曲を中心に纏められた模様。暫く封印していたブラック・ミュージックの古典も取り上げ、この時代らしいサイケデリックな色彩に焼き直した眩いばかりの世界です。

MGMレコードの米国初回盤
右端がアンディ・サマーズっぽい??
ジャケット内側も如何にもサイケ…


Side-A
①"River Deep, Mountain High"

オリジナルはアイク&ティナ・ターナーが1966年に発表したソウルクラシック。作曲にフィル・スペクターが加わっていたとは初耳。このアニマルズ版はウォール・オブ・サウンド以外はオリジナルを踏襲。エリック・バードンがソウルフルでネチっこい歌唱で迫ります。まさに水を得た魚。7分半と長尺ですが途中の構成も飽きさせません。本作のベストトラック。名唱ですね。


②"I'm an Animal"

当時、丁度頭角を現していたスライ&ザ・ファミリー・ストーンの3rd【Life】(68年)収録曲。イントロの掛け声からしてスライらしい一曲。ブラック・ミュージックの動向、とりわけこの新しい才能にはエリック・バードンも注目していたのでしょう。

Side-B
①"Ring of Fire"

オリジナルは何とカントリー歌手ジョニー・キャッシュの1963年のナンバー。
ボレロのリズムとコーラスが響き渡る深淵な前奏に導かれて、御大エリック・バードンが登場。囁くような歌い口からエモーショナルな激唱まで、情感たっぷりに歌いあげます。
ゴスペルとサイケデリックを融合した?ような厳かな佇まいにグイグイ惹き込まれます。崇高な世界ですね〜。


②"Colored Rain"

英国のロックバンド、トラフィックの1st収録曲。アニマルズは実に9分半に及ぶ大作へと拡大解釈。中盤で長〜い即興ギターソロを聴かせるのはアンディ・サマーズ。ロングトーンによるフレーズでジワジワと攻めます。後半はホーンセクションも入り乱れてクライマックス。本作のハイライトとも言える壮大なサイケ&ブルー・アイド・ソウルの世界です!


Side-C
②"As the Years Go Passing By"

アルバート・キングで知られるスローブルースの古典。オリジナルはやはりブルースマンのフェントン・ロビンソンで1959年。
ズート・マネーの物哀しいピアノをバックに語るように歌うエリック。左右から2本のギターソロが掛け合います。アンディ・サマーズともう1人はジョン・ウェイダー(後にファミリーに加入)。どっちがアンディかは不明です。私は右からのワウギターのプレイかと思うのですが…。いずれにせよポリスからは程遠い、貴重な若き日の狂おしいブルースプレイです。

本作発表の直前にアニマルズは2度目の来日を果たしますが、興行側とのトラブルに巻き込まれて、僅かな公演をこなして急遽帰国。謎の解散に終わってしまいます。以後、エリック・バードンはウォーを結成。
英国ロックの徒花のような本作ですが、ニューロック、アートロックの熱量が伝わる何とも愛おしい1枚だと思ってます。

なぁエリックよ、今日はnoteのみんなのために歌ってくれよ。アンタ最高だぜ。

では、Merry Christmas〜!

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