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【First Taste of Sin】(1972) Cold Blood D.ハサウェイがプロデュースしたベイエリア・ファンクの名盤

1960年代のサンフランシスコ湾岸地域からは個性的なバンドがたくさん出現しています。
スライ&ザ・ファミリー・ストーン、サンタナ、タワー・オブ・パワーなどなど…、人種も性別も音楽性も混ぜ合わせたユニークなバンドが目白押し。

コールド・ブラッドもそんな代表格の一つです。紅一点リードボーカルのリディア・ペンスの渋い喉と、ホーンセクションが持ち味のソウルフルな大所帯バンド。
これと言った大ヒットも無く余り知られていませんが、これがなかなかどうして熱のある音楽をやっているのです(^^)

70年代までに6枚の作品を残していますが、中でも3枚目の本作はパンチが効きまくって歌心もあり、彼らの最高傑作といって文句のない素晴らしい内容です!

コールド・ブラッドは、フィルモアの主催者ビル・グラハムが設立したサンフランシスコレーベルから1969年にデビュー。
フィルモア閉幕コンサートに出演するなど注目される中、メジャーレーベルのリプリーズから声が掛かり移籍。第一弾として発表したのが本作【ファースト・テイスト・オブ・シン】です。

この時点でメンバーは9人。4管のホーンセクションに、ボーカル、ギター、鍵盤、ベース、ドラム。
音楽性は同じベイエリア出身のタワー・オブ ・パワーに比べてロック寄りでしょうか。
ホーンの使い方などはシカゴやB,S&Tに近い感じがあると言えます。

さて本作、何より有名なのがダニー・ハサウェイのプロデュースだったことです。
当時ニュー・ソウルの旗手と言われたダニーは演奏、曲提供もしており、かなり手厚いバックアップ。それまでになく引き締まった完成度の高い作品に仕上がっています。
ゲストミュージシャンも多く、ラテン味が加わっているのも本作の特徴です。

コールド・ブラッドは常に人材が流動的で、本作での新メンバーは何と4人。
しかしオリジナルを書けるライター、演奏力からしても本作はかなり恵まれたメンツだったと思います。
特にドラム、ギター (マイケル・ササキという日系人の方) が醸し出す細かなノリは抜群で、そこへ鍵盤、ホーンセクションが被さって、前のめりで堂々たるサウンドを聴かせています。

そして主役のリディア・ペンス!その麗しいルックスからは想像の出来ない、ドスの効いた歌唱には圧巻です!
当時はジャニス・ジョプリンと比較されたようですが、ジャニスほどのアクは無く、ハスキーな中にもマイルドさ残る声質で私はかなり好みです(ルックス込み)。

好条件が揃ったコールド・ブラッドの3作目は、緩急をつけながらも、結構な熱量のベイエリア・ファンクです(^^)

ワーナー・パイオニア初回見本盤。
邦題【悪の極致】1972年7月発売(P-8253R) 
日本盤なので音はイマ一つですが、潰れ気味な音も味があります。割とクッキリしています。


Side-A
①"Visions" ( Baldwin, Boroquez) 3:23
②"Lo and Behold" (Taylor) 4:12
③"Down to the Bone" (Hull, Stoltie) 5:45
④"You Had To Know" (Hathaway) 5:50

Side-B
①"My Lady Woman" (Hull, Stoltie) 4:04
②"No Way Home" (Hull, Matule) 3:25
③"Inside Your Soul" (Haskett) 3:28
④"All My Honey" (Hull, Stoltie) 3:31
⑤"Valdez in the Country" (Hathaway) 3:44


A-①"Visions"
本作はA面の流れがとても秀逸なんです〜。
一曲目はミディアムテンポのジャジーなブラス・ロック風。ホーンセクションの使い方、曲展開、ギター音色など同時代のシカゴをお手本にした感じがしますね。


A-②"Lo and Behold"
これはイイ!ジェイムス・テイラー【スイート・ベイビー・ジェイムス】収録曲で、恐らくダニーが進言してのカバーでしょう。
線の細いJTとは一味違った、この曲の持つゴスペルライクな雰囲気を目一杯押し出した大胆なカバー。ソウルフルで圧倒されます!


A-③"Down to the Bone"
前曲からメドレー仕掛けで始まる、激しいラテン・ファンク・ロック!この泥臭さ最高!
サンタナ、アステカのメンバーだったコーク&ピート(シーラEの父親)のエスコヴェド兄弟がパーカッションでゲスト参加。
男声はトランペット奏者。これを歌い繋げるリディアのドスの効いた喉にシビレます〜。再結成でも取り上げた代表曲です。


A-④"You Had To Know"
本作きっての珠玉のソウルバラード!ダニー・ハサウェイ提供曲。これが泣かせるんです〜。ピアノもダニーでしょうか。
リズムが取り難く、譜割りは9拍子との事。こんな難曲を見事に歌いこなすリディアの歌唱力に脱帽です。レニー・ウィリアムス期のタワー・オブ・パワーが演っても似合いそうですが、何処かアーシーさが香るのもこのバンドならでは。名バラードです(^^)
ここまでのA面、駄曲無しと断言します!


B-②"No Way Home"
こちらはラテン風味のジャズ・ファンク調。リディアのノリの良さが際立ちます。呼応するホーンセクション、んー、絶妙です。


B-⑤"Valdez in the Country"
もう一つダニー・ハサウェイの提供曲。これもジャズ・ソウルのようなノリがお洒落。
ダニーの作品【愛と自由を求めて】(73年)にも収録されたインストですが、個人的にはコールド・ブラッド版の方が好きですね。


左から4番目がリディア・ペンス。小柄な女性です。

大手レーベルからのリリースでしたが、セールス面では振るず(全米133位)。
それでもリディア本人は、ダニーから色々と学んだ思い出深い作品だと語っていました。
人種も音楽も入り交ざって坩堝と化した、ベイエリア周辺の汗臭〜い熱気がビンビンと伝わってくる隠れた名盤です(^^)


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