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【Steppenwolf】(1968) 「ワイルドでいこう!」収録の米国ハードロックの祖1st

高校時代にお小遣いでこのアルバムをレコードで買ったのをよく覚えています。目的はただ1つ。"Born to Be Wild"(ワイルドで行こう!) を聴きたかったから…。
映画《イージー・ライダー》は観たことがなくても、当時(80年代末)でもラジオや深夜枠のTV番組で時々耳にする曲でした。まさに反体制なイメージがピッタリ。ロックの歴史に燦然と輝く永遠のロックアンセムですね。

裏ジャケット

本作はステッペンウルフのデビュー作。サイケデリック時代に登場した、元祖アメリカンハードロックとも言われる名高い一作です。

バンドの前身はカナダ出身のスパロウズというブルース系ロックバンド。解散後にダンヒル・レコードの社員だったガブリエル・メクラーがリードボーカルのジョン・ケイに声をかけたことからバンドを再編成。ステッペンウルフ誕生となったようです。

結成時のメンバーは、
ジョン・ケイ(Vocal, Guitar)
マイケル・モナーク(Lead guitar)
ラシュトン・モリーブ(Bass)
ジェリー・エドモントン(Drums)
ゴルディ・マックジョン(Piano, Organ)

この内、元スパローズのメンバー、つまりカナダ人はジョン、ジェリー、ゴルディの3人。
私は昔、ジョン・ケイは東ドイツの生まれと読んだことがありましたが、彼は幼少期に母親と西ドイツに逃れて、その後カナダへと渡った移民だそうです。ステッペンウルフを売り出していくガブリエル・メクラーも生まれはパレスチナでやはり移民。

如何にも米国らしくてマッチョな荒くれ者といった印象のステッペンウルフですが、実像は米国に憧れた異国の人間たちが作りあげたイメージだったとも言えそうです。

因みにガブリエルは、ダンヒルでスリー・ドッグ・ナイトも手掛けるほか、ジャニス・ジョプリンの【コズミック・ブルース】のプロデュースも担当。本作でもブラックミュージックに根づいたロックをサイケデリックに染め上げた音作りが特徴的です。


(アナログレコード探訪)
〜 "Born to Be Wild" 表記無し、有り〜

本作には2種類のジャケットが存在します。
初期盤は銀ホイル地にメンバーが写っただけのもの。その後 "Born to Be Wild" が当たり、ヒット曲の収録を表記したジャケットに切り替わっています。

表記無しタイプ
表記有りタイプ (Discogsより)

私が80年代末に買った盤も「表記有り」でした。では、この "Born to Be Wild" 表記有りのジャケットは一体いつ頃出てきたのか、ちょっと考えてみました。

本作が発表されたのが1968年1月です。
3rdシングル "Born to Be Wild" が発売されたのが同年5月のこと。ビルボード誌7/13付に70位で初登場、7週目で8/24~9/7付まで3週間に渡り最高2位を記録しています。アクションが早かったのはラジオのオンエアなどで既に評判が良かったのでしょう。
単純に考えて、この68年夏頃にダンヒルは便乗して「表記有り」ジャケットの印刷を始めたのだろうと思います。とはいえ全米中のプレス工場にはまだ「表記無し」在庫があったでしょうから、実際に「表記有り」が市場に出たのはもう少し後だったかもしれません。映画《イージー・ライダー》が公開されたのは翌69年7月のことです。

〜米国初回盤のレーベル〜

米国ダンヒル・レコードの2ndレーベル盤(68年~)

上の写真、私が所有するマルチカラード・ボックスと言われるレーベルデザインの本作。ダンヒルが1968年以降にプレスしたものにも拘わらず2ndレーベルでした。ネット画像によれば初回盤はこちら↓

米国ダンヒル・レコードの初回盤(~68年)
(Discogsより)

通称イエローアーチのこのデザインは、ダンヒルが1968年に終了したタイプで、ネット画像でも本作(1月発売)は数多く見られず貴重でした。おそらく68年前半にはマルチカラード・ボックスに切り替わったのでしょう。

「表記無し」ジャケットでイエローアーチレーベルの盤、これ持ってる人は自慢ですね。


おまけ

バンド名以外が消えたエラージャケット。レア!!
(Discogsより)



〜曲紹介〜

Side-A
① "Sookie Sookie" 3:09
2ndシングル曲。サザンソウル歌手ドン・コヴェイとスティーヴ・クロッパーの共作。
エッジの効いたロックサウンドに仕上がってジョン・ケイのボーカルが実にソウルフル!映像はTV番組でしょうか。黒人と白人の若者男女が分け隔てなくゴーゴークラブさながらに踊る演出がイイ。公民権運動の激しかった時代を偲ばせます。


② "Everybody's Next One" 2:53
ジョン・ケイとガブリエル・メクラー共作。R&Bらしいリズムアクセントにポップなメロディを加えた好トラック。やはりこのバンドには黒っぽいフィーリングを感じます。


③ "Berry Rides Again" 2:45

④ "Hootchie Kootchie Man" 5:07

⑤ "Born to Be Wild" 3:28
お馴染みステッペンウルフの代表曲。改めてよく出来た曲です。激しいビートの上をギターとオルガンが効果的に使われ、メロディのフックも抜群。高らかにタイトルを歌い上げるサビはラーガっぽい旋律…。
作者のマーズ・ボンファイヤーはスパロウズ時代のギタリストで、ステッペンウルフには参加せず作家の道を選んだそうです。
歌詞にheavy metalなる言葉が初めて使われた曲としても知られているとのことです。

⑥ "Your Wall's Too High" 5:40

Side-B
① "Desperation" 5:45
イントロのハモンドオルガンから厳かな雰囲気に惹き込まれるゴスペル風味な一曲。混濁したサイケな音像と作者ジョン・ケイのパワフルな歌にグッときます。ハンブル・パイもカバーしました。

② "The Pusher" 5:43
こちらも映画《イージー・ライダー》の挿入歌。プッシャーとは麻薬売人のこと。
スパロウズ時代からのレパートリーで、重苦しいビートとサイケな演奏がこの時代らしくて好きです。作者のホイト・アクストンはスリー・ドッグ・ナイトの「喜びの世界」の作者でもあります。

③ "A Girl I Knew" 2:35

④ "Take What You Need" 3:28

⑤ "The Ostrich" 5:43

「ワイルドでいこう!」が余りに有名な為に、他が埋もれてしまっている本作ですが、聴き直してみると、ブラックミュージックに根差したR&Rとサイケデリアが上手く絡み合った聴き応えある作品です。
暫く私は、愛車の原付スクーターをぶっ飛ばしながら本作を聴いていたいと思います💦

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