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【Legend】(1978) Poco ソフトなAOR転身の起死回生のヒット作

私にカントリーロックの素晴らしさを教えてくれたのがポコでした。
昔、輸入盤CDで出ていた【The Forgotten Trail】という2枚組ベストが全ての始まり。
こんなに楽しくて切ない、ポップなカントリーロックがあるのかと本当に感激しました。

それだけに、昨年のラスティ・ヤング、ポール・コットンの訃報はとても残念でした。
60年代から続くバンドの屋台骨を支え続けた2人が、まさか同じ年に鬼籍に入るとは…。
特にラスティはだだ1人のオリジナルメンバーとして最後まで看板を守っていただけに…全く歴史とは呆気ないものですね。

ポコは決してセールス的には恵まれませんでしたが、唯一ヒットらしいヒットとなったのが本作【レジェンド〜伝説】です。
結成から10年、この間にバンドメイトが次々と去っていき、遂にラスティ・ヤング、ポール・コットンだけになってしまいました。
心機一転、それまでのカントリーサウンドを脱ぎ捨て、メロウなAORサウンドへ大変身を遂げた野心作です。

前作【インディアン・サマー】(77年) 発表後ティモシー・シュミット(ベース)がイーグルスへ引き抜かれ、ジョージ・グランサム(ドラム)も脱退。ラスティとポールの2人は、この時点でポコの名を使わず Cotton-Young Band として再出発する予定だったようです。

新メンバーに2人の英国人チャーリー・ハリソン(ベース)、スティーヴ・チャップマン(ドラム)を迎えて新作を録音。しかしプロモーションに於いてレコード会社からの要請があり結果的にポコ名義の続投となったようです。

そんな経緯からもラスティ、ポールにとっては、当初よりポコの伝統に囚われない自由な発想で音楽を作ろうという意思があったんじゃないかと、本作の変身ぶりを聴いていると感じますね。
それまでになく洗練されたソフトでメロウなサウンドは時流にピッタリとフィット。
全米チャート14位まで上昇する彼ら最大のヒット作品となり、初のゴールドディスクに輝いています。

(アナログレコード探訪)

〜センターホールが狭い盤の対処法〜

米国ABCレコード (AA-1099)
マルチカラー・ターゲット音符付きの最終レーベル(1977~79年)

本作はポコのABCレコード4作目で78年11月の発表されています。しかし3ヶ月後の79年2月にMCAレコードによる買収でABCは消滅。本作はABC期最後の作品となりました。
写真の盤が米国でのオリジナル盤です。ポコのレコードはどれも安価ですね〜。

ところで、この米国ABCのLPって、センターホールの穴が狭いようで気になるんです。
ターンテーブルに乗せる時、中心軸(スピンドル)に盤を押さえるようにしないとハマらないんですよね〜。
海外盤、特に米国盤は穴が狭い上に、ビニール樹脂がハミ出したりしていて、雑な仕上がりなのを時折見掛けます。

さてこういった盤、私は思い切って彫刻刀でセンターホールを切って広げてしまいます。

センターホールを彫刻刀で広げた状態です(^^)

完全に切り落とすのではなく、両面から斜めに削るような感じです。こうして穴を広げると盤を扱い易くなるだけでなく、実はレコードの音質が向上するのです!
センターホールとスピンドル軸の接点を減らすことで、ピックアップが拾うモーター振動が軽減され、アナログ本来の音が引き出されるという理屈らしいですよ。

この話、東京・町田市にある《レコードハウス・パム》のご主人から教えて頂きました。初めは眉唾ものでしたが、何度か有料でやって頂き、前後で確認すると確かに良く鳴り音に厚みが出るのです!これにはビックリ!!

自分で彫刻刀を使ってカットする時は集中しますが、慣れれば結構平気です。ご主人はアナログ盤のポテンシャルを引き出す方法を色々とご存知なので、詳しい理屈などはお店にどうぞ〜。

Side-A
①"Boomerang" (Paul Cotton) – 3:48
②"Spellbound" (Rusty Young) – 5:13
③"Barbados" (Paul Cotton) – 3:31
④"Little Darlin’" (Rusty Young) – 3:47
⑤"Love Comes Love Goes" (Rusty Young) – 3:55

Side-B
①"Heart of the Night" (Paul Cotton) – 4:49
②"Crazy Love" (Rusty Young) – 2:55
③"The Last Goodbye" (Rusty Young) – 5:40
④"Legend" (Rusty Young) – 4:16

A-①"Boomerang"
重く手数の多いドラミングとエッジの立ったギターが従来のイメージを覆すポールの作品。実にファンキーです〜!
クラビネットの音色と共にハードなアプローチも感じる新生ポコの力強いナンバーです。


A-③"Barbados"
本作にポールは3曲提供していますが、作風にはR&Bの影響を色濃く感じます。カントリー一辺倒ではなく、本当はこんなポップソウル的な路線を演りたかったのかもしれませんね。私かなり好きな曲です。隠れ名曲。


A-④"Little Darlin’"
一方のラスティは、本作9曲中何と6曲を書く活躍ぶり。ストレートな作風ながら磨き込んだポップセンスが素敵な一品です。マイルドな歌声もすっかり堂に入っています。


B-①"Heart of the Night"
本作が放ったバンドの代表曲(全米20位)。ポール作。ソフトなAOR感覚ながら精巧に仕上がった文句無しの名曲だと思います。
ラスティの甘い音色のスティールギター、サックスのリードが何とも胸に染みます〜。


B-②"Crazy Love"
そしてポコ最大のヒット(全米17位)となったラスティ作品。アコースティック弾き語りで始まる優しく淡いカントリーフレイバー。伝統のコーラスも健在。泥臭さを消したことが勝因でしょうか。
思えばバッファロー・スプリングフィールドにスティール・ギター奏者としてゲスト参加した所から始まったラスティのポコの歴史。
自らがヒット曲を産み出し、歌い上げる姿は感動的です。


本作の成功を、かつてのバンドOB達はどんな思いで見ていたのか想像してしまいます。
ショウビジネスの神様は、努力を諦めない者を見捨てたりはしなかったようです。
天国へ旅立ったラスティ・ヤング、ポール・コットンにとっても思い出深い1枚だったのではないでしょうか。

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