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【All Things Must Pass】(1970) George Harrison ビートルズ解散後に発表したジョージの金字塔

改めて、明けましておめでとうございます🎍今年もよろしくお願いします。

ビートルズの4人の中で誰が好き?みたいな話がよく出ます。私の場合、ポールよりジョンかなと思ってるのですが、ソロになってからの作品なら1番熱心に聴いたのはジョージ・ハリスンです。だからジョージ派かもしれません。

ジョージは山あり谷ありの音楽人生で、作品の出来不出来もハッキリしています。でも一般に評価の低い【ダーク・ホース】(74年)も面白いと思うし、【ジョージ・ハリスン帝国】(75年)、【33 1/3】(76年)も個人的に思い出深い作品です。
とはいえジョージの代表作となれば文句無しに本作ですね。ビートルズ解散後、いち早くその才能を世間に知らしめた3枚組の大作【オール・シングス・マスト・パス】。良い曲多いですね〜。

本作、私はなかなか買えなかった思い出があります。常に「欲しいものリスト」にあっても、何せ3枚目。中古盤でも3〜4000円はしたので遂に手が出ず、結局シングル「マイ・スウィート・ロード」で我慢しました。ジョージってアコースティックなんだなぁというのが私の第一印象です。

随分経って本作を聴いたら、まず曲の良さにビックリ。しかも1曲、2曲じゃない。ビートルズ時代から溜め込んだというその質量にジョージの鬱積を感じましたね。
そしてゲストの豪華さ。エリック・クラプトン、レオン・ラッセル、デイヴ・メイスン、ビリー・プレストン、ゲイリー・ブルッカー、バッドフィンガー、デレク&ザ・ドミノスの面々……ジョージの人脈の広さにこれまた驚きました。

箱ジャケット裏のクレジット

ジョン・レノンやポール・マッカートニーは自己完結できる天才肌だったと思うのですが、ジョージはそこ迄ではない。だから新しい音楽のトレンドを嗅ぎ取り、人脈の繋がりで自己の世界を広げていく、そんな生き方の術を身に着けたのかもしれません。努力家だったのでしょう。

本作に参加した主要メンバーが米国南部の音楽シーンと繋がっていたことから、今ではスワンプロックの名盤とも位置づけられますが、基本はジョージの楽曲の良さです。そこに共同プロデュースのフィル・スペクターの「ウォール・オブ・サウンド」なアレンジが施され、幻想的かつ牧歌的な世界が広がっています。土臭さというより仄かに緑の香りが立ちこめる音の風景ですね。

米国キャピトルレコードのA面レーベル
B面レーベル
3枚目(E, F面)は内容どおりアップルジャムというジョージ流のジョーク
封入ポスターが特大サイズ!


Side-A
①"I'd Have You Anytime"

ジョージが生涯において交流のあったボブ・ディランとの共作曲。ゆったりレイドバックしたこの幕開けが実に魅力的です。アーシーだけど透明感あって心地良い〜。

②"My Sweet Lord"

言わずと知れたジョージの代表曲で、元ビートルズ最初のNo.1ヒット。イントロのギターは私もよく真似しました。ジョージお得意のメロディックなスライドギターも登場。
映像はバングラデシュ・コンサートですが、ゴスペル風な女声コーラスが雰囲気を盛り上げています。ジョージは髭伸ばして仙人みたい。

③"Wah-Wah"

歪んだリズムギターに甘いメロディが乗った佳曲。ちょっとタイミングを遅らせて入る歌メロのセンスもジョージ特有ですね。ホーンセクションも入って、スワンプロック風なダイナミズムで盛り上がっていきます!

④"Isn't It a Pity (Version One)"

ジョージの名作バラード、7分の大作。これ「マイ・スウィート・ロード」のB面で、私はこっちの方が好きでした。美しくも儚い歌メロと牧歌的なバッキング、壮大なオーケストレーションが溶けあって実にドラマティック。ジョージの魅力爆発です。A面のここまでの流れ、非の打ち所が無いですね。


Side-B
③"Behind That Locked Door"

ジョージ流カントリーワルツ。レイドバックした感触はビートルズ時代には見られなかった姿ですね。昼間にビール飲みながらのんびり聴きたい。

④"Let It Down"

本作でひときわ緊張感が漲る一曲。当時のジョージは分厚いサウンドを求めたらしく、フィル・スペクターと共にこの音の壁を作り上げたようです。本作をスパイス的に引き締めています。

Side-C
①"Beware of Darkness"

これまたジョージ屈指の名曲。独特の物憂げなメロディが秀逸!アレンジがシンプルな分、メロディの良さが引き立ちます。レオン・ラッセルのカバーも素敵でした。

③"Ballad of Sir Frankie Crisp (Let It Roll)"

私、この曲好きなんです。甘く優しいメロディと浮遊感あるサウンド。まるで桃源郷??涅槃??のような響き。ジョージのまろやかな世界が花開いてます。広い野原一面を漂っているような夢心地。

⑤"All Things Must Pass"

本作はここまでが第一部のような気がしますね。というか私が聴くのは大体ここまでです(笑) インド哲学に傾倒したジョージらしいタイトル。牧歌的で美しい一曲です。ビートルズの【アンソロジー】にデモがありましたが、ジョージのこうした世界観は他のメンバーに理解してもらえなかったのかもしれません。

Side-D
②"Art of Dying"

この曲の前奏を聴くと私はどうしても「レイラ」を連想します。録音も同じ頃、本作に参加したクラプトンがつい手癖で弾いてしまった…そんな想像してます(笑) 

Side-E (Apple Jam)
③"Plug Me In"

3枚目は「アップルジャム」と称した豪華メンバーによるジャムセッション。私は退屈でこれまで数える程度しか聴いたことがありません。久しぶりに聴いてみたら、こちらデラニー&ボニーのライブにも通じるノリ。クレジットに拠ればやはりメンバーは、デレク&ザ・ドミノス+デイヴ・メイスン、ジョージ。熱気を帯びた3分ほどのドロ臭い演奏です。

本作がヒットして間もないジョン・レノンのインタビューで、ジョンは本作に関して「ジャケットがまるで喘息のレオン・ラッセル」「マイ・スウィート・ロードなんて簡単に書けるが、俺なら世に出さない」などと毒づいているのを読んだことがあります。

一番バチバチの頃だから仕方ないですが、それでも本音は、弟分だったジョージに先を越されてちょっと悔しかったのだと思います。
いつも3番手のジョージからすれば、本作はまさにしてやったりだったでしょうね。

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