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【A Good Feelin' to Know】(1972)Poco 野心に満ちた脱・カントリーロック作品

本作のことを書こうとしていた矢先、他のライターの方が投稿された記事でポコのポール・コットンの訃報を知りました。
4月にラスティ・ヤングが亡くなったばかりだけに随分と驚きました。

バンドを長きに渡って支えて来た2人だっただけに、こうも簡単にバンドの歴史は消えてしまうのかとファンとして虚しい思いです。
 
長い歴史の中で多少の変化はあれど、堪えずカントリーロックに拘り続けたことがポコの最大の魅力だったと思います。

さて、それぞれの時代で魅力ある作品があるポコですが、私にとってはポール・コットンが加入した5人組だった時期に1番思い入れがあります。

通算5作目になる本作は、純粋なカントリーロックから一段登って、西海岸のロックバンドとして成長した時期の代表作と言えます。この頃がリーダーのリッチー・フューレイの全盛期とも個人的には思ってます。

こちら米国エピックレコードのUS盤。

やや重心低めな音ながら自然な鳴りがイイです。 
本作はこれで決まり!と信じ切っていたのですが、さすがに英国人のエンジニアは大した腕前でした。

こちら英国エピックレコードのUK盤。

バスドラ(低音)からハイハット(高音)までハッキリと聴こえ、全体が輪郭をもって迫る音像は抜群の良さです!これを聴いてしまうとUS盤の音は雑に聴こえてしまいます。

本作は全体に腰の重いサウンドが目立つアルバムです。
ポコにしてはヘヴィなビートのR&R、A-①「アンド・セトリング・ダウン」(リッチー作)から始まり、前作から目立つスワンプロック路線B-①「アーリー・タイムズ」(ポール作)、B-③「レストレイン」(ティモシー作)も健在。

こういった曲でのポールのレスポールの重い音はよく似合ってます。ティモシーのベースも以前より太く聴こえます。

初期の頃から考えれば、この時期のバンドはカントリーロックから少し距離を取ろうとしていたように受け取れますね。

バッファロー・スプリングフィールド時代のA-④「ゴー・アンド・セイ・グッドバイ」(S.スティルス作)のリメイクでも、元々あったウエスタン調ではなく、敢えてテンポを抑えた西海岸ロック風に焼き直してる辺りも興味深いです。

そんな本作の中で珠玉と言えるのが次の2曲です。。

A-③「アイ・キャン・シー・エブリシング」はティモシー・シュミット作。

パーカッション、生ギター、スティールギターだけをバックに、ティモシーがハイトーンボイスで切々と歌う旋律が実に美しい1曲。転調したサビのコーラスも素敵です!

まるで夏の木陰にそよぐ風のような、そんなセンシティブな魅力が心地良い名曲です。
彼のイーグルスを含めたキャリアの中でも屈指の作品だと思います。

そしてタイトルトラックでシングルカットされたB-②「グッド・フィーリン」

爽やかなコーラスワークと躍動感あるメロディ、そしてスティールギターの音色!
これぞリッチー・フューレイ渾身の1曲であり、この時期のポコが作り得た傑作です。 私自身もポコとの出会いの大切な1曲です。


発表前のライブでも好評だったらしく、必ずしやヒットするだろうと自信作だったハズですが、結果は何とノンチャート。
リッチーは相当ショックだったようで、これ以後ポコに急速に興味を失っていったようです。

とあるロックバーで、音楽に詳しい10才程年上の方に私が聞いた話ですが、

イーグルスが台頭して来た時、リッチーが「こんな単純なので売れるのか!だったら大丈夫。俺達余裕で売れるよ。」
と高を括っていたとか…。

酒席で聞いた話ですから、事の真偽は分かりません笑

しかし、私もリッチー・フューレイはイーグルスを意識していただろうとは思うのです。

呆気なく追い抜いていく後輩バンドに思う所はあったでしょう。また元同僚のスティーブン・スティルス、ニール・ヤングの成功も焦りにはなっていたと想像します。

そういったジレンマ、野心に掻き立てられ、バンド全体も変化を望んだ結果、この時期は「カントリーロック離れ」に繋がったのでしょう。

ラストのB-④「スウィート・ラヴィン」は、これまた新味のゴスペル風オルガンとコーラスから始まる荘厳なミディアムバラード。

様々な音楽性を持ち込んで、何とかバンドを引き上げようとするリッチー・フューレイ。彼は成功したかったんだろなぁ、としみじみ感じますね。

持ち前の溌剌としたサウンドとは少し違った泥臭いポコですが、このメンバーとしての代表作として私は気に入ってます。

ラスティ・ヤング、ポール・コットンを追悼するつもりが、リッチー・フューレイ中心の記事になってしまいました…笑

2人が中心のポコの話も是非いつか書きます。

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