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悪口

私の代わりにただの悪口を言ってくれた後輩のことを思い出す。

何を言っても仕方がないってわかっていて、頭ではわかっていて、でも嫌で仕方なかった。惨めで情けなかった。こんなことはよくあることだし、誰も悪くない。良い悪いでも正しいか正しくないかでもない。わかっている。立っているのがやっとだった。まだ傷つくことに慣れていなかった10代の頃。

相手の悪口を言わないでいることだけで、自分のプライドをギリギリたもっていた。誰も悪くない。

相手を悪く言っても仕方がないし、かっこ悪いし、そもそも誰も悪くなんてないんだから。「正しいこと」に固執していた。

そんな時に、授業で一緒になった後輩と教室でそのまま話していて、なんとなくその話になって、後輩が、

「本当なんなの、あのブス!」

って言った。

いろんなものをすっ飛ばした、ただの悪口を放った。
スーッと、心が軽くなるのを感じた。

ブスとか関係ないのに。(実際ブスではなかった)

私がこんなに相手を悪くいうのを我慢してきたのに、いとも簡単にこんなただの悪口言っちゃうの?って、私が必死に守ってるプライドがちっぽけに見えて、笑えてきちゃって、
ああ、この悪口で今までかけてもらったどんな優しくて正しい言葉より救われちゃったな。って思った。

私もこういう人の重荷を降ろしてあげるような悪口が言えるようになりたいと思った。自分がいい子でいることで相手が救えるわけじゃないんだなって思った。


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