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【読書録】企業内人材育成入門


本の概要

企業内人材育成入門
著者 中原 淳 (著), 荒木 淳子 (著), 北村 士朗 (著), 長岡 健 (著), 橋本 諭 (著)

「仕事は現場で覚えるもの…」「そんな教え方じゃ…」「この研修って役に立つの…」。教育や学習に関しては、誰もが一家言持っている。それは、各人の経験に基づいた、いわば「私の教育論」である。しかし、企業全体の教育システムを考えるとき、「私の教育論」はともすれば弊害をもたらしかねない。私にとってうまくいった方法が、必ずしも他のケースでうまくいくとは限らないからである。「人材育成」に関するさまざまな知恵を俯瞰的に学ぶことの意味がここにある。本書では、人材育成に関する心理学・教育学・経営学等の基礎理論を簡潔に紹介することを目的にしている。人が学び、人が育つ理論に関して、より深い理解が得られるはずである。

「BOOK」データベース

内容要約

学習のメカニズム

ここで押さえておいた方が良いのは「オトナの学び方」。大人と子供の違いを理解した方が良いです。
大人の学習は、経験が中心となります。そして、学習する目的が大事です。

  • 大人の学習者は実利的である

  • 大人の学習者は動機を必要とする

  • 大人の学習者は自律的である

  • 大人の学習者はレリーヴァンスを必要とする

  • 大人の学習者は目的志向性が高い

  • 大人の学習者には豊富な人生経験がある

学習モデル

学習転移モデル
以下の4つで構成されるモデルです。
知識想像:伝達可能な知識を創造する
知識伝達:教育プログラムを通じて伝達する
知識修得:学習者が修得する
知識応用:現場で応用する

経験学習モデル
経験・省察・概念化・実践⇨経験〜〜
のサイクルを回すモデルです。
省察&概念化のステージにおいてはファシリテートが必要で、難しい。人事として取り組むべきは、このファシリテーターの養成というところでしょうか。

批判的学習モデル
批判的思考には3段階あり、どの段階まで省察するのかがポイントになるそう。何が本当に重要なのか見極めることが大事なようです。
手段探求モード:目的達成のための手段について合理性があるか批判的に省察する。
目的合意モード:具体的な活動目的が他者の視点からも合理性を持っているか批判的に省察する。
背景批判モード:活動の背景まで立ち返り、設定や手段を正しいと受け入れた見方や考え方を批判的に省察する。

正統的周辺参加モデル
人事が頭を悩ませているかもしれない、仕事が忙しいので研修参加しません、業務で使わないと思うので不要ですというやつです。俯瞰してみると仕事の中に学習が包含されているのですが、包含されているがゆえに直結しているように見えなくて敬遠されるものがあります。


インストラクショナルデザイン

効果的な研修を作るためにADDIEモデルを活用すると、勘に頼ることのなく設計ができます。
ADDIEモデル
分析:目的、組学習者・織の課題、業務内容など要件を洗い出す
設計:教材やツールを洗い出す
開発:教材やツールの開発
実施:実施する
評価:問題点を洗い出し改善する

難しいのが評価ではないかと思います。
ここで使うと良さそうなのがカークパトリックの4段階評価です。

  • レベル1:反応_研修に対して満足したか

  • レベル2:学習_研修で扱った内容を満足したか

  • レベル3:行動_研修で扱った内容を実務において活用できたか

  • レベル4:業績_研修で扱った内容が業績に貢献したか

実際私はこれを常に念頭に置いて最低ラインを決めて研修を設計しています。だた、レベル1だからダメ!というわけではなく目的の置き方と設計したい人の考えなので前任者が3をイオ式してたから3じゃなきゃだめということではないと思います。

キャリア開発の考え方

キャリア開発は、一人ひとりが主体的に取り組むものと書かれています。
最終的に所属企業にいるか出るかも本人の主体性に掛かっているといえます。
主体性を担保するために、企業側は上司が部下へコーチングやメンタリングを行うこともあります。
キャリア開発は自分とのサバイバル、と書かれてあるように、最終的には自分次第。
企業ができるキャリア開発もちょっとしたきっかけ作りです。

企業教育の政治力学

研修評価について、何を持って◯とするのか、要は本質を見失わないことです。例えば、研修を実施したとして研修生からの評判が○だから研修が○ではないということです。研修企画した担当者が満足した=○でもないと言うことです。
各ステークホルダーを理解しながら、何が○なのかを常々意識して設計・企画していく必要があるわけで、誰が利益を享受するのか、誰に利益を享受させたいのかを常々考え、各種調整をしていく必要があるのです。

研修担当者本人の満足度・評価が欲しければそのように設計できてしまうし、そう動けばいいと言うことなので、最後は企画者本人の考えに委ねられると言うことですね。

参考にしたこと・実践したこと

オンボーディング再構築検討時期

経験学習サイクルと学習転移
テーマの一つとして「経験学習サイクルを回す」を置きました。
オンボーディングにおける終着点はどこだろうと考えた時に、「自分ごと化」できている状態を目指すことにしました。それぞれのポジションのメンバーが、自分のポジションだったらインプットしたことをどう活かせるだろうかを講習終了時の振り返りフォームで記載をするフローを作りました。
テストをするということもトライしたかったのですが、添削と解説フォローの時間を確保できず断念しました。

熟達
熟達している社員へヒアリングを実施しました。そこで気がついたことは、熟達度が高い社員=スーパープレーヤーの言っていることをそのまま他の方への転用はできない、ということでした。これは分解するしかない、さらに段階をセットする必要がありそうだと思ったと同時に、なぜ熟達できたのか?というのは環境要因が大きいと読みました。当時勤めている企業がいわゆるITベンチャーで創業から10年程度なので、初期からいるメンバーが企業理解サービス理解が進んでいるのは至極当然のこと。新たなメンバーが彼らに追いつくのは難しいと判断し、同じレベルへの到達するためには?と考えることは早々にやめました。

人材開発やリーダー開発検討時期(今ココ)

「学習が必要である」と言うことを理解はしていても、いざ学習環境を提供すると不要だと言う人がよくいます。とても頭を抱えました。
その人にとって、なぜ必要なのか、未来の経験とどう直結するのか理解し自律的に動けるような支援をしなくてはなりません。
業務における熟達とマネジメントとしての熟達は別物であって、スタートラインなのでスキル0であるということに直面するのはやや苦痛をともないのかもしれませんが、学習モデルを組み合わせながらどう自律的に学習を促せるのかチャレンジです。
特に学習転移は大事にしたいですし、評価はしっかりやりたい。

まとめとひとりごと

冒頭で、人材育成を語る人は多いがそれはその個人の経験則に基づく談話であるということが書かれていました。
実際に、「自分はxxxやって立ち上がった/学習して成果を上げたからそれをやればいい」とう話を至るところで耳にします。また、本に書かれていることは信用していないとあからさまに言う方もいますし、言われたこともあります。
理論と現場の実態を組み合わせて学習環境を構築しましょうと提唱しているのが本書でありました。
これは私自身の過去の体験談なのですが、自分自身が立ち上がった時のインプット及びアウトプット手段やその時の体験をそのまま後輩へ適用したことがあります。見事に失敗しました。知識は伝授できたかもしれないのですが、もっと大事なことをすっ飛ばしてしまいました。独りよがりな人材育成は良くない、独りよがりと書くとチーム内でコンセンサス取ってれば良いと思われてしまいそうなのですが、決してそうことではないと思います。自社の状況・外的環境も踏まえて育成対象者の学習環境をアシストしていくことが、企業でおこなう人材育成なのだと思います。

要するに、
伝授ではなく、自ら学ぶことが人材育成では重要だと思います。
つまり、受動的ではなく能動的
能動的⇨リーダーシップの開発が大事なのだと思いました。

最後にどうしてもこれで締めたい・・・
インプットだけがオンボーディングじゃない!
会社は学校じゃないんだ!

おわり。

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