cotreeイベントレポート〜コーチングとカウンセリングの交差点〜

 cotree主催のイベント 「コーチングとカウンセリングの交差点」に参加してきたので、そのレポートを。(あ、そしてnote初投稿。。)

 cotreeは「やさしさでつながる社会をつくる」というvisionを掲げ、主にオンラインカウンセリングを主なサービスとしている。

 また、いくつかのサービスの中でコーチングも行なっており、個人向けにはアセスメントコーチングという性格特定診断に基づいたコーチングを行なっている。

  心理職の方や、カウセリングのスキルを持つコーチがコーチングを行なっていることが大きな特徴で、今回は臨床心理士でコーチとしてcotreeで働かれている森山さんより、実際にコーチングを実践する中で学んだこと、としてお話を頂いた。こちらではその内容を中心に、自分の解釈も交えてまとめていこうと思う。


 時代的な背景からコーチングのニーズが高まっている

 多様な生き方や価値観が受け入れられる一方で、自らが責任を負い、それらを見つけていかなくてはならなくなっている。また、時代の変化のスピードが早く、大量の情報にすぐにアクセスできる私たちは、あまりに多い選択肢を前に振り回されてしまいがちである。

  多様性が認められるということは、認めている側、たとえば雇い主である企業側からすれば、少し乱暴に言うと「認めたんだからさあ、多様であれ。さあ、あなただけの能力を発揮して貢献してくれたまえ。」ということになる。これは結構しんどい。
 そして、様々な物事の変化のスピードが恐ろしく早く、かつ大量の情報にいつでもアクセスできる現代では、色んな場面で迷いがちなのはたしかにそうだろう。
 こんな背景から人々が抱える悩みや目指したい目標も、多様で個別性を帯びてくるため、コーチングそしてカウンセリングについてのニーズが高まってくるのだと思う。


コーチングとカウンセリングの共通点・相違点

共通点:クライアントの変化や成長(自己理解・自分らしい生き方の創造)を目的として、支援者とクライアントとが共通のテーマに共に取り組むこと。

相違点:コーチングは比較的心の健康度が高く、主体性があり、自己や他者への信頼感が高いクライアントに対して、行動面の変化を目指して行う。一方で、カウンセリングは不快や苦痛を抱いており、主体性は低めで信頼感も低いクライアントに対して、洞察や自己受容を目指して行う。


 それぞれの関わり方と重点

コーチング:目標とする理想の状態を目指すにあたっての選択(選び取るもの、手放すもの)をその背後にある価値観を考慮しながら検討し、それを具体的な行動につなげていく支援を行う。これは目標を実現させるための行動の変容や習慣化に重点を置いた関わりである。

カウンセリング:クライアントのどのような側面にも関心を向け、傾聴を通してクライアントの持っている適応的な部分を支持していくことで、まずは心理的安全感・安心感を持ってもらい、クライアントの主体性を高めていく関わりである。

 コーチングもカウンセリングも共通なのは、クライアントの変化と成長を目的としていることであり、コーチングにおいては「行動」、カウンセリングにおいては「自己受容や主体性」の変化に重きが置かれるということだ。


クライアントの変化のプロセス

①直面化 /気づきや洞察
②自己受容
③心理的な障壁の低下
④自己実現イメージの明確化/意味付け
⑤行動計画
⑥行動変容
※このプロセスを支える心理的な要素は、自尊心・自発性・モチベーション、そして支援者との信頼関係(ラポール)である

 森山さんがコーチングを実施する中では、コーチングにしてもカウンセリングにしても、基本として上記のプロセスがあるように感じられるが、違いは各々のプロセスを取り扱う濃度の違いであるとのことだった。コーチングでは⑥→①の順に濃度が高く(⑥が高い)、カウンセリングではその逆で①→⑥の順に取り扱う濃度が高くなる(①が高い)という。先に書いた、それぞれが目指すものの違いである。


カウンセラーがコーチングを知って良かったこと

 双方のアプローチを知ることで、クライアントの状態、成長ペース、志向性に沿ったサポートをイメージできる(選択肢が広がる)。
そして、より健康で、より創造的な生き方をサポートしうる。

 コーチングはクライアントの状態や悩みをより具体化していくアプローチであるから、その分傾聴を主とするカウンセリング的関わり方のみよりもサポートの選択肢が広がる、というように理解した。


cotree的コーチングの特徴

 森山さん以外にもcotreeで活躍しているコーチからcotreeのコーチングの特色をお話頂いたので、得に気に入ったポイントをまとめておく。

①アセスメント・カウンセリング・コーチングを包括的に提供できる
→cotreeでは事前に行う性格特性診断を元にコーチングを行うため、アセスメントによって自分を知り、カウンセリング的な関わりで自己受容し、コーチング的な関わりで行動につなげる、という包括的なアプローチが可能ということだ。

②コーチングは目的地を決め、現在地からの地図を描いていくこと
→まさにコーチングのことだなと思いながら聞いていたが、「今できること」というところまで落とし込むコーチング的アプローチが、カウンセリングでいう「今、ここを生きる(今できることがあなたにもある!)」というところに繋がるところがとても良きだった。

 現在コーチングの養成機関は国内でも5〜6はあり、自分も色々比較してある機関でコーチングの認定を得る(見込み)だが、上記のような特徴を持ったコーチングはなかなか無いように思う。


 自分がコーチングにもカウンセリングにも興味があるのは、元々は働く人のメンタルヘルスに興味があってカウンセリングを学び出したのだけれど、カウンセリングのハードルの高さ(例えばEAPでのカウンセリングサービスの利用されなさ)に驚愕していたところで、コーチングを知ったという流れだ。
 ビジネス界隈ではコーチングはホットなキーワードで取っつきやすいだろうから、これが広がれば「人に頼ること」だったり「自分をあらためて知ってみる」のような空気感が作られて、不調になってしまった時にはカウンセリングを受けてみようと思えるのではないかと期待しているし、ぜひそうしていきたいと思っている。

 そのあたりについて、
「コーチングで申し込んで来られて、カウンセリング的関わりが必要だったクライアントの方はどのくらいいますか?」
と質問させて頂いたところ、
「3〜4割くらいの方がいらっしゃいます。ただし、cotreeがそもそもカウンセリングをサービスとして行なっていたり、心理士の方がコーチであることを知っているから、ということもあると思います。」
とお答え頂いた。
 コーチングを入り口としたことで支援が広がる可能性を感じたのだが「カウンセリング的関わりの中で、コーチングとしての入り口でなければ支援できなかった方々であることも考慮する必要がある」と仰られていたことも心に留めておきたい。

 最後に、代表の櫻本さんが、

 「コーチングを受けたい」「カウンセリングを受けたい」はクライアントの主訴ではない。コーチングはその主訴をコーチングで支援する、カウンセリングはその主訴をカウンセリングで支援するというだけ。
 そしてコーチングとカウンセリング両方で関わることのできる支援者は、支援をどの方向で進めるのか方向付ける役割(責任)があるよね。

と仰られていたことがまさに総括だったな、と感じた。

 今回の参加者は、心理士の方中心に普段カウンセリングを行なっている方々がほとんどだった。おそらく心理の中ではコーチングがそれほど前向きに捉えられているとは思えない状況にあって、普段カウンセリングの関わりだけで上手くいかないのでどうにかしたい、更により良いものを提供したいという姿勢の表れだと思うと、とてもうれしい気持ちになった。 
 コーチもカウンセラーも互いに学び合って、(もしかしたら)どちらの名前でも無いより良い支援のカタチに育っていくことが期待されるし、そこを目指して自分も頑張ろうと思えたイベントでした。ありがとうございました。

 追伸として「コーチングを学ぶには〜?」という質問がいくつかあったので、先日cotreeにも来られたというこばかなさんの記事を貼っておきます。イベントでもありましたが、学ぶ目的とリソースを考えた上で検討できたら良いですね。


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