見出し画像

特別な日のプレゼントを UXデザインする ー 日常の課題解決にも使える HCDプロセス

この記事は、裏freee evelopers Advent Calendar 2018の4日目です。

はじめまして、96/KuRo(クロ)です。freee株式会社では UXデザイナーとして、日々、ユーザーさんのエクスペリエンスをデザインしております。 

また、以前からグラフィックデザイン、Webデザイン、CIデザイン、アートディレクション、デザイナー組織作り、デザイナー採用活動などの経験を重ねてきたことを活かし、パラレルワーク(複業・副業)として様々な企業のクリエイティブな生産性向上の支援をするクリエイティブ顧問業も行なっております。

さて、今回は、クリスマスをカウントダウンしていくアドベントカレンダーということで、この時期、大切な人へのプレゼントに悩んでいる方々の参考になればと、先日、実際にあった事例を元に『特別な日のプレゼントをUXデザインする - 日常の課題解決にも使える HCDプロセス』というテーマで書くことにします。
※HCD=ヒューマン・センタード・デザイン=人間中心設計

プロジェクトの記録

私(96/KuRo)が、ランチ終わりに、会社近くの喫煙所に行ったところから、この話は始まります。

喫煙所に着き、さて一服…と煙草に火を着けたところで、偶然そこにいた同僚のワタナベ(仮名)に話し掛けられました。

ワタナベ(以下 )「ども」

96/KuRo(以下 96)「うす」

「96さん」

96「うん」

「バラってどこで売ってるんですかね?」

96「え? ん~、そうだなぁ…」
96「バラみたいなメジャーな花なら、たいていの花屋さんに置いてあるんじゃないかな。とりあえず近場のとこに行って聞いてみなよ。そこで無くても他にあたって行けば、すぐ見つかるんじゃないかな?」

「そうなんですね。良かった。でも、やっぱり高いんですかね、バラ」

96「いや、どうかなぁ。ちょっとしたバラの花束なら、1万円越えたりしないんじゃない?」
96「で、どうしたの急に? なんでまたバラ?」

「今日、結婚記念日なんですよ。」

96「なるほど」

「結婚してからは4年なんですけど、付き合い始めたところから数えると20年目なんで、それなら20本のバラの花束をプレゼントしようかなと思って」

96「へぇー、良いね、そういうの。急にバラなんてらしくないなと思ったけど、そういうことだったのね。」
96「でも、単なるバラの花束だと置きに行ってる感じというか、これ贈っとけば良いんでしょ的な感じで、あんまりウケないかもよ」

「あぁ…。確かに。」
「どうしたら良いんですかねぇ。僕、こういうの苦手でやり慣れてないんで…。」

96「そんな難しく考えなくても」
96「なんだろ…、そうだな。プレゼントをもらう嬉しさって『相手が自分を喜ばしたいと思って、自分のことを想って、自分のために考えたり探したりして、用意してくれたということ』を感じるのが大きいんじゃない?」
96「だから、他の誰でもないあなたのためのプレゼントだって奥さんが感じられるような工夫をした方が刺さるんじゃないか?」

「なるほど! 確かにそうすね。」
「でも、どうしたら良いんだろ…」

96「バラはともかくとして、花束を贈るのは素敵で悪くないと思うよ。」
96「ところで、今まで記念日とか何かで花をプレゼントしたことあるの?」

「ないです。結婚記念日は、ちょっとした所に食事に行ってますね、いつも。」

96「あー、分かる。あるある。」
96「でも、今までプレゼントしたことがないなら、なおさら特別感あるし良いんじゃないかな、花束にするのは。」
96「じゃあ…、そうだ、奥さんの誕生日はいつ?」

「今日なんです。11月22日。結婚記念日と奥さんの誕生日が一緒なんです。なので誕生日のプレゼントは用意してます。」

96「おお。そうか。そういうことか。」
96「そしたら調べてみよう。誕生花ってのがあって、どの日にも『その日の花』ってのがあるんよ。誕生花がイイ感じだったら、その花で花束にしたらいいじゃん」

「へえ! そんなのあるんですね」

96「今日の花は…。」
(スマホでググる)
96「おおお!白バラ!! 良いんじゃない? どうよ、白バラ20本。」

「おお!!良いっすね、白バラ!!」

96「ちょっと待って。そういや奥さん、何の仕事してんだっけ?」

「アパレルです。〇〇〇ってとこで働いてます。」

96「そか。よし、このまま行こう。」
96「じゃ、奥さんの好きな色は?」

「え?」
「んー、そうですね…。たしか、紫ですかね」

96「なるほど。じゃ、普段から紫の入った服とかアクセサリーとか身につけてる感じ?」

「いや、そういうのは特に。紫色の物を眺めてるのが好きみたいです。」

96「なるほど、なるほど。」
96「そしたら、白バラ20本だけじゃなくて、店頭にある紫色の花をバラとバラの間に入れていく感じで合わせてもらって花束にしてもらいなよ。紫が入ると白バラの白さが映えるし。」

「おー! なるほど!」

96「あと、ラッピングの紙も紫にしてもらいなよ。」

「それ良いっすね! 絶対喜びます!」
「でも、そんなことできるんですか? そもそも、紫色の紙とかあるかなぁ」

96「大丈夫、大丈夫。あるある。」
96「無くても、こちらの意図を言えば、あるもので何とか考えてくれるよ」

「マジすか。ありがとうございます! 96さんの案でやってみます!!」

96「うん、イイと思うよ。」
96「他にも色々凝ったプレゼント考えられるけど、これ以上やったら、普段の行動からして無理があるだろうし、不自然になって、誰かから入れ知恵されてそのまんまやったって、思われちゃうので逆効果になると思うから」

「おお! 確かに!」

96「うん。じゃ、白バラ20本に紫の花を合わせて、ラッピングも紫で、てことで」

「はい! それで行ってみます!」

96「うん。がんばって。幸運を祈るよ」

がんばれワタナベ!と心の中でエールを送りつつ、この日は解散しました。

アプローチ解説

それでは、特別な日のプレゼントをどうUXデザインして行ったのか、順を追って解説していきましょう。

なお、freeeのUXデザインに導入されているHCDプロセスですが、各ステップをfreeeでは、

1. プロセス計画
2. 調査・分析
3. 要求定義
4. 設計・作成
5. 評価
6. 実現

とし、運用しておりますので、この名称で進めさせていただきます。

では、まず導入部分から。

96「で、どうしたの急に? なんでまたバラ?」

「今日、結婚記念日なんですよ。」

96
「なるほど」 

「結婚してからは4年なんですけど、付き合い始めたところから数えると20年目なんで、それなら20本のバラの花束をプレゼントしようかなと思って」

これは大変です。せっかく結婚記念日に「出会ってから20年」という高い付加価値を見いだしたのに、このプレゼントは惜しい…。工夫次第でもっと価値を大きく感じてもらえるようにできるはず。勝手ながら、これは何とかしたい…。

ということで、勝手にプロジェクト化し、UXデザイナーである私は当然のごとくHCDのプロセス計画を始めました。脳内で。

プロセス計画は大事です。人類を爆発的に増やすことになった農耕牧畜は、人間が「計画」できるために可能になったのであり、人類の発展には計画が不可欠であり、我々の生活を豊かにするのは計画であり…、おっと、暴走が過ぎました。

ちなみに、designには「計画する,立案する」という意味があり、すなわちNO 計画、NO デザイン と言えます。

話を戻します。

お金も、時間も、人的リソースもふんだんにあるプロジェクトというのは、滅多にありません。アレがないから、コレがないからと言って何もしないわけにはいきません。HCDプロセスの各ステップについて取捨選択、手法の検討を行い、限られた条件の中でもユーザー体験を最大化できるようにします。

まず、このプロジェクト、話を聞いたのがお昼過ぎ。プレゼントを渡すのががその日の夜です。圧倒的に時間が足りません。なので、プロジェクトのコアな要件を「奥さんにプレゼントして喜んでもらう」とし、さっさとプロセス計画を行いました。脳内で。

1. プロセス計画:とにかく早く行う。設計・作成までに5分程度。
2. 調査・分析:簡略化。ワタナベにインタビューし、過去のナレッジで補完。
3. 要求定義:簡略化。ワタナベと話し合いでツメる。
4. 設計・作成:簡略化。脳内プロトタイピング。ワタナベとの会話でブラッシュアップ。
5. 評価:省略。ユーザーテストの時間が無いので、ヒューリスティック評価でGO。
6. 実現:ワタナベが帰宅途中に購入し、今晩実施。

UXデザインを行うには、サービスオーナーにその必要性を理解してもらうことが必要です。
そこで、まずは、サービス提供者であるワタナベに対し、プレゼントのUXデザインが大事だと感じてもらうために語りかけます。

96「でも、単なるバラの花束だと置きに行ってる感じというか、これ贈っとけば良いんでしょ的な感じで、あんまりウケないかもよ」 

「あぁ…。確かに。」
「どうしたら良いんですかねぇ。僕、こういうの苦手でやり慣れてないんで…。」

96
「そんな難しく考えなくても」
96「なんだろ…、そうだな。プレゼントをもらう嬉しさって『相手が自分を喜ばしたいと思って、自分のことを想って、自分のために考えたり探したりして、用意してくれたということ』を感じるのが大きいんじゃない?」
96「だから、他の誰でもないあなたのためのプレゼントだって奥さんが感じられるような工夫をした方が刺さるんじゃないか?」

プレゼントをするというサービスにおいて重要なのは、贈る人(サービス提供者)があげたい物をあげるのではなく、贈られる人(ユーザー)がもらって嬉しい物をあげることです。

HCD=人間中心設計の「人間」とはユーザーさんのこと。(UXデザインの「U」もユーザーさんのこと)

プレゼントは、贈る人中心設計ではいけません。プレゼントは、贈られる人中心設計で考えましょう。

96「バラはともかくとして、花束を贈るのは素敵で悪くないと思うよ。」
96「ところで、今まで記念日とか何かで花をプレゼントしたことあるの?

ないです。結婚記念日は、ちょっとした所に食事に行ってますね、いつも。」

96
「あー、分かる。あるある。」
96でも、今までプレゼントしたことがないなら、なおさら特別感あるし良いんじゃないかな、花束にするのは。

調査・分析タイムです。奥さんのことをそこにいる誰よりも(あとは私だけですが)知っているはずのワタナベにインタビューを行うことで、間接的な情報ではありますが、それによって、奥さんというユーザーの状況への理解を深めていけます。

まずは、実績を聞きました。過去に花束プレゼントを実施したことがあれば、その反応から、奥さんにとっての花束のプレゼントのインパクト具合が分かります。

しかし「ないです」、と。ワタナベ…。

「でも、今までプレゼントしたことがないなら、なおさら特別感あるし良いんじゃないかな、花束にするのは。」とは言いましたが、実施実績が無いため、奥さんの花束プレゼントへのニーズ、奥さんにとってインパクト具合が全く分からず、実は困っていました。

96「じゃあ…、そうだ、奥さんの誕生日はいつ?

「今日なんです。11月22日。結婚記念日と奥さんの誕生日が一緒なんです。なので誕生日のプレゼントは用意してます。」

96
「おお。そうか。そういうことか。」

どうしようかと思いつつした違う角度での質問に対して、予想外の新情報。しかし、これは好都合でした。

結婚記念日と奥さん誕生日が一緒、誕生日プレゼントは用意している。それなら、花束プレゼントがハズれたとしても大ケガにはならないはず。

ここまでの所で「花束」という要素を残そうとしているのは、UXデザインとしてどうなの?と思われる方もいるかもしれません。
これは、この後の発言で出てくる「普段の行動からして無理があるだろうし、不自然になって、誰かから入れ知恵されてそのまんまやったって、思われちゃう」というのを懸念してのことです。

ワタナベ自身から生まれたアイデアは自然です。なので、そのアイデアの中で、「花束」がコアで価値が高そうな要素と判断し、ここを残せるかを探っていました。

なお、先の「奥さんの誕生日はいつ?」という質問をしたのは、花の選択理由を奥さんに寄せるために、多くの人が大事だと感じる誕生日を使えないかと考えたからです
※寄せる:奥さんのことを想ってそれをする、という意味で使っています。

96「そしたら調べてみよう。誕生花ってのがあって、どの日にも『その日の花』ってのがあるんよ。誕生花がイイ感じだったら、その花で花束にしたらいいじゃん」 

「へえ! そんなのあるんですね」

ここら辺から、調査・分析、要求定義を行ったり来たりしだします。

花の選択理由を相手に寄せると方法としては、「好きな花」を聞くというのもありますが、花は季節によって流通が変わるため、好きな花はこのタイミングで手に入らない可能性があります
また、奥さんの好きな花を知らない旦那さんは多い(私調べ)ため、聞いても分からない可能性が高く、まずは確実に手に入るであろう誕生日という情報を元に展開できる、誕生花を考えました。

さて、その誕生花ですが、その選定には業界関係者が関わっていることが多く、その日に手に入らない花が誕生花になっていることは、まずありません。

それでいて、共通規格となっているわけではないようで、検索して見つかるサイトをピックアップして見比べても、同じ日でも違う花が殆どです。逆に言うと、あるサイトで見つかった花が気に入らなくても他の選択肢が残されているということになり、冗長性のあるシステムと言えます。使えるね、誕生花システム。

96「今日の花は…。」
(スマホでググる)
96「おおお!白バラ!! 良いんじゃない? どうよ、白バラ20本。」

「おお!!良いっすね、白バラ!!」

で、出て来たのが白バラ。

「おおお!白バラ!! 良いんじゃない? どうよ、白バラ20本。」と興奮気味に言っているのは、白バラは結婚式のブーケで使われていることが多く、これで結婚記念日感が更に盛り上げるかもと思ったからです。

96「ちょっと待って。そういや奥さん、何の仕事してんだっけ?」

アパレルです。〇〇〇ってとこで働いてます。」

96
「そか。よし、このまま行こう。」

と、ここまで話を進めておきながら、「花束」で行くのかを判断するために再度、質問をしました。

なぜでしょう。

それは、プレゼントは、贈る相手が詳しい物を送る場合、細心の注意が必要だからです。よく言われる話ですが、ワインに詳しくないヤツが、ワイン好きにワインをプレゼントするのは止めとけ、ってことです。
異種格闘技戦を行う際に、相手の競技ルールに合わせるのは不利です。相手の土俵に乗って戦って打ち負かすのは爽快ではありますが、難易度が高く、勝負にのぞむにあたって入念な調査と準備が必要です。
特に今回のような短期決戦では、相手に寄せるが相手の土俵には乗らない、というのが重要になります。たぶん。

奥さんの職業は「アパレル」ということで、仕事場で花にふれる機会は比較的ありそうですが、直接的には関係ないし、詳しいとまではいかないだろうと見切り判断し、先に進めることにしました。

96「じゃ、奥さんの好きな色は?」

「え?」
「そうですね。たしか、紫です。」

ワタナベ、よくやった! イイぞ、ワタナベ! スゴいぞ、ワタナベ! できるじゃないか! (これも「私調べ」ですが、ほとんどの場合、旦那さんは奥さんの好きな色を知りません。)

さて、好きな色は盛り込む要素としては鉄板です。色はアレンジする要素としては何かと適用しやすいので。

そして出て来たのが紫。ナイス。
花束というジャンルを考えると、若干ですが珍しい色なので、アレンジで加えても「やった感」が伝わりやすく、効果が望めます。これが赤やピンク、緑、黄色等の、花束で目にしがちな色だと追加の工夫が必要になるところでした。

仕様が見えて来たので、設計に入っていきます。

96「なるほど。じゃ、普段から紫の入った服とかアクセサリーとか身につけてる感じ?

「いや、そういうのは特に。紫色の物を見てるのが好きみたいです。

96「なるほど、なるほど。」

96
そしたら、白バラ20本だけじゃなくて、店頭にある紫色の花をバラとバラの間に入れていく感じで合わせてもらって花束にしてもらいなよ。紫が入ると白バラの白さが映えるし。

「おー! なるほど!」

96
あと、ラッピングの紙も紫にしてもらいなよ。

「それ良いっすね! 絶対喜びます!」

服に紫色を使っているのか聞いているのは、すでに頭の中で設計を始めているためです。

好きな色をファッションに取り入れている人は多く、もしそうであれば、色のアレンジの加えかた、量もかわってきます。
身の回りに好きな色の物が多ければ、普段からその色を見慣れているので、少々の刺激では反応しづらいため、色のアレンジを加えるとして多めにする必要があるためです。

花は白バラは決定。ただ、白バラだけの花束にしてしまうと、ちょっとつまらないし、花の大きさ次第ですが、20本ではボリューム的にも物足りないかもしれない。
ボリュームを出すために追加で花を足してコーディネートするとして、ここで奥さんの好きな色の花を入れることで、足す理由がつくかなと考え、紫色の花の追加を提案。この場合、色が紫であることが重要なので、何の花でも良しとしました。
※ここでやっているのは UXデザインではなく、アートディレクション

色つきの花を加えるのには他にも理由があって、白い物は写真を撮ると白トビしやすく、引きの写真だと白い花だけの花束はボンヤリとした塊に見えてしまう懸念があったので、間に色のある物を入れることで、花束として見えやすくしようと考えたからです。
※ここでやっているのもアートディレクション

今は、プレゼントをもらったら写真を撮ってインスタやSNS、LINE等で共有する人が多いので、写真うつり、いわゆる「ばえ」の配慮も大事です。

これは、花束をプレゼントするということを、UXタイムスパン(ユーザーの体験を時間軸で区分したもの)における「一時的UX」とし、プレゼントされた体験を利用後に発生する「エピソード的UX」を考えるというものですが、これについて書き出すと長くなるので省略します。

UX白書 - 日本語訳版より)

さて、話を花束に戻します。

花束を構成する要素は、花、ラッピングペーパー、リボンです。

面積が大きいのはラッピングペーパーなので、ここに奥さんの好きな色を入れれば、奥さんに寄せているということが、よりいっそう伝わりやすくなるはず。なので、ラッピングの紙を紫にしてもらうようにしました。

「はい! それで行ってみます!」

96
「うん。がんばって。幸運を祈るよ」

ということで、喫煙所での立ち話で数分と短い間ですが、HCDプロセスに乗っ取りラピッドにUXデザインを行い、あとはワタナベに任せ、このプロジェクトの仕込みは完了。

その後、どうだったのでしょうか。

プロジェクトの実施結果

2、3日後、あの喫煙所でワタナベと再会しました。

「96さん! こないだのアレ!」

96「お!どうだった? 反応どうだった?」

ありがとうございます! 大成功でしたよ!」

96「おお!!そりゃ良かった!」

「隠しておいて、サプライズ的に渡したんですけど、いや、もう、奥さん大喜びで。しかも泣いちゃって。」

96「うお!! マジか!」

「今までにもらったプレゼントの中で1番嬉しいって、言われましたよ。」

96「そりゃ良かった…。」
96「どこら辺で反応してくれた?」

「そうですねぇ。」
「えっと、まず、単純に花をあげたことがなかったのでというのと、交際歴の本数のバラにしたというのがインパクト大きかったみたいです。」

96「おおお。そもそもの発想の芯で当てられたんだな。そりゃ良かった! スゴイ!」

「紫の包装紙にしたというのも喜んでくれて。『私のことを考えてくれて嬉しかった』って言ってました。」

96「おっしゃ!」

「で、ですね…、実は、行った花屋に白バラが数本しかなかったんですよ」

96「え?!」

でも、他に行く余裕もなくて、花屋さんに相談して、あるだけの白と他の色のバラで合わせて20本にして、けっこうなボリュームになったので、他の紫の花を入れるのはやめてアレンジしてもらいました。

96「なるほど。」

「で、白バラだけじゃなくなってしまったので、分かりにくいなって思って、後で『ほんとうは全部のバラを、誕生花の白にしたかったけど、花屋に20本なかったんだよ』って言いました」

96「なるほど。ちゃんと理解した上での状況判断、すばらしい。」
96「そしたら?」

「『誕生花を考えてくれるだけで嬉しいよ!』って言われました!」

96「おっしゃ!」

「自分のことを想って包装紙と誕生花を考えてくれたということが、やっぱり嬉しかったみたいです。アドバイスもらって助かりました。ありがとうございました!」

96「良かった…。」
96「でも、そもそもの、結婚式に交際歴を盛り込んでそこで花束を贈ろうとした発想が何よりも良かったし、そのコアな部分がちゃんと刺さって良かったね、ホント。」

「はい!」

96「そうだ。写真撮ってないの? 撮ってるでしょ? 見せてよ!」

「ちょっと待ってください。」
「これです。」




ー完ー

おわりに

「特別な日のプレゼントを UXデザインする ー 日常の課題解決にも使える HCDプロセス」いかがでしたでしょうか? 実際の freeeのプロダクト開発の現場でも、大まかな流れは同じです。ほんとです。

freeeでは、さまざまな経歴を持つ、個性的なUXデザイナーが沢山います。HCDプロセスを使って、そんな彼らが、それぞれ過去に得た経験、スキルを活かし、限られた時間や情報のなか、ユーザーさんのエクスペリエンスを、より豊かにするべく、日々トライと検証を繰り返しています。

興味のある方は是非、よろしくお願いします!

次は…

明日のAdvent Calendarは、パンダ系エンジニアのMacoTasuさんです。お楽しみに。




実は…

このエントリーを書いた後に同僚に指摘されて知ったのですが、4年前の2014年に同じくアドベントカレンダーで、同じくプレゼントをUXデザインするというネタを書かれた方がいらっしゃいました。
私とは違って、しっかりUXデザインした内容になっておりますので、絶対に読み比べないでください。

[CNET Japan ブログ]恋するあなたのためのUXデザイン ― 羽山祥樹


【おしまい】



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?