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J2第27節 vs東京ヴェルディ


1.試合情報

2021年8月28日(土) 18:30 KickOff
サンガスタジアムbyKYOCERA
明治安田生命J2リーグ 第27節
京都サンガ 3-1 東京ヴェルディ
得点者:端戸仁(20分・東京V)、ピーターウタカ(56分・京都)、ヨルディバイス(60分・京都)、イスマイラ(67分・京都)


【スタメン】


【選手交代】
◆京都
46分:三沢直人→イスマイラ
55分:荻原拓也→本多勇喜、武富孝介→荒木大吾
75分:松田天馬→曽根田穣
89分:ピーターウタカ→長井一真

◆東京V
64分:加藤弘堅→山本理仁、ジャイルトンパライバ→山下諒也
83分:梶川諒太→石浦大雅、杉本竜士→阿野真拓、端戸仁→佐藤凌我


2.二度あることは三度ある

前半立ち上がり、京都はプレスに来るヴェルディの中盤裏を狙うロングボールで打開を図る。


一方ヴェルディは最終ラインで横幅を取って京都のプレスをいなし、サイドチェンジで空いたスペースにボールを送って前進。
CFの端戸のポストプレーからIHの佐藤や梶川が受けて両WGに展開する形が見られた。


序盤はヴェルディのゲームとなった。
前半18分、敵陣内のスローインで武田と三沢のマークの受け渡しのズレからプレッシャーをかけきれずンドカのサイドチェンジを許してしまう。
麻田が対応に行くもパライバに巧みにかわされて万事休す。


ここだ起きた問題が2つある。
1つ目は武田が言及したようなリスタートにおけるマークの受け渡しのミスだ。

「裏返される直前、自分と直人(三沢直入選手)のところでスローイン時の受け渡しがうまくいかずに逆に持っていかれたので、そういったリスタートのちょっとしたところで隙をつくってしまったことは反省しなければいけません。」(武田将平)

失点に直結したのは18:45〜だが、16:00〜にも武田が相手のスローインでプレスをかけたものの三沢あるいは白井が連動できず逆サイドへの展開を許す結果となった。


選手間のコミュニケーションはもちろん、チームとしてリスタート等の細部までコンセプトを突き詰めていく必要性を感じた。



2つ目は右WGのパライバに対する対応だ。
失点に繋がった麻田だけでなく、42:09に荻原、46:02に武田が同様のターンで前を向かれている。恐らく彼の得意とするプレーなのであろう。
荻原に代わって入った本多はパライバに対してやや距離を取り、入れ替わられないように注意してプレーしていた。

選手個人にまでスカウティングが行き届いていないのかもしれないが、一度二度ならまだしも三度以上やらせてはいけない。



3.選手交代への布石と逆転劇

1点取ったヴェルディは引き気味で442ブロックを作り、ボール保持に転じると両WGが高い位置を取ってカウンターに行く姿勢を見せていた。
飲水タイム後に三沢を前線に上げて442にした京都は前半30分頃からペースを掴んだ。効果的なサイドチェンジを蹴っていたンドカに三沢を当てて封じ込める。いつものようにパスカットやアバウトなロングボールをマイボールにし、サイドチェンジを織り交ぜてサイドからゴールに迫った。


ボールの出どころであるンドカを抑えることと、武富ー荻原で守備に難があったサイドチェンジ先の左を封じることが後半のヴェルディ攻略の鍵となる。


代わって入ったイスマイラや荒木が精力的にプレスをかけ続けて後半の3得点を演出した。
特に荒木はサイドチェンジ先となる左サイドを、本多とともにほぼ完璧に抑えきった
相手の捕まえ方、2度追い3度追いするプレス等様々な面で成長が感じられ、ストームとして抜群の存在感を見せている。



4.許容するリスクとプラン

攻撃でも守備でも高い位置を取るSBは諸刃の剣である。裏のスペースを相手に使われてピンチになることもしばしば。
それを象徴する失点であった。


曺貴裁監督は以下のように述べている。

(サイドから仕掛けられるシーンが多かったことに対して)

「自分たちはそういうリスクも許容した上で今のサッカーをしているつもりです。反省すべきところはありますが、相手のボールの時も自分たちのボールの時もゴールに向かっていく形を模索する上では、また次に進めるきっかけになるような失点だったと思いますし、後半よく点を取り返してくれたと思います。」(曺貴裁監督)


ここ数試合はサイドからの失点が無かったので忘れがちだったがやはりサイドはウィークポイントである。


直近2試合では、守備が得意とは言えない荻原、武富を左サイドに並べている。この2人が攻撃面でもたらす破壊力の代償として相手のサイド攻撃を許容している節があるが、守備時の不安定さは顕著で確実に相手に狙われている
さらには(コンディション面も含めて)2試合とも早い時間で本多、荒木に交代している。

本多投入のメリットは大きく、リードしていたら守備を固めることができるし、ビハインドの場合でもウィークポイントを消して守備を安定させて攻撃に出ていけるようになる。


それでもなおスタートに荻原が起用されるのは彼の持ち味に対する信頼感と期待感からだろう。


プレータイムを与えて成長を促しつつも勝負のターニングポイントでは必ず勝てる策に切り替える
強引な推察だが、こういうことは少なからずあると思っている。



4.京セラ賞・白井康介

試合後、京セラ賞が発表された時にサポーターの間で???が出た。かくいう私もだ。

前半から積極的に仕掛けてクロスを上げていたがフィニッシュに繋がってないし、ビルドアップでも対峙する杉本に粘られスローインやファールでマイボールにするのが精一杯だったように映っていた。


改めて試合を観直すと、突破力・スピードのある杉本を完封していた。
左サイドがやられている以上、右サイドからも同様にサイド攻撃を受けると守備は破綻する。白井が杉本を1対1に持ち込んで抑えきったということがチームにとって大きな仕事になっていた。

先程「マイボールにするのが精一杯」と書いたが、守備でもハードワークを見せる杉本に対して低い位置で奪われなかったというのもカウンターを最小限に減らせた要因だろう。

実はもう1つあって、前半の京都の攻撃で、サイドチェンジを白井がフリーで受けてドリブルを仕掛けていくシーンが何度かあった。後半のヴェルディはそこをケアしようとしてきたため中盤に綻びができ、京都が中盤でボールを握って押し込む展開を作れた。


選考基準等はわからないが、なかなか渋い京セラ賞だと思う。


5.最後に

大外ケアの部分でヴェルディの策が裏目に出たところで京都がテンポよく3点取れて勝ったという試合にはなったが、試合前のプランや試合中の修正力、選手交代の采配はどちらも面白い試合だった。


スタイルの異なる2チームの差は「強度・インテンシティ・アジリティ」等のニュアンスで表される言葉に出たと思う。


「ボールは疲れない」という言葉があるが、どんな戦術であっても走力がモノを言う場面が往々にしてある。京都はここを意識したチーム作りをしてるが故に並大抵のチームには絶対走り負けない。


「走ること」が当たり前になってきてその基準が麻痺しつつある今日この頃です。
あれだけハードワークできるのはすごい。


余談ですらありません。



お読みくださったみなさん、最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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