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J2 第32節 vs長崎 〜2度目の力負け〜

この試合のレビューを書くにあたって、以下の2つのレビューを参考にさせていただいた。
どちらも前回対戦(J2 第21節 京都0-2長崎)の試合だ。

私が前回のレビューを書いていないのでこの2つのレビューに力をお借りして前回対戦と今試合を比較しながら、京都が成長した部分と完敗した部分を書いていこうと思う。

サッカーの面白い戦術分析を心がけます らいかーるとさん

Take it easy とめさん


【追記】

最初に大風呂敷を広げましたが広げっぱなしです。すみません。


1.試合情報

2021年10月2日(土) 14:00 KickOff
明治安田生命J2リーグ 第32節
トランスコスモススタジアム
V・ファーレン長崎 2-0 京都サンガ
得点者:毎熊晟矢(30分・長崎)、植中朝日人(65分・長崎)

【スタメン】

【選手交代】
◇長崎
78分:植中朝日→都倉賢
82分:澤田崇→山崎亮平、名倉巧→加藤大
90+1分:鍬先祐弥→ビクトルイバルボ、エジガルジュニオ→玉田圭司

◇京都
46分:宮吉拓実→イスマイラ
54分:荻原拓也→本多勇喜、福岡慎平→白井康介
70分:武田将平→荒木大吾、川崎颯太→三沢直人



【戦評】
立ち上がりから京都ペースで試合が進む。前線からのプレスで相手をはめてのショートカウンターや、飯田・福岡・宮吉を軸とした右サイド攻撃から何度もゴール前に迫る。
なかなかシュートまで行けずにいると、長崎に流れが傾いた時間帯にコーナーキックから失点。

後半、イスマイラを始め攻撃的な交代カードを切るも攻撃の形を作れず、逆にカウンターから追加点を許してしまう。
試合終盤には飯田が負傷退場するアクシデントもあり、長崎の牙城を崩せずシーズンダブル(同じ相手に2度の敗戦)を喫した。

442に布陣を変更した後半の戦い方について、

2ボランチになると相手にボールを持たれることが多くなりました。(中略)今のところ思ったようにプレッシャーがかからないなと感じています。」(麻田将吾)(京都サンガ公式HP より引用)
後半は攻撃の攻め手をうまく共有できていなかった気がします。前の選手はゴールへの意識が強くロングボールを要求していた一方で、 中盤の選手はまだ時間があるのでじっくり攻めようとしていて、ポジショニングも含めてひとつの方向性を持ってできていなかったと思います」(川崎颯太)(京都サンガ公式HP より引用)

と選手が攻守のチグハグさを口にしていた。

個の力においても組織力においてもレベルの高い長崎相手に、後半は特に整備されていない442のミラーゲームを挑んで完敗した様相だ。

勝ち点差はまだあるとはいえ、昇格レースから長崎を蹴落とせず、残り10試合に向けて痛い敗戦となった。


2.前回対戦の復習

前回対戦時はJ2の第21節、シーズン折り返し地点での試合だった。この時も負けこそすれチームはリーグ2位という好位置につけていた。

試合内容を振り返ってみる。

序盤はお互いがセーフティーなロングボールを選択しているように見えた。
長崎はプレッシングでもあまリスクを冒さない。11人で構えてボールを奪いに行く雰囲気だった。よって、センターバックは自由にボ一ルを持てる状況の京都は、繋ぐこともあったけれど、どちらかといえば、速攻がメインであった。
京都は早い攻撃を志向しているが、長崎は試合のテンボをゆっくりなものにしようとしているように見えた。


前半、ロングボールでエジガルジュニオを起点とした攻撃から長崎が先制。飛び出しからフィニッシュまでカイオセザールの強さが際立った。


セットプレーやスローインでも工夫も見られ、すべての策を用いてゴールを狙いに行く。

しかしながら、右サイド自陣深くで飯田が繋ごうとしたところを奪われ、カウンターを食らい長崎に2点目を許す。

長崎がすでに2点リードである。だから、無謀なアタックをしてこない長崎。(中略)(京都は)無秩序への誘いである。とにかく攻撃を仕掛ける。
(長崎は)困ったら縦パスでなく、困ったらバックパスをキーパーまで下げて蹴っ飛ばす。京都のプレッシングを空転させ、前からのプレッシングに誘導することによって全体を間延びさせ、ロングボールのセカンドボール争いを優位に持ってくる

(以上 サッカーの面白い戦術分析を心がけます より引用)


「オープンな展開を作ってこじ開けようとする京都と相手の嫌がる攻撃を繰り出して先制し試合をクローズした長崎」という構図の試合だった。


3.京都の成長

京都はボールを握ることを厭(いと)わない。しかしラフな縦パスを起点とする攻撃が多いゆえに、コンパクトな陣形を作って引かれると崩せないという場面が目立っていた。

しかしこの試合ではボール保持において明らかな成長を見せていた。バイスを起点とし、右サイド飯田・福岡・宮吉の3人の連携で何度かボールを前進させていた。

13:52〜14:00 左サイドでボールを奪ってからショートパスで丁寧につなぎ、飯田がウタカを狙ったグラウンダーのクロスをあげたシーンなどがそれに当たる。


バイスからの縦パスやバイス・飯田・福岡・宮吉のユニットで中盤のプレスを無効化する。ボールホルダーを中心に他3人が浮いたポジションを取る、あるいはおとりになる動きで相手に選択を迫り、相手がアクションを起こしたところでボールを動かす。

右サイドで引き付けて相手ボランチを動かしたところで中央へのクロスorバイタルエリアへの横パスを中心に最終局面へと移行する。


442のブロックを作る長崎に対して、最終ラインから丁寧にボールを動かして敵陣深くまでいけたというのはひとつ大きな進歩だろう。

ただ最終局面では壁を作られ、「引いた相手を崩しきれなかった」という部分では課題が残った。


4.浮き彫りになった課題

対長崎で2試合とも0-2という結果は京都にとって大きな課題が残るものとなった。

京都は1対1で勝つことをベースに攻守が組み立てられている。ではその1対1に勝てない時にどうするか?
じっくり構えられてしまうと、攻めあぐねてしまう。自分たちでボールを持つことを嫌がらない京都ではあるんだけれど、相手の守備を動かす事は得意としていない。そして間の悪いことに、長崎はリーグの中でも個人能力で上回っている。スペースが狭くなると、得意の機動力を活かせず、 逆にフィジカルで押し切られてしまう場面が目立つ。

以上 Take it easy より引用


ここから考えられる京都の大きな課題が2つある。

①1対1で上回る能力(個人の質)
②引いた相手を崩す方法

①に関してはボールを奪う・奪われない能力だ。止める・蹴るといったテクニックのみならずボールの受け方・体の向き・状況判断能力など個人の細かい資質による。

曺貴裁監督はそこを選手の成長でカバーしようとしている節もあるが、成長でカバーしきれない部分も確実に出てくるので、ピンポイントにかつ積極的に資金を投入すべきである。

②は残り10試合、そしてその先を戦っていく上で嫌でも身につけなければならない。
夏の移籍市場で京都に足りない高さ・パワーを持つイスマイラを獲得しており、崩しきれない場面でそこに頼っているのが現状である。

しかし長崎相手ともなると不発に終わっている。個の能力が高い相手に引かれた場合は完全に"詰み"である。


現在のイスマイラの起用法として1点が欲しい場面に登場しウタカと2トップを組むことが多くなっている。イスマイラが中央に留まることでウタカをフリーにし、ウタカを中心としたチャンスメイクからクロスなどでイスマイラの高さ・パワーを生かすというものだ。

個人的にはイスマイラの使い方の幅を広げることが出来れば面白くなると思っている。
イスマイラはフィニッシャーの役割が大きいが、ポストプレーなどで味方を使えるようになれば攻撃の幅も広がるはずだ。相手目線だと、最終的にイスマイラにボールが集まることが分かっていればそこさえ潰してしまえばなんとかなるからだ。

周囲がどう絡むかよりも、イスマイラが自分の強みを活かして周りを使うことができれば、引いた相手に対して強力な攻撃のユニットが組めるのではないかと思う。


5.最後に

締めに入る前にどうしても書いておきたいことを2つだけ(も)書こうと思う。

①長崎の前半のボール保持における戦い方が飲水タイム前後で変わっていた。


◇飲水タイム前
2トップ&2SHを前線に置く。後ろのビルドアップで京都のプレスを誘発。SBがマークを捨てて出てくる状況を作る。特に左サイド、バイスに対してエジガルと名倉の2枚を当てる形を作り、エジガルのポストプレーなどからバイスの裏を狙う。

プレス誘発からのロングボールが主体。



◇飲水タイム後
左SH名倉が福岡と宮吉の間にポジションをとって縦パスを引き出すようになる。そうすることで宮吉が中央に絞らざるを得なくなり、左SB米田がより高い位置でボールを受けることができていた。

立ち位置で京都の中盤をズラすことによってロングボールに頼らないビルドアップが可能に。


その効果が出始めた時間にセットプレーから長崎が先制した。



②2失点目に繋がったバイスのミドルシュートについて、他の選択肢があったのではと思った。

「引いて守る相手にミドルシュートは有効である」というのは耳にしたことがあるかもしれない。だがミドルシュートをブロックされてカウンターを食らうというのはよくあることで、打つこと自体がよいのではなくそのタイミングこそが重要だと思う。

・ディフレクションが発生した場合に詰める味方がいるか
・ブロックされた場合にこぼれ球を拾える陣形になっているか(またはカウンターを止めれるリスクマネジメントができているか)

この2点から、個人的にあのシュート選択はうーん…といったところだ。


カウンターを食らって失点したというのは結果論なのでさておき、あの場面で被カウンターの可能性を潰しつつよりゴールに迫る選択肢を考えてみた。


カットインする前後で合わせて6つ挙げているが、現実的なのはカットイン前の2つとカットイン後の②と③あたりだろう。

右サイドに相手を寄せて中盤を横断する横パスでサイドチェンジ→左サイドのペナルティーエリア内から崩す という黄金パターンを持っており、ここでもそれが可能な配置になっているだけに、カットイン後②(バイス→本多の横パス)のほうがベターだったのではないか。



試合内容・結果よりも”力負け”の意味を考えるあまりなかなか筆が進まなかった長崎戦レビューでした。力負けの意味はいまだに分かりません。

下を向く暇はないのですが個人的にはこの敗戦がいまだに引っかかっています。

最後までお読みいただきありがとうございました。


以上、長崎0泊3日車遠征民より。



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