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2019第27節 京都サンガ×栃木SC


8月10日(土)

明治安田生命J2リーグ 第27節
@たけびし(旧・西京極)

京都サンガ 2-2 栃木SC
得点者:西谷和希(39分・栃木)、大黒将志(59分・栃木)、小屋松知哉(73分・京都)、一美和成(86分・京都)



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1)スタメンとその意図


京都の4123の並びは変わらない。
最終ラインに出場停止明けのCB本多が戻ってきた。守備貢献度が高く、相手の守備ブロックの中でも外でもでボールを動かせる福岡が右SBに。
IHにはヴェルディ戦で良かった宮吉と崩しで良さを発揮する金久保。右WGは前節走力で違いを生み出したジュニーニョ。


構成として、引いて守るであろう相手を崩すのに、一美のポストプレーと宮吉の裏抜け、金久保の狭いエリアでのプレーを期待してるかと。
両ウイングは突破力、そしてボールロスト時の即時奪回できる走力を。
最終ラインとアンカーはボールを動かせるメンツ。


一美、宮吉、金久保の3人が5バックの中央を引きつけることで、サイドで小屋松やジュニーニョが1対1で仕掛けれる状況ができる。
そういう場面をどれだけ多く作れるか。
また宮吉の最終ラインとの駆け引きでラインコントロールが崩れた瞬間を見逃さずスイッチを入れられるか。


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2)京都対策と消極さと閉塞感

◇栃木の京都対策

過去に対戦した5バックのクラブはいくつかの京都対策を見せてくれた。
試合を追うごとにどのクラブも京都対策の中でも効果を発揮した部分をアレンジして組み合わせてきた。

栃木の場合、532(352)のフォーメーションで迎え撃ってきた。

・5バックは5トップ気味になる京都の攻撃陣をマンマーク
・3センター(中盤の3枚)は左右にスライドして縦へのパスコースを消すこと、中央とその左右のハーフレーンを消すことを主とする
・2トップは庄司をケアしつつ、中央への縦パスとCBの運ぶドリブル(ドライブ)を牽制

要は、中盤はスペースを埋めて、最終ラインはマンマークで人を捕まえるということ。

全体としては0-0の時間を長くして、カウンターのチャンスを待つということに尽きる。

そのための大黒西谷のツートップだろう。


◇見当たらない突破口

恐らく相手が予想と違うフォーメーションだったので、特にSBのポジショニングと起点を作る場所は立ち上がりから手探りの状態が続いていた。

ボール保持時における235という基本的な形が相手の532とガッツリ噛み合ってしまうことから突破口が見つからなかった。


15分あたりから今やお馴染みの庄司を最終ラインに下げた343の形。
たしかにこれで庄司へのプレッシャーが緩くなり、2トップの両脇からボールを前進させる機会が増えた。また3センターの両脇にボールを運ぶことも多くなった。

しかし最終ラインのマンツーマン守備に手をやきなかなかシュートを打てず。
アタッキングサードで相手のマークを外すためのポジションチェンジやワンタッチでの連携など、スピードアップができない。


決定機を作れたのは19分。

19:09〜 GK加藤がビルドアップに参加し、栃木2トップと3センターのライン間にボールを供給することに成功。
黒木が3センターの脇でボールを受け、サイドに張っている小屋松へ。
中に切れ込んで、中央へパス。金久保がスルーし、受けた福岡が宮吉とワンツーでダイレクトシュート。

1度後ろに戻してからのビルドアップで、2トップと5-3ブロックを分断し、さらに3センターの脇で黒木が起点を作れたことは狙い通りだった。

さらに3センターを左右に揺さぶるというところで、小屋松が中に切れ込むドリブル、右SBの福岡がゴール前に上がってくるというリスクを負った良い連携がシュートを生んだ。

突破口ができたかに見えたが…


◇消極さと閉塞感

自らボールを動かしてゴールに迫ろうとする姿勢はあったものの、相手の守備ブロックを崩しにかかるところで勇気を持って仕掛けたりランニングすることが少なかった。
むやにやたらに走れば良いというわけではないが、相手を出し抜くような動きというのはあまりなかったのではないか。


ここ数試合、ミスからカウンターを受け失点をしたこともあり、全体的にどこかセーフティにやろうとしてるように見えた。

負傷や疲労でメンバーが流動的になり連携不足が否めない点もある。

こうした小さな積み重ねがボールを保持してるのに消極的に見えたり、積極性を出してるのに閉塞感が漂っていたりする原因ではなかろうか。


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3)必要なリスクと失点

20分あたりから、栃木は西谷を左サイドにおいて541に布陣を変更。
中盤の3センターのスライドが間に合わない場面が出てきたので、完全にスペースを消すためにテコ入れを図った。

アンカーポジションでボールを動かす庄司には大黒がマンツーマンでつくことになった。


大黒のマークを嫌って最終ラインに下がってビルドアップに関与することが増えた庄司だが、最終ラインで3(本多庄司安藤)対1(大黒)の状況でボール保持することが容易になっただけで、ボールを前に運ぶとこは依然として苦戦していた。


そこで33:40あたりから、庄司が栃木の中盤2CHの間に入るようになった。

愛媛戦の541崩しで見られた形で、CHを中央に引きつけることで中盤に隙間を作り、ハーフレーンにボールを通しやすくするというもの。
相手のSHがハーフレーンを埋めるため中に絞ると、外のWGへのパスコースが空く。逆に外をケアしようとするとハーフレーンにパスコースができる。


これにより再び京都が押し込み始めた。


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愛媛戦ではIHの片方がCHの間に入っていたが、今回はアンカーを務める庄司がこの役割を担った。

これにはリスクが伴う。

庄司が前目のポジションを取るため後ろの枚数が少なくなり、カウンターを受けた際に突破されやすくなる。

黒木や福岡がバランスを取っていたものの、38:09〜 縦パスを入れたところを奪われ、こぼれ球を拾った西谷が独走。
ゴール前で一度は止めたものの、ボールは西谷の足下へ。
手痛い先制点を献上してしまう。


両SBも横に開いて攻撃的なポジションを取っており、CBの2人に負担がかかっていた。
さらにルーズボールを拾おうとした安藤がかわされ、本多が1人で対応。黒木と福岡、安藤が全力で戻るはめに。

この時の本多の対応が良かっただけに、ボールを奪い切りたかったところだ。


被カウンター覚悟で、状況を打開するために取った策なので、安易に責めることは出来ない。
得点の気配がない以上避けなければならない失点ではあった。

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圧倒的にボールを保持していた中で、特に右サイドは上手くいっていなかった。

ジュニーニョ、宮吉、福岡のとこに流動性がないため相手が容易にマークできていた。
ボールだけでなく人が動いてマークを外す・付きにくくさせるということが出来なければ、栃木のブロックを崩すことは難しい。

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4)不用意な失点

後半から、監督の指示にあったように、自ら仕掛けていく積極性を全員が持っていた。
50分、51分と小屋松が立て続けにドリブル突破からクロスを供給。金久保や宮吉はフリーランを繰り返しながらゴール前に度々侵入していった。

右サイドでも福岡とジュニーニョが流動性を見せ、ハーフタイムで修正したことがうかがえた。


だがしつこいマークとゴール前を固める栃木を崩すのは困難である。


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リトリートに徹していた栃木は58分頃の京都の後方でのビルドアップに対して前からプレスをかけてくる。
ボールを奪うのではなく、中盤より前にボールを運ばせない、京都の選手に前を向かせない守備をしていた。

防戦一方なのは承知の上で、失点しないために自ゴールから遠いエリアでのプレーを増やしたいということだ。

GK加藤がビルドアップに関与してボールを動かす姿勢を見せていた中、京都が58:27に中盤左でファウルを獲得。
黒木の緩いリスタートと庄司のトラップミス、そこに虎視眈々と狙っていた大黒がボール奪取からゴラッソ。
加藤が前に出ていたのも見逃さなかった大黒は流石としか言えない。


Twitter上で「なぜ加藤はあんなに出ていたのか?」「ポジショニングがおかしいのではないか?」と言った声が見られたが、大黒のゴールから30秒ほど遡って見てもらいたい。

相手がプレスを強めてきた
・それに対してGK参加でボールを動かそうとした

・加藤が前でボールに触ることで全体を押し上げることができる

この3点から加藤があのポジションを取っていたことを納得してもらえるだろう。

とはいえ

・リスタートのボールは狙ってこないだろうという怠慢
・大黒の狡猾さを見誤ったこと
・トラップミス

と、いくつかのミスが重なれば失点するのは自明の理だ。


この失点を以て、京都は窮地に立たされた。


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5)京都の逆襲

◇猛攻の数々

59:43〜 黒木のサイドチェンジ、そのこぼれ球を拾った福岡のクロスを一美が頭で合わせるもユヒョンのファインセーブに阻まれる。

63分、金久保に代えて闘莉王を投入。ファーストプレーで安藤からのスルーパスをDFを背負いながらシュートもここはユヒョン。

64:48 ジュニーニョのクロスから闘莉王がヘディングシュート。しかしまたもユヒョンが触りクロスバーに嫌われる。

72:14〜 京都が自陣から繋ぎ、擬似カウンターのような形で栃木を押し込む。黒木のサイドを変えるボールから小屋松がドリブルで仕掛けシュート性のクロスをあげた。
クロスを警戒しゴールから少し離れてポジションを取っていたユヒョンの意表を突き、ようやく1点を返す。


73:55〜 WBとHV(3バックの左右のCBのこと)の間のスペース(チャンネル)が開いたのを見逃さなかった黒木と小屋松で決定機を迎えるも、何度目か数えることを諦めたユヒョンのセーブ。


85:49 言わずもがな、一美の思いきりの良いミドルシュートでようやく試合を振り出しに。


89:09 黒木のサイドチェンジから終盤に投入された中野が決定機を迎えるもユヒョンの前にゴールを割ることが出来ず。


2-2で試合終了。

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◇猛攻の要因

後半の怒涛の反撃を支えたのが闘莉王と重廣だ。

・闘莉王にマークが集中することでほかの選手がフリーになる状況が増えた
・重廣が左右に自由に動くのでマークが絞りきれなかった

この2人の働きにより、左では小屋松が、右ではジュニーニョと福岡がより持ち味を出すことができていた。

一美は79分頃から、ターゲット役を闘莉王に任せてPA付近に下がってプレーすることが増えた。
そこからポストプレーでのコンビネーションや得意のミドルシュートを狙うことでゴールに迫ろうとしており、これが2点目に繋がった。


クリアボールを本多、安藤、庄司が徹底的に回収していたこと、本多がボールを持って前に出て相手を引き付けていたことも忘れてはならない。


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6)雑感

采配によって流れを変えなんとか2点を追いついたことは京都の力の証明になったが、チーム全体の課題はまだまだ多い。


メンバーが変わる中でこれまでのような戦いが影を潜めていることから、サブに甘んじる選手の戦術理解度や主力選手との連携面に疑問を抱かざるを得ない。

チーム作りをする上でメンバーが固定的になってしまったことや水戸・長崎・山形・大宮など強豪との連戦でチームがかなり疲弊していたことのツケが回ってきてるように感じる。


チーム作りやマネジメントとしては常にベターな選択をしてきたと思うが、層の薄さが顕著になっているだろう。
岐阜・金沢戦などは騙し騙しやり繰りしてなんとか勝ち点を稼いでるものの、一時期の勢いは見られない。


リーグ戦残り1/3を総力戦で戦うために、この先使える戦力を試す・チームにより馴染ませることができるのは今だけだ。

もしかしたらそういうところを監督は見てるのかもしれない。


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7)最後に

上記のように、今はラストスパートに向けた最後の準備期間だと捉えて、我慢する時期なのだろうか。


憶測で決めつけて納得するのはよくないので、試合での選手の振る舞いを何度も分析することで、これからもチームの状況と今後の変化を探っていきたい。


ここまで良い位置につけており、昇格に値する勝ち点を稼げているので是か非でもサポーターの期待に応えてもらいたい。


0-2になっても諦めず、むしろボルテージを上げて選手を後押しした京都サポーターを誇らしく思う。

今季1番の熱気、飛び跳ね歌い続ける人の多さ、全体に伝播する手拍子、一体感。


誰もが最後まで京都の勝利を願って諦めなかった証拠だ。

この気持ち、この雰囲気を大切にしたい。

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