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2019第8節 栃木SC×京都サンガ


4月7日(日)

明治安田生命J2リーグ 第8節
@グリスタ


栃木SC 1-2 京都サンガ
得点者:藤原広太朗(3分・栃木)、一美和成2(42分、52分・京都)


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1)脅威の西谷ツインズ

過密日程ということもあり、DAZNに残ってる試合の中から飛ばし飛ばし見たくらいなので試合前プレビューとしてはあまり満足いく物が書けない。

栃木×山形では山形のワントップ・ジェフェルソンバイアーノを孤立させ山形に好きにやらせず、スコアレスドローとなった。
4バック(4231)と5バック(3421)を相手の形によって使い分けて相手の良さを消しつつ、西谷ツインズを中心として主に左サイドから攻撃を仕掛けてくることが多い。

西谷和希に関してはチャンスメイクからフィニッシュまで担えるだけでなく、相手をしつこくチェイスする走力もあるため非常に厄介だ。
西谷優希は左のひとつ後ろのポジションからの積極的な攻撃参加が目を引く。また兄弟間のコンビネーションは良好だ。
京都サポーターのよく知る大黒将志もとことんいやらしい存在であるが、攻撃の起点として考えるならば、最も警戒すべきは西谷ツインズの左サイドであろう。

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2)試合前プレビュー

栃木の印象として、ボールを収めたり落ち着かせれる選手がおらず、どうしてもドリブルに頼りがちになってしまう。
(そこで相手をかわしていけるのが西谷和や大崎といった選手なのだが…)

被カウンター時でもしっかりと遅らせることを心がければそこの脅威は薄れるはずだ。
また左サイドの西谷ツインズには複数人で囲んで、チャレンジアンドカバーが出来るようにしておくことご大事だ。

FWにはハムストリングの怪我から復帰した大黒が入りそうだ。
ゴール前の動き出しはもちろんのこと、不用意・中途半端な横パスやバックパスがないように十分注意したい。京都サポーターなら大黒がそこを常に狙っていることは百も承知だろう。

栃木は4231でも3421でも最終ラインに人数をかけることが多い。た陣形が縦にはコンパクトだが横に広がりがちな節がある。
先発濃厚な宮吉や重廣がそこを使うことが出来ればおもしろい。


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3)試合後雑感

◆両者のフォーメーションと京都の狙い

ホーム栃木は4231も考えられたが3421、アウェイ京都は532。

●守備の変更点

541の時は相手のビルドアップに1トップだけで対応することが出来なかった。また中盤の選手が前に出ると空いたスペースに縦パスを入れられることも多く、機能していたとは言い難い。
そこで前を2枚にすることでプレスの強度を高める狙いだ。
相手の3バックを2人で見て、後ろはそれぞれマッチアップを作る。課題だったバイタルエリアはマッチアップする相手のいない庄司や運動量のある重廣でカバー。

またDFリーダーとして安藤をリベロの位置で起用。
守備で全体を統率する役割を期待したい。

試合では、山形戦の影響か、球際で荒いとも言えるほど相手に対して厳しく寄せていた。時間帯によってカードが数枚出たものの、デュエルに関して改善されたと思う。

●京都の狙いと小屋松過労死必至の攻撃

・ワイドに守る5バックの選手間の間やWBの裏のスペースを使う
・栃木のCHがサイドに流れて来た時に出来る中央のスペース(バイタルエリア)を使う
・中央でポストプレーなどを混じえて少ないタッチで崩していく
・ボールを早く動かす


というのはいつも通りで、相手のプレッシャーが甘いことから、庄司を起点としてボールを握りながら戦うスタイルをかなり意識していたように見える。

・宮吉…DFラインの裏に抜ける動き
・一美…DF・MFのライン間でボールを引き出す動きやポストプレー
・金久保…右のハーフスペースからチャンスメイク

・重廣…後列からの飛び出し


など、選手の特長を組み合わせながら栃木の守備網に穴を開けようとしていたことも見えていた。

サイドでは、左は小屋松のドリブルや重廣の飛び出しを、右では黒木、金久保らが絡んだパスワークで好機をうかがう。

いつもよりやや前がかりな分、後ろ3枚と庄司がバランスを見ることでカウンターに備える形であった。

難点があり、小屋松がいつもより長い距離を走る必要があるこの布陣、過労死しないか心配で仕方なかった。


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◆前半

●機能しない532

栃木は開始早々に先制したことからプレス強度を抑え、重心をかなり低くしてきた。
こうしたことから、京都はマークが手薄になった庄司を中心に攻撃を組み立て、前半の多くの時間を敵陣で過ごすことが出来た。
しかしパスを回せど中々崩しきることが出来ず、決定機と言えたのは安藤がドリブルで侵入して宮吉に縦パスを入れた17:28のシーンくらいか。

ロングボールに抜け出した一美のシュートなど、シュートは他にもあったものの相手ゴールを脅かしたとは言い難い。
右サイドでは細かいパス回しは見られたものの誰がどこに動くのかはっきりせず、金久保が気を利かせるしかなかった。

小屋松は左SBとして最高峰での守備参加もあるため、奪ってからサイドから縦に速い攻撃ができず、遅攻しかできなかったのも要因か。

1点を追う展開、栃木は守備を重視し前半1-0で折り返す狙いがあったことから、押し込み続けるもなかなか苦しい前半であった。

●4123からのラッキーパンチ

35分頃からフォーメーションを4123に変更。

最終ライン右から

上夷 安藤 本多 黒木

金久保 庄司 重廣

宮吉 一美 小屋松

各選手のポジションをはっきりさせたこと、小屋松を高い位置でプレーさせたことが功を奏してアタッキングサードに侵入する回数も増えた。40分の小屋松のシュートは枠外だったもののフォメーション変更が吉と出た。

41分には相手のゴールキックの連携ミスを小屋松が逃さず、一美の同点弾に繋げた。
前半のうちにラッキーな形であるが同点に出来たことは大きかった。

陣形が整ったことからカウンターのピンチを未然に防ぐことが増えたのも良い点だ。


●後半に向けて

京都
・4123の右サイドの役割の明確化
・アタッキングサードで中☞外☞中と相手を揺さぶる攻撃
・セットプレーでは大黒やヘニキにさらに要注意
栃木
・前線からのプレス強度を強めボールを奪いに行く
・全体のコンパクトさを取り戻す
・庄司へのマークをはっきりさせ、自由にプレーさせない

といったことが修正点となるだろう。


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◆後半

●立て直した栃木と嘲笑う京都

後半頭から大黒に代えてCH(ボランチ)の古波津を投入。
庄司をマークする役割を与えられた彼は、前線からのプレスに連動しつつ庄司をケアすることで栃木の立て直しに貢献。

追加点の必要な栃木はCHやWBにも連動性が見られるようになり、京都はボールを回しにくくなった。

それでも京都はブレることなく、4バックと庄司が中心となって、相手のワイドな陣形の隙間を縫ってボールを進めようとしていた。
そして52分、

スローインの流れから、安藤がまたもやドリブルで敵陣に侵入すると縦パスでチャンスを演出。
重廣や一美が少ないタッチで回すと、小屋松が左から仕掛けて中央へ折り返す。金久保がスルーしたところに、走り込んできた一美が待望の勝ち越し点をあげた。

勝ち越して一気に優位になった京都はボールを保持してリスクを回避。ペナルティエリア内に何度も侵入するなど、今季1番、追加点の匂いがした。
被ボール保持時は451の強固なブロックを作って枠内シュートを打たせず、こちらもまた今季1番の出来だ。

70分すぎ頃から、さらに前がかりになったところを突いて度々カウンターを仕掛け、果敢に3点目を狙う。ダメ押し点こそなかったものの、巧みな試合運びで栃木に良いプレーをさせず、完璧と言っていいほど相手を封じ込めることに成功。
脅威だった西谷ツインズもクロスを上げるのが精一杯であった。

後半に限っては完勝だったのではないか。


◆総括

前半立ち上がりら失点、後半立ち上がりは相手が修正してきて苦しめられたものの、良い時間帯に点を取れた京都がなんとか勝利。
何人かターンオーバーした中で、2得点の一美や決定的な動きを見せた金久保、ドリブルでチャンスを作り守備でも全体をコントローラーした安藤など、それぞれが持ち味を発揮。
後半は安定した守備を披露するなどポジティブな収穫の多い試合であった。

京都サイドははっきり言ってラッキーだったが、前半のフォーメーション変更と勝ち越してからの試合運びは勝利に値するものだったと思う。

栃木はボールを奪ってからの収めどころがなく、西谷和や大崎のドリブルがボールを運ぶ唯一の方法になっていた。これは非常に対応しやすく、あまり怖さもなかった。またボールを動かすことに長けた岩間が負傷退場したことも響いただろう。

しかし時間帯によっては西谷ツインズの連携で左サイドから何度も攻撃を仕掛けるなど、京都が苦しめられた部分もある。


栃木はホームグリスタの劣悪な芝で、ボールを握るサッカーをするのか、割り切って縦に早く攻めていくのか、もう少し再考する必要があるかもしれない。

京都は後半の栃木の時間帯にできていた451での守りを継続していければ、クリーンシートも減ってくるであろう。


久々の勝ち点3。
まだまだ上位に食らいついていけそうな予感がする。

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4)今日のポイント『金久保選手のエロいプレー』

◆必殺・ダイアゴナルラン

京都の2点目を生み出した金久保の動きが今日のポイントだ。

50分頃から、中央やや左からボールを進めていた京都。この時金久保はペナルティエリアにおり、左サイドで小屋松がボールを受けた場面。

①小屋松が左から中にドリブルで切れ込む
②同時に金久保が相手を引き付けながら斜めに動く
③空いたスペースに一美が飛び込んできてゴール


②の相手を引き付けながら斜めに走るダイアゴナルランという動き、これが実に見事であった。
まさに一撃必殺。それに加えて、マイナスのクロスをスルーしてお膳立てするというエロさ(決して卑猥という意味ではない)。

金久保のスペースを作る動き&スルーがなければ、DFに跳ね返され、ため息がもれたであろう。
しかし彼のクレバーなフリーランによってゴールが生まれたと言っても過言ではない。

この他にも、ボールポゼッションの中で味方と常にトライアングルを、時にはひし形を作る動きも見せており、流石としか言いようがなかった。

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5)最後に

次節はホームに金沢を迎える。金沢は昨季頭角を現した垣田を中心に、非常に鋭いカウンターを持っている。私の印象では、琉球と並ぶくらいJ2トップクラスの強烈さだ。

ここ5試合では4勝1分12得点2失点(うち町田戦6得点)と波に乗る。どこからでもゴールを狙ってくる勢あもあり、恐らく京都は後手に回る戦いとなる。
順位でも京都と勝ち点2差の6位におり、上位に留まるには落とせない。

と言いつつも柏や山形に負けているので不安だ。


今年は例年になく混戦なので、どれだけ酷い内容であっても、最低でも勝ち点1はもぎ取ってほしい。


以上。

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