働かざる者たち5話:3人目のレンガ職人

3人のレンガ職人の寓話(※)をご存じだろうか。

旅人が3人のレンガ職人に出会った。
彼らは各々レンガを積んでいた。「あなたは何をしているのか」と旅人が問うと、それぞれこう答えた。

1人目のレンガ職人:レンガを積んでいる。どうしてこんな大変な仕事をしなくちゃいけないんだ
2人目のレンガ職人:壁を作っている。生活のために金が要るからね
3人目のレンガ職人:歴史に残る大聖堂を作っている。ここで多くの人が祝福を受け、悲しみを払う。素晴らしいだろう?
(要約)

つまり仕事は同じでも目的をどう設定するかでやりがいが変わる、という話だ。
5話は現在1.5人目くらいの立ち位置をフラフラしている橋田が、3人目のレンガ職人になれるかなれないかの、ターニングポイントとなる回だったのではないか。

1ヶ月前にシステム部が子会社化され、「裏方の仕事をしている自分はバカにされている」と働く意義を完全に見失った橋田。
川江に愚痴っても「ちょっと会社で肩身が狭くなったからって、安易に漫画にしがみつこうとするから見透かされんの」と取り付く島もない。

そういう心の闇は付け込まれやすい。
新田のスクープ記事を羨む橋田の目の前でその新聞をビリビリと破り、雨で濡れた靴を乾かすために使う販売一部部長・風間敦(柳沢慎吾)。
風間はフリーズしたパソコンを直した橋田に「さすがプロ、ありがとう」と感謝の言葉をかける。
橋田は嬉しくなり、ついつい新田への劣等感を口にするのだが、風間はそんな記事誰も読んでいない、と橋田を一蹴するのだった。

風間は作業を人から人へ中継し、仕事をしているように見せかけて実は働かずソリティアで遊んでばかりいる人物。
「働かないで出世する、それが一流の勝ち組じゃない?」
そうだな、真面目に働くってバカみたい。今回もすぐに感化される橋田。
そんな橋田を可愛がる風間だが、それには理由が。

風間は「押し紙」と呼ばれる販売部数の水増しによって部長まで昇りつめており、その証拠となるデータを橋田に消させようと企んでいた。
かつて志高い記者志望の新入社員だった風間。しかし異動は叶わず、気付けば30歳に。販売会社の社長に、新聞記事なんか誰も読んでいない、と言われ心の糸が切れてしまう。そして働かず出世するために押し紙に走ったのだった。
データの消去を橋田に迫る風間。その窮地を救ったのは、まさかの八木沼。
八木沼は橋田にお前は真面目に働けよ、と言うのだった。
「俺と違ってお前は、まだやり直せんだからよ」

そして力なく会社を出ようとする橋田が出会ったのは、取材に向かおうとする新田だった。誰も読まない記事を書く。その仕事に意味があるのだろうか。
「新田くん、本当にいいの?命削った記事が読まれてなくても」

新田はこう答える。

「読まれることだけが記事の価値なのかなぁ」
「僕らは本当に必要な記事を未来の社会に残していく、歴史の記録者なんだ」
「だから、これから形は変わっても記者という仕事の価値は決して変わらないと僕は信じてる」

4話で会社のためになることを考えるべきだ、と言った新田はもうそこにはいなかった。
それはもしかして、新田が書かなければいけない使命を見つけたからなのだろうか。
最終話の予告にそんな予感を抱く。

3人目のレンガ職人たる新田の答えに触れて、ダメな自分から逃げないと決意する橋田。
影響を受けやすいところが相変わらずといえば相変わらずだが、どうやらさらに波乱の最終話ではブレない橋田が見られそうで…。
平和な同期3人飲みの再度の開催を祈りつつ、クライマックスを待つ。

※「3人のレンガ職人」は、イソップ童話が出典とする説、経営学者ピーター・ドラッカー著『マネジメント』に出てくる「3人の石切り工」の話が元という説など諸説あるようです

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