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ドラマ8『弁護士ソドム』第4話レビュー:ソドムを滅ぼすのは「牧師」か「神」か

あらすじ:小田切渉(福士蒼汰)はついに、失踪していた父・宏(勝村政信)と再会する。だが宏は「私は誰なんだ!」と激高。なんと記憶喪失になっていた。病院関係者に経緯を知っている者はいない。入院費用の振り込み元も調べてみたが、架空の慈善団体で…。14年前に一体何があったのか?真相を探る中、裏口入学と引き換えに1千万円を騙し取ったと訴えられている、教育コンサルタント・井手口法子(石野真子)から弁護の依頼が舞い込む。

公式サイトより)

こんななずじゃなかった父との再会。愛情の欠落感は増すばかり

父・宏(勝村政信)と再会した渉(福士蒼汰)は、まるで高校生に戻ったみたいだった。頼りなくて、脆くて、無防備。「お父さん」と呼びかけながら声を震わせる渉には、ソドムと呼ばれた無慈悲さの欠片も感じられなかった。
事件の真相を知るであろう宏だが、記憶喪失となっており事件のことはおろか、渉のことも覚えていない。近付いたように見えた真実は渉の手からこぼれ落ち、彼が信じ、よすがとして来た両親の愛を確かめることさえ今はできない。そのことは渉から平静さを失わせる。
悪徳弁護士と呼ばれながらもグレーゾーンにとどまっていた渉(福士蒼汰)が、とうとう本当に危険な一歩を踏み出してしまった第4話。

渉から宏が見つかったと報告を受け、曽我(光石研)は驚く。しかし、入院費用が架空の慈善団体から振り込まれていると聞き「お前もそこまで調べたのか」という曽我の言葉はちょっと不自然だ。お前「も」と言うからには、曽我も同じように調べたということだろうか。何らかの事情を知っていそうな気がする曽我。渉は全てを明らかにしてから父親と話すために時間が欲しい、と曽我に頼む。

弁護も復讐もしっかりやるけれど、いつもとは何かが違う

渉は息子を医大に入学させる条件で1千万円を騙し取ったとして訴えられた教育コンサルタント・井手口法子(石野真子)の弁護を引き受ける。手慣れた詐欺師の弁護にも関わらず、渉の様子がいつもと違うことに戸惑うまどか(玄理)。会議からうわの空なだけでなく、法廷では原告の岩瀬幸作(長谷川朝晴)に対する質問の意図がわからないと指摘を受ける始末。
岩瀬から息子に対する思いや、事件に巻き込んだ申し訳なさの言葉を引き出して行く渉。何も語らぬ宏の代わりにでもするかのように、岩瀬に親としての愛情を問いただす渉の姿は、捨てられた子犬のように痛々しく映る。

原告の請求がつつがなく棄却され、安心する井手口。だがそれは渉が井手口を陥れるためのプロローグでしかなかった。実は井手口は元々誰からも訴えられておらず、岩瀬は天音(山下美月)と治(佐藤龍我)の差し金によって裁判を起こしたのだった。訴えられて焦った井手口に、渉が引き合わされる。
渉が井手口に近付いたのは、彼女を利用して宏が解雇される原因となった横領事件について調べるため。渉は井手口に紹介された企業専門詐欺師・横山(安井順平)に息子を立桜館大学に裏口入学させると持ちかけ、その見返りとして情報を得る。横山は牧師の依頼で横領事件をでっち上げ、宏に濡れ衣を着せたのだった。しかし牧師と横山の間には別の人間が入っており、その人物は事件後、不審な死を遂げたという。

結局息子の合格は叶わず、横山は渉に騙されたと悟る。さらに立桜館大で起きていた横領事件の罪を井手口に被せ、文字通り「目には目を、歯には歯を」で復讐を遂げる渉。横山から騙し取った金は全額岩瀬に振り込まれる。それは報われなかった親心への、せめてもの救いとなっただろうか。

宏に会ってからの渉は、真相を知るため捨て身で行動しているように見える。横領の犯人である立桜館大の職員・持田(永野宗典)を脅して書類の改ざんをさせるというのは、かなり危ない橋を渡る行為だ。
渉の悪事を暴こうとする孝介(古川雄輝)はその現場の写真を押さえ、週刊誌に売ってしまう。まどかはこのままでは渉が弁護士を続けられなくなるのではないか、と心配する。

孝介はソドムを滅ぼす「神」なのか

自分たちは同じ正義を貫こうとしていると孝介は言うけれど、孝介に自分の正義を押し付けられているような感覚を覚えるまどか。
思えば2人が恋人同士だった頃にも同じような違和感はあった。クライアントの都合で待ち合わせに遅れたまどかに、遠回しにせよ責めるような言葉をかけておきながら、自分が事件で呼び出されれば孝介はさっさと席を立つ。そういえばまどかと高級レストランで食事していた時も、孝介から先に料理を取っていたな……。自分を中心に考える孝介の尊大さは、すべて正義の貫き方に繋がっているように思える。彼は記事を書き、社会を動かすことによって渉に制裁を加えようとしているのだ。まるで自分が神であるかのように。
けれどまどかの正義は違う。目の前にいる、困っている人を助けたい。今のまどかにとって、その対象は渉になっている。孝介とはもう、同じ道は歩けない。
渉に手を下すのは「牧師」ではなく、社会の力を借りた神・孝介なのかもしれない。

宏が失踪時に手にしていたというUSBの行方とその中身。なぜ「牧師」は宏を匿うのか。渉と同じように、私たちも知りたいことだらけである。予告には、受話器から聞こえる「牧師」の声によく似た声を持つ竹中直人の名前も。いよいよ「牧師」の正体がわかりそうな第5話が待ち切れない。

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