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フィリピンで夫婦フルタイム共働きのために0歳息子のナニーを探した記録

フィリピンに来たらお手伝いさん(メイド)を簡単に雇ってベビーシッターもしてもらい、すぐフルで夫婦共働きできるぞ!と考えていました。しかし実際に探し始めて、息子を安心して任せられる人を見つけるには予想以上に時間がかかってしまいました。
メイド探しはコネの有無やタイミングでケースバイケース。各個人に知見が蓄積されてもあまりWEBで共有されていない気がします。しかし、私と同じ境遇で情報を知りたい人が意外といるかもしれないと知り、フィリピンのマニラにおいて全くツテがない状態から通い・フルタイムのナニー(子守専門メイド)を探した個人的な体験談を書こうと思いました。

概要

2018年7月に日本で出産後、夫が転職してフィリピンで働くことになったため、息子が当時生後5ヶ月の時に私と息子もフィリピンに移りました。元々仕事大好きな私は、日本の保活から逃れラッキー、フィリピンですぐにメイドを雇って、息子を預けて働くぞ!と安易に考えていました。

我が家がメイドを雇う目的:
・息子の世話をお願いし、夫と私がフルタイムで外働きする。
・家事も多少ヘルプしてもらって、生活の負担を軽くしたい。
・ついでに息子の教育もしてくれたらラッキー。

全体のプロセスは、要件定義→候補者探し→選考→条件交渉&契約→採用と、企業の人材採用と同じようにやりましたが、この場合は求職者が登録する大手転職サイト(リクナビ等)がないので、自分で色々な方法を試行錯誤し探す必要があるところが難しい点でした。順に見ていきます。

要件定義

雇う人に何を求めるか?をまず夫婦で話し合いながら決めました。
通い(stay-out/live-out)か住み込み(stay-in/live-in)か
最初に決めるべきことがこれです。共働き家庭は住み込みメイドを雇うケースが多いと聞きますが、狭い我が家ではいきなり他人との共同生活はプライバシーが担保できず落ち着かなさそう、という理由で「通い」を選びました。

通いのメリットデメリット(vs.住み込み)
◯メイドと適度な距離感が保てる
◯メイド専用部屋が必要ない
◯メイドの食事など生活のケアが必要ない
×多忙な朝夜にサポートが受けられない(これは大きなデメリット。住み込みだと朝夜家事はお願いし、自分たちは子どもと遊んだり仕事したりも可能)
×勤怠管理の手間がかる、欠勤遅刻のリスク
×住み込みに比べ給与水準は高め


想定と違った点は、「通い」で英語が話せるメイドさんは売り手市場ということ。マニラのメイド働き手は、地方出身で首都に住居がなく、渋滞が酷いため通勤に時間がかかるという事情もあり、食費や住居費を節約できる住み込みを望む人が多いようです。また、英語が話せる人材は、給与水準が高い国外(香港、マレーシア、シンガポール、中東など)に働きに出てしまう傾向があります。

職務内容(Job Description)
我が家の場合は「子どものお世話全て、プラスできる範囲の家事」と指定しました。細かく書くとこんな感じ:


最初は「メイド」(All-around maid、家事も子守もできる人)を指定して探していたのでこの記事でもこの単語を使ってきました。しかし候補者に会う中で子守ができる人と家事ができる人は全く違うと実感し、我が家は育児ができる人を雇うのが最優先、家事は適当でも最悪やらなくてもよい、と考え、途中から「ナニー(子守専門メイド、フィリピンではヤヤと呼ばれる)」と指定して探す方針に変えました。

労働日数、勤務時間 (Working days and hours)
勤務時間の設定は悩みました。夫と私が確実に外にいる時間より長めに設定して子どもの引き渡し、受け取りを行わなければいけません。
(別トピックですが、このオペレーションを遂行するために転職活動の際に徒歩で通える企業に絞って探しました(結果徒歩5分で通える企業に決定、夫のオフィスも徒歩5分圏内)。また、遅刻や欠勤に備えて在宅ワーク可能な体制を整えることも必要です。)

給与(Salary)
当初は月額8,000-12,000PHP(約16,800-25,200円)を想定していました。息子を預けるため多少高くてもいい人を雇いたいという方針だったので、最終的には14,000PHP(約29,400円)をオファーして採用しました。これは相場より高めだと思います。

求める条件(Qualifications)
我が家の場合:
・他人の子ども(0歳児含む)をケアした経験が数年以上あるか
・無理なく通勤可能な範囲に住んでいるか(急な残業に対応してもらうケースも想定)
・コミュニケーションに問題ない程度の英語力
・健康か(重要。メイドさんが病気になり欠勤や医療費負担のトラブルはよくあるため。健康診断を実施し、結果を確認してから本採用)
・人柄は、雇用主に媚びず、自分を大きく見せる傾向がない人がよい(これは選考ではイマイチわからない要素ですが。。)

その他社会保障、ボーナス、有給休暇などの条件(Compensations, Benefits, Holidays etc.)
これらや交通費、食費の支給の有無などは面接の際に候補者から聞かれるのであらかじめアイデアがあったほうがいいです。また法律に定められたベネフィットは提供する必要があります。フィリピンの場合は、SSS(社会保障制度)、Philhealth(医療保険)、Pag-IBIG(住宅ローン積立基金)の付与、13th month payと呼ばれるボーナスの支払い等があります。
参考:“Domestic Workers Act 

候補者探し

以下1-5の方法でひたすら探し続けました。
1.日本人やexpat経由の紹介:最も一般的かつ信頼できる方法かと思います。ツテは全くなかった自分は、Twitter経由でコンタクトさせてもらったり、偶々会う人に「ナニーさん探してます!」とアピールしていました。すると親切にも日本人LINEグループや日本人会の掲示板に貼り出される情報を回してくださりました(ありがとうございます!)。
結局私はこの方法で見つけられませんでした。難しいと感じたのは、①競争率が非常に高い(狙っている人が多いが、駐在員の後任に引き継がれたりするので公募案件が少ない)、②空きが出るタイミングが限られる(駐在員入れ替えの時期は比較的多い)、③共働きが少ないからか、私が会った人はパートタイム希望者が多かった、という事情があります。

2. Facebookのexpatグループ
こちらで実際に候補者を見つけたわけではないですが、他の人がどういう条件をオファーをしているか、市場感を把握するためによく見ていました。
Ma'am ManilaYaya/Nanny Job Corner in Manilaなどがあります。

3. メイド紹介エージェント
代表的なエージェントには全て問い合わせましたが、結局利用しませんでした。理由は、①通いの候補者の紹介が少なかったこと(そもそも住み込みのみ取り扱うエージェントが多い)、②契約期間が最短で6ヶ月、自分で柔軟に設定できないこと、です。迅速に候補者を紹介してくれるので、急ぎで住み込みメイドを探している人には使えるかもしれません。採用した人と合わなかったら1-2人は無料でリプレイスしてくれます。
料金はエージェントによりますが、私が聞いたところは、採用した場合のワンタイム成功報酬で10,000-14,000PHP(約21,000-29,400円)程度です。希望を伝えれば何人か紹介してくれ、インタビューを行う場合には一人当たり1,000PHP(約2,100円)程度請求されることもあります。

(ご参考)実際に問い合わせたエージェント:
MAIDPROVIDER.PH
MaidinthePhilippines
CHARMONDE CANE MANPOWER
MetroMaid.ph

4. メイドの元締め人からの紹介
メイド人材を取り仕切り、紹介業を行う個人のおばちゃんを日本人の方に教えてもらい、何人か紹介してもらいました。求める条件に合った候補者を数人同時にショッピングモールで面接しました。こちらは成功報酬を1,000PHP(約2,100円)程度払う仕組みでした。この紹介でいい人も何人かいましたが、採用には至りませんでした。

5. GreatAuPairというマッチングサイト
最終的にこちらのサイトで出会った人を採用しました。アメリカの組織が運営する、世界中のケアギバーとケアが必要な家族をマッチングするサイトです。
GreatAuPairでは、求職者のプロフィール閲覧は無料で行えますが、実際にやり取りするのは有料です。1ヶ月35USDのsubscription。迷いましたがこの時既に1-4の方法で行き詰まっていたため、1ヶ月分購入しました。
主に海外出稼ぎ希望するフィリピン人も多数登録しており、フィリピンでいい雇用者に巡り会えれば海外でなく国内で働きたいという人もいました。(例えば、子供を田舎で育てていて、偶に帰って様子を見たい人など)

選考方法

私は合計40人程度の候補者にメッセージでやりとりし、電話・面接を10人、実際のトライアルを4人やった上で、GreatAuPair経由で知り合った人を採用しました。選考方法は以下のような感じです。

1. 基本スペックの確認
名前、年齢、経験など基本情報(事前にCVやこれまでの雇用主からのRecommendation  letterを送ってもらえるとベター)

2.メッセージで最低限クリアすべき条件の確認
3点聞きました。①通いで大丈夫か(プロフィールに通いOKと書いてても、実は住み込み希望でした、が多かったので絶対確認)、②住んでいる場所、③給与の希望(salary expectation)

3. 電話面談、面接
まずは電話で話して、これまでの経験や希望、フィーリングが合うか等でスクリーニングした上、良さそうな人は会って面接を行いました。
面接の際に気をつけたポイントは、不採用の場合も恨みを買わないよう円満に終わらせること。①面接の場所は家ではなくマンションのロビー等で行う、部屋番号は言わない(家の中を知られ盗みに入られるリスク)、②面接の交通費はリファンド(実際に来てもらい時間をとってもらったので大目に払うことも多い)です。

4. トライアル
面接で合いそうな人には実際に1日家で働いてもらいました。
もっとも重視したのは、セキュリティカメラで不在時の仕事ぶりをチェックすること。働いてもらっている間、1時間くらいあえて私が部屋の外に出て、カメラ越しにチェックしました。特にチェックしたのは、家事より子どもの世話を優先してやるかです。口頭で育児優先と伝えても、候補者は終わりのない育児とは違い、家事をした方が成果が見えて評価されやすいので、子どもから目を離して家事をしがちになります。しかし目を離した一瞬の隙に子どもが怪我なんて事態は容易に起こりえます。
ちなみにカメラは特に隠していません。Expat家庭や富裕層だと普通に設置するので、慣れているメイドさんも多いと思います。
その他、子どもが泣き止まなくても諦めないか、モチベーションが下がらないか、も重視しました。

セキュリティカメラは重要です。当たり前ですが、雇用主の前では皆んな頑張ります。私は、カメラ買った方がいいよ!と助言を受けておきながらいまいち必要性がわかっておらず、トライアルを始めた後に「自分がいない時の様子を見ないと意味がない」と実感して急いで購入しましたが、採用活動を始める前に導入しておいたらよかったなと思います。今はベビーモニターとしても大活躍しています。
私は知人に教わった、こちらのシャオミMi Home Security Camera 360を使用。東南アジアの大手ECサイトLazadaで1,900PHP(3,990円)で購入しました(本記事執筆時点でAmazonでは見つけられず)。意外と安い。我が家はベッドルーム、リビングルーム、キッチンに3台設置。

スマホからカメラで様子を見た画面のスクリーンショット

家で電源とWifiに繋がって入れば、スマホのアプリで外出先どこでもチェックできます。アプリからカメラの角度を操作でき、一台で広範囲カバーできます。(電源を抜かれたらアウトなので、犯罪防止には対応できないかも)

4人トライアルした後、ようやく採用したい人に巡り合えました。
その人は、欧米、インド人家庭でナニー・メイドとして働き、海外出稼ぎ経験もある42歳の女性。育児経験豊富ですが、欧米とは違う日本式育児も尊重してくれます。また、媚びらず思ったことは意見してくれるところがよいと感じています(私が息子に冷たい水をあげようとしたら、怒られました)。赤ちゃんをあやす能力はとても高く、衛生意識はアフリカで働いていた私より強いくらいです。彼女から私も赤ちゃんへの接し方を日々学ばせてもらっています。

条件交渉&契約

面接でお互いのニーズは確認していたので、条件交渉は割とすんなり行きました。一般的に良い人は他にいくつもオファーを受けて慎重に条件を検討しているので、本当に来て欲しい人にはある程度魅力的な条件をオファーする必要があります。我が家が採用したナニーさんも、他にもオファーを受けていたと後で聞きました。

契約書の作成は、私の場合前職で英文雇用契約書にも触れたことがあり、ある程度書き方がわかったため、フィリピンの法律を調べて類似契約書をチェックしつつ自分で行いましたが、万が一訴訟になった時に備え、弁護士レビューを入れた方が安心かと思います。契約書には、試用期間、給与の支払い時期、解雇の条件なども細かく規定しました。
また、職務内容(Job Descriptions)と我が家の仕事ルールも作成し、添付してサインしてもらいました。子どものお世話に関するルール(ex.勝手にお菓子を与えない)から、遅刻の際の事前連絡義務、給与前借りのルールについて書いています。

Do not give him any drink, sweet and snack if not instructed. Do not buy him anything. 
子どもに勝手にジュースやお菓子を与えない、買わない。
In case you need loan, the amount shall be deducted from 13th month pay.
お金を借りたい場合は、ボーナスから控除する。

最後に、各種身分証明書の確認、健康診断(Pre-Employment Medical Examination)に行ってもらい、問題ないことを確認してから、本契約書にサインしました。

探し始めてから契約に至るまで2ヶ月かかりました。ここからナニーさんのトレーニング(寝かしつけ耐久戦や生活スケジュールの管理、家のルールの徹底)が始まり、自分が日中息子を任せて外に出られるようになるまでは更に時間がかかるのですが、本記事は長くなったので終了します。

探してみての感想、今後の課題

マッチするナニーさんにめぐり合うのは予想以上に難しい。タイミングも重要。長期戦を覚悟する必要があると実感しました。私の場合はコネはなかったものの、かなり早く見つかった方だとよく言われます。
また、日本の保育士さんのようなプロとは異なり、育児に対する考え方、生活習慣、収入レベル等バックグラウンドが全く違う人に大事な子どもを預けるのは、いざやるとなると非常に不安でした。日本の育児は厳しすぎるかもしれませんが、子どもが泣いたら必ずミルクやバナナあげたり、衛生意識が低い人もいたりします。トライアル中「泣きやまないからミルクあげたほうがいいんじゃないか」「いや、30分前にあげたやん!お腹がすいてるわけじゃない」というやりとりを何度したことか。
日本の育児のやり方や考え方(例えば離乳食、ミルクの調乳方法)は、世界的にも特殊だとナニーさんのトライアルを始めてから知りました。雇ったナニーさんは欧米系のやり方に詳しかったので、私も欧米の育児情報サイトを一通り勉強。結果特に日本式に拘る必要はなく、自分がいいと思った方法でナニーさんと相談しつつやっていこうと思っています。

それでも、今のナニーさんがいて本当によかったと感謝しない日はありません。例えば、
・自分の時間ができる:それまでPC作業に集中できず、現地での転職活動はほぼ進まなかった。そして自分の好きなタイミングでトイレに行ける(!)。
・精神的、肉体的負担激減:余裕ができた結果、息子にもより丁寧にハッピーに接することができるようになった。
・共同育児パートナーができた:息子の成長を共に実感し喜びが倍増。育児に関する意思決定を一緒に行える人が増えて心強い。むしろ育児を教えてもらえる。
・息子にとってもメリットが多い:生活リズムが整い機嫌がよい、常に構ってもらえてとても嬉しい。今じゃ息子はすっかりナニーさん大好きっ子です(パパママっ子時代は一瞬であった)。

今後の課題
まだ私がフルで働き始めておらず、目的(夫婦フルタイム共働き)が達成されたか?は検証できていない状態です。実際働いてから暫くしてどうだったかもレポートしたいです。
現状認識している課題は、
・現在も食事の支度、離乳食で朝晩はどうしてもバタバタしているので、働き始めたら現状のままでは回らない可能性。
・通いナニーさん一人の場合、欠勤、バックレされると、息子の面倒見る人がいなくなる。
→解決策として、通いナニーさんを一人増やす、または住み込みにする、などの選択肢も検討しなければいけないかもしれません。

これから昇給のタイミングやインセンティブを考えたり、幼児食作り等の仕事を増やしていくので、更に雇用主側のマネジメントスキルが問われてきますが、日々工夫しつつ改善していきます。
以上、もしどなたかのお役に立てたらとても嬉しいです。お読みいただきありがとうございました!

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