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煙に覆われるパリから何が見えるのか


 黄色ベストを着用して抗議するデモ参加者の写真をこの一週間で何度も何度も目にした。フランスは今、燃料税引き上げに対する抗議に端を発し「黄色ベスト」運動が続いている。抗議デモに伴い、破壊や略奪が多発している状況下、煙に覆われたパリからは何が見えるのか。


 とあるネトウヨ界隈から人気の高いTwitterアカウントが「民主主義が反映される選挙制度がある国で、このような暴力的なデモは認められるはずがない」と述べていた。「左翼たちが見習うべきだと称えるが、自分が破壊略奪の被害にあえばそうは言えないだろう」と。


 パリ市は、バス停などの街路設備の損壊だけで被害総額が約4億円~約5億円に上ると発表した。落書きだらけの凱旋門近くには焼け焦げた車が放置され、マリアンヌ像の一部は破壊された。パリでは12月3日の時点で412人、全国では700人近くの市民が拘束されている。


 「黄色いベスト」運動の要求は燃料税の引き上げの中止だけではない、富裕税の復活、最低賃金の引き上げも求めている。富裕税は、マクロン大統領が企業財界に寄り添った選挙運動の柱の一つとしたものであり、マクロン政権発足当時に税制改革にて廃止をしたのである。一方で年金生活者などへの税金を引き上げたため、不満が徐々に膨れ上がっていき、燃料税引き上げによりとうとう爆発したのである。

 

 マクロン大統領は来年1月に予定していた燃料税の引き上げ半年延期を発表。しかし抗議の声は止まらずに、燃料税引き上げを完全に撤廃する可能性があると示唆した。強引に推し進めてきたマクロン政権、初の後退とも言われるほどである。だが依然として抗議行動が終息する兆しは見えない。

 暴動と言えば今年のハローウィーンパーティー、渋谷で若者たちが羽目を外しすぎて軽トラとひっくり返したり、警察官を煽ったり、とする動画がTwitterで流れてきたのを思い出した。どうやら首謀者とされる者は捕まったようだが、あれはあくまで酒と雰囲気と享楽主義に呑まれたがためであろう。国に不満を申すでもなく、楽しさに浮かれてに過ぎない。だが軽トラをひっくり返すような行動でさえ、昨今の日本では抗議デモでは起きてはいない。

 先ほど述べたネトウヨ界隈から人気の高いアカウントの発言には、私は首を傾げてしまう面も持っている。選挙というのは決められた期間しかなく、刻々と変化する情勢、政府の動き、明るみになった不祥事など、任せられないと思えば声に出して、行動で示していかなければならない。民主主義とは選挙のみを持ってもたらされるものではなく、市民の投票、市民の監視、市民の声により築き上げるものだと考えている。

 ではパリの様に過激な、暴動ともいえる抗議デモは受け入れられるのかというと悩みどころだ。「破壊や略奪の被害にあえばそうは言えないだろう」という自分を被害者に置き換えて考えた結論ではなく、自分がデモの一員となり誰かに被害を与えることへの恐怖と申し訳なさである。おそらく「他人に迷惑をかけるな」と習う日本ではこちらが大半であろう。要するに彼の考えは的外れと言うわけだ。

 あそこまでの過激な抗議デモを民主主義だといえるのだろうか。パリでの「黄色いベスト」運動によるデモ抗議をどのように自分の中で咀嚼をするのか悩んでいたところ、「2日に実施のされた世論調査では国民の72%がデモを支持した」との情報が舞い込んできた。それが更に私の頭を悩ませる。これが正しい数値であり、72%ものフランス国民がデモ抗議を支持したのならば、数値上は民主主義であるともいえる。一つ言い換えれば数の暴力とも言えてしまうのは置いておくとして、もしこれが日本で起きていたのならば、何%の国民が支持をするのであろうか。大規模な抗議デモであるため、おそらく72%の中には被害にあった者たちも含まれているだろう。BBCNewsにてシャンゼリゼ通りで店で働く者が抗議デモについて「支持をする」としょうがないといった顔ぶりで答えていたのも印象的であった。

 『72%支持される暴動とは』『民主主義とは』。今まで日本国民は権力から何を勝ち取ってきたのだろうか。民主主義でさえ勝ち取って得たものではない。敗戦後アメリカから与えられたものである(ネトウヨ界隈では「五箇条の御誓文」は民主主義の理念やら言っているらしいが、一般的に考えても、学術的に考えてもありえない)。日本史に疎いからであろうか、色々と考えたが「勝ち得たもの」に思い当たる節はない。

 たびたび選挙はあるのだが、投票率を見てみればわかる通り白紙委任状ばかりである。「お上様は勝手にやってくれ、私はそれに従います」という平民意識の現れだろうか。どうにも我々は国家という気性の荒い馬に跨ってはいるものの、安全だと過信し、手綱から手を離しているようにしか見えない。

 もしかすれば長い歴史の間、日本人は政府や権力に対して抑圧状態なのかもしれない。もしそうだとするならば、長く続くパワーレス状態の国民が自らの主権を、国家は国民に奉仕をするものだと手綱を手に取る日が来るだろうか。煙に覆われたパリから見えるものが、煙一つない日本から見えていないのではないだろうか。



前回のかとさよnote
野党(一部を除く)により暴かれた都合の悪い技能実習生の労働実態
https://note.mu/ksty/n/n2c50ffba3d73

前々回のかとさよnote
供給維持か供給破綻か、水道法改正案により民営化がもたらすもの
https://note.mu/ksty/n/n6ba59e2405f8 


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