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れいわ新選組の奇策「比例特定枠」の意義と可視化された日本の現状、候補者への罵詈雑言

 参議院選挙公示日の前日、登壇している山本太郎代表の発表に会場に詰め掛けたれいわ新選組の支持者は度肝を抜かれた。いや、支持者だけではない。れいわ新選組の会見をツイキャス、ニコ動で見ていた視聴者全員も、私を含めてみなが耳を疑ったことだろう。

 今年の参議院選挙から比例特定枠の制度が導入される。比例区は政党内で個人名の得票率が多かった順に当選するが、比例特定枠に指名された候補者はさらに上位となる。政党内での個人名の得票率が1番高かった候補者よりも上位に位置するということだ。その制度をれいわ新選組が活用することを表明したのだ。

 私の記憶が正しければ、この制度が出来る時に山本代表は反対していたはずである。使えるものは使ってしまえという意気込みも、小気味がいいもので、ここまでならまだ想定の範疇であった。否定していた側が活用することで対立命題となり国民が比例特定枠の制度を改めて考える一助となる。しかしながら、れいわ新選組の動きは私の予想を軽く超えていった。れいわ新選組の山本代表は特定枠1位をふなごやすひこ氏に、特定枠2を木村英子氏に充てることを発表したのだ。

  


 ふなごやすひこ(61)

木村英子(54)

 ふなごやすひこ氏は筋肉が萎縮する難病、ALS当事者であり、木村英子氏は生後まもなく脊髄損傷をして重度障害を負ってしまった当事者である。前の週から行われてきたれいわ新選組の候補者の発表に引き続き、驚かされてばかりであった。


 山本代表がれいわ新選組を立ち上げて、山本代表を今まで見てきた私は当然の流れとしてれいわ新選組を応援していた。しかし選挙が近づくにつれ街頭インタビューでの過激なアピールや問責決議案の棄権など不信感を抱くようになる。

  さも、他の野党は法案に対し口では反対していながらも、テーブルの下では与党と握手をしているかのように捉えることのできる物言いも増えていった。立憲民主党や日本共産党、国民民主党、社民党、自由党の議員たちがTPP、入管法改定、水道法改正など、与党が無理やり推し進める法案に対して必死に抵抗していたのは私でさえ知っている。

  選挙も近づき他の野党との差別化を図り、支持層を拡大させるという山本代表の意図はわかる。しかし、「他の野党とは違う。私たちはゆ党だ」と是々非々を唱えつつも、前々国会でも98%という高い法案賛成率を記録して、実質的に自民党の補完勢力となっている日本維新の会の台頭をこの目にしてきたこともあるので警戒してしまう。

   数学の世界に新たな風を巻き起こしたミキオ算の下地ミキオ議員、比例枠返上をしなかった二枚舌の足立やすし議員や、北方領土でおっぱいと叫ぶ性欲の権化丸山穂高議員をみれば、日本維新の会アレルギーになっても仕方ない。

  また、ここ2、3日で日本維新の会の議員たちによる宛名が自分、発行元も自分という領収書が多数あることが暴かれた。日本維新の会が望んでいるのは「身を切る改革」ではなく「自分で自分の領収書を切る改革」なのであろう。

  このような不祥事だらけの日本維新の会という前例があるため、「他の野党とは違う、私は本気だ!」と似通ったアピールをしている山本代表、れいわ新選組に対する不信感は募るばかり。れいわ新選組の支持をやめて、今回の参議院選挙では立憲民主党か日本共産党のどちらを応援すべきか頭を悩ませていた。

 ちょうど先週、ツイキャスの通知が入る。タイトルは山本代表による新たな候補者発表であった。招き入れる山本代表の声と同時に画面の手前から電動車いすに乗った女性が現れた時、してやられたと顔をしかめた。

 投票先を選ぶとき、何を第一に考えるだろうか。消費税増税凍結であったり、社会保障についてであったり、経済政策であったり、北方領土問題など、人それぞれであり、どうか解決してくれと思いを託し一票を投じるだろう。私の場合、画面に映った女性、木村英子氏をみて「投票せざるを得ない」状況に陥ってしまった。正義感とか使命感ではない。社会生活において様々な障壁があり社会的弱者として位置づけるマイノリティ、その当事者が立候補すると声を上げたのである。仕事として彼ら/彼女らと接することの多かった私にとって、数ある社会問題の中でも彼ら/彼女らが生きやすい世界という理想はプライオリティが最も高かった。

 正直な感想を語れば掌で踊らされるようで、山本代表に対して不愉快ではあった。しかし、私がさらに木村英子氏を支持する決意を固くしたのは、生放送中の視聴者のコメントである。

 いつから日本は人権後進国に成ったのか。肥溜めのようなコメントであった。中にはネトウヨもいるのだろうが、れいわ新選組支持の方も木村英子氏へ懐疑的な目を向けているのが、このコメントは何とも今の日本の如実に表していた。

 障害をお持ちの方々とそのご家族、医療業界で働く方々、福祉・介護業界で働く方々、いや、日本に住む人すべてに問いたい。木村英子氏に投げかけられた言葉は許されるものなのか。Youtubeで流れていた前時代的なコメントは、障害をお持ちの当事者を置き去りにした私たちの怠慢が招いたものではないだろうか。

 「施設にいた方が幸せだ」
 「自分が社会に生かされているという自覚がないのが腹立たしい」
 「寄付金がドブに捨てられまくって笑えるwww」
 「国会をバリアフリーにしてほしいだけ?」
 「どんだけ日本は恵まれていると思っているwww障害者年金出るんだろwww」
 「まったく動けないという点がね」

 木村英子氏は山本代表に頼まれたとしているが「自分の意志」でこの会見の場に立っている。おそらくこの程度の罵詈雑言を浴びせられることなどご自身は覚悟の上であろう。しかしながらもう一度問いたい。この木村英子氏へ放たれた言葉は許されていいものなのだろうか。


 この子らを世の光に。50年前に糸賀一雄が遺した言葉は金だけつぎ込めば辿り着ける道ではない。障害をお持ちの方が、社会になんの障壁もなくやりたいことができる、自己決定権、幸福追求権が脅かされないそんな社会を望むことに、障害を持っていない方にとってどのような不都合があるというのだろうか。今回の参議院選挙は山本太郎という異端児によって、医療業界で働く方々、福祉・介護業界で働く方々の人権意識が試されているのだろうと、私は考えている。

 もし木村英子氏が当選し、国会議員としての仕事をこなす際に障壁があるのならば、それは取り除けなければいけない壁である。体力が持たないのならば、長時間の議会運営を変えればいいだけだ。指が思うように動けずメモも取れないのなら相手が質疑応答で配慮すればよいだけである。議場に階段があればスロープをつければいい。国会議員が国民の代表ならば障害をお持ちの方も含まれよう。今まで「それ」すらなかったことこそが問題なのだ。

 私が山本代表に感じた不愉快さの大半は、障害をお持ちの方がどのような境遇であるのかを知っていながらも、政治の世界に彼ら/彼女らがいないことに意識をせずに、すんなり受け止めていた自分への恥もあったのだろう。

※長くなったので、数回に分ける

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