LOVE

4
ノート

LOVE(4)

菜々子から突然連絡があったのは、10月の終わりだった。
僕は、すっかり菜々子からの電話は諦めていて、卒論に身を入れて取り組んでいた。
ふと、時計を見ると夜中の12時を回っていて、僕は休憩がてらキッチンへ夜食を探しに行こうとしたところに、スマホから着信音が流れた。
非通知、と表示されていて、僕は高鳴る胸を押さえながら電話に出た。
聞こえてきた声は、消え入りそうなほど弱々しく、鼻水をすする音がした。

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LOVE(3)

非通知の番号から電話がかかってきたのは、その夜だった。
僕は5日後に控えた面接に備えて、座椅子に深く腰掛けて準備をしている最中だった。
いままでなら絶対に取らなかったが、きのう友達が、たまに企業から非通知でかかってくることがある、と聞いていたため、僕は電話に出た。
3日前に筆記試験を受けた会社だと思って、急いで体を起こした。緊張した気持ちで、努めてかしこまった声で言った。いま思えば、お盆期間中に企

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LOVE(2)

菜々子と再会して、1週間が過ぎた。
僕は、あの時の興奮がようやく治ってきていた。こんなに自分が動揺するとは思わず、驚いた。
菜々子とは、何もなかった。それは本当だ。
ただ、僕が一方的に憧れていた。だから、美穂に対しては少し後ろめたかった。
菜々子は、クラスの男子の高嶺の花だった。目鼻立ちがしっかりしていて、美人な上にスタイルもいい菜々子にだれもが目を奪われ、あわよくば彼女にしたい、と狙っていた。

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LOVE (1)

再会は、突然だった。
8月6日。甲子園が開幕したと朝からテレビで報道していた。
ひどく蒸し暑い午後だった。予想最高気温は三十八度だった。もっと暑いんじゃないかと、根拠もなく思った。
僕は彼女と池袋の水族館へ向かっていた。彼女の美穂とつないでいる右手が汗ばんでいる。
本当は、こんな暑い日に手なんかつなぎたくない。振りほどきたい気持ちを必死に抑える。
美穂は、依存するのが好きだった。そして、いつだって

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