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宅配おもちゃ病院のこと

「くすぐりエルモ」というとてもよく出来たおもちゃがある。
ボタンを押すと、エルモが「アッハッハ」と笑いながら、転げ回る。途中手や足をバタバタさせながら、時折えずくように笑い転げるのは、大人が見ていても楽しくなる。この「くすぐりエルモ」は実は、私のために買ったおもちゃだ。

購入して15年くらいになる。
初めはボタンを押してよく笑ってもらっていたのだが、そのうちだんだん置き物に近い存在になっていた。だけどずっと部屋の目立つところに置いていて、いつもエルモは口を開けてこっちを見ていた。

今2歳の双子の孫は、物心つく前からエルモを見ている。
初めは笑い声に驚いたりしたけれど、今はすっかりお気に入りのおもちゃだ。
けれどエルモは私の管理不足で、買った時みたいな動きをしなくなってしまった。手を上下に動かして、笑うだけ。そのうち声もでなくなってしまった。

動かなくなったエルモを、双子たちは寂しそうに触っていた。

「本当はね、手足をバタバタして転げ回って笑ってね、
最後はまた立ち上がるんだよ」

そんな話をしているうちに、そんなエルモを見せてやりたくなった。

初めは、「くすぐりエルモ 修理」で検索した。
できるなら、自分で治してみようと思って。

意外にもエルモが動かないというページは何点か見つかって、その修理方法も出てきて、おお、とじっくり頑張って読んでみたけれど、とてもとても対応できる範囲を超えていた。文系の私には無理。お手上げ。

次におもちゃ病院を検索。
県内に2ヶ所出てきたけれど、日程も合わないし、場所も遠い。

すると、エルモの修理の検索で、宅配のおもちゃ病院が出てきたのだ!

http://www.takishita.jp/toy_hospital/

おお、ここにおもちゃを送ったらいいのか!!!

その時はおもちゃの修理が立て込んでいて、受付をストップされていた。実際ホームページを見つけて、エルモを発送するまで2ヶ月待った。

遠いおもち病院にエルモを届けたのは3月の初めだった。

青森で宅配おもちゃ病院を運営されている方は、おもちゃ病院協会 会員No.777の瀧下さんとおっしゃる方だ。ボランティアで活動されている。受け取られるのは、実費のみ。(もちろん寄付は大丈夫。)

エルモを送ると、「届きました」というメールと共に、なんと現状の動作をビデオで撮ってYouTubeに上げてくださった。そしてその原因と、それを解決するための方法がとても丁寧に説明されていた。

とてもとてもびっくりした。今まで修理に出してこんなに丁寧に状況を説明してもらったことは一度もない。高い修理代を出しても、だ。

その後も何度か修理のための動作確認の連絡が届いた。

あまりにすごすぎて唸ってしまった。それは同じ「おもちゃ」に関わるものとして、感動と共に、見習うべきことがたくさん詰まっていた。

双子たちは「エルモは治った?」と聞くたびに、この動画を見せた。
「こんなこともできるようになったの?」と目を輝かして、嬉しそうに何度も何度も見ていた。

故障していたスピーカーが海外発注だったので、スピーカー待ちが1ヶ月。
4月の初めに、元気になったエルモが我が家に戻ってきた。

再会の瞬間を宅配のお医者さんに見せてあげたいと持って、ビデオに撮った。
また2歳児なもので、最後起き上がるまでの動きが待てず、ついつい触ったり抱きしめちゃったりするんだけど、嬉しくてしょうがない気持ちは伝わるかな。

今回、大事なおもちゃが元気になって帰ってきた、ということもとてもありがたいことだったけれど、この子たちが、おもちゃが壊れたとき、おもちゃ病院に入院して、それを遠くから治っていく状態をビデオで見て、戻ってくる日を楽しみに待つ、という貴重な体験ができたのとても大切なことだったと思う。

おもちゃが壊れたら、買い替える前に、是非、おもちゃの先生に診てもらってほしい。
子どもにとっても大人にとっても、いろんなことを教えてくれる素敵な病院です。



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