【書評】ベネフィット・セグメンテーション―成熟市場のマーケティング技術(1974年)

かなり古い書籍なのですが、内容は今日にも生きるものでしたのでご紹介です。この時代から市場は飽和していると言われていたのですねぇ。

背景

マーケティングの本質は潜在的な需要の喚起あるいは創造にある。マーケティングの一部である、顕在的な需要に対しての対応をマーケティングと捉えたことに日本企業の甘さがあり、今日の混乱と無策につながっているのではないか。消費者志向のマーケティングが行われているというが、それはまだ企業・技術・販売者側の都合がいい消費者解釈でしかない。

本当に消費者に即し、生活に即し、商品に即して、マーケティング戦略を再点検する必要がある。

「マーケティングの手詰まり」感

各製品がプロダクトライフサイクルの成熟期に差し掛かり、寡占化が進んで価格競争の無意味化した。消費者の興味・関心を喚起できるような新商品が出にくくなった時代。

企業としては、消費者の求めるベネフィットをよりよく満たす新商品開発のためのマーケティング努力を強化しないといけない。

→ベネフィットとは

一口にいうと「効用」。価値、欲求、態度、意識といったものを総称したもの。消費者にとっての「良いこと」。行動を引き起こす要因。

→消費者ベネフィットの変化パターン

商品本来の一次的価値すなわち「機能的価値」。それが満たされて飽和した段階において、「感覚的価値」に進む。さらに満たされていくと、より高次元の二次的価値としての「意味的価値」。

意味的価値でいうと、本書ではインスタントコーヒーが例に出されています。

「多くの商品(例えばインスタントコーヒー)は消費者にとってある意味をもっている。この意味は商品の物理的特性から与えられるものを超越したものである。そして、このような商品のもつ意味(かくされた価値――この場合はネガティブな価値)が消費者の購入行動に大きな影響を与えるのである。……」P16

2つの商品購入リストがあり、それをイメージ調査でアンケートを取った結果、インスタントコーヒーが入っているリストは、無精、金遣いが荒い、悪妻のイメージを抱かれるようです。

一般に後発ブランドは、先発ブランドよりもよく消費者ベネフィットを満たせないと勝てない、と言われています。

消費者ベネフィットでの差異の付け方としては、①実質的、機能的差異 ②感覚的な差異 ③イメージ・レベルの差異 ④広告による差異 の4つです。

セグメンテーションの目的と利点

セグメンテーションの目的としては、「購入者間の差異を決定すること」。大きく下記の二つに分かれる。

①予算の配分の指針となるように、セグメントごとの反応の差異についての知識を利用できる ②どこに機会があるかを的確に抽出して比較することができる

利点としては、セグメントに対して適切な対応戦略をとることができる。どこかに集中的に予算を投下するのか、それぞれ異なったコミュニケーションをとるのかなど。

伝統的なセグメンテーション変数として代表的なもの

①人口統計的変数によるセグメンテーション 年齢、性別、所得、職業、学歴、家族数、家族の年齢構成、地域など、いわゆるデモグラフィック特性。

②社会的統計的変数によるセグメンテーション 社会階層、パーソナリティ、準拠集団、ライフスタイルなどいわゆるサイコグラフィック特性。

③使用パターンにおけるセグメンテーション 使用のパターン、使用から得た価値、美的選好、購入態度、モチベーションなど。

→以上三つは、潜在総需要量を推定する力はあるが、ブランドの成功可能性を推定することはできない欠点がある。

ベネフィット・セグメンテーション

上記の伝統的なセグメンテーションでは、その製品分野の未開拓部分を顕在化させることには向いていない。そのために新しく出てきたのが、消費者行動の原因であるベネフィットでセグメンテーションを行う考え方です。

消費者ベネフィットそのものでセグメンテーションすることで、消費者が求めるものそのものでセグメンテーションができます。

すなわち、「既存ブランドに比べてよりよいベネフィットを提示する」ことに役立つのです。このセグメンテーションを採用することで、今までは把握することができなかったブランド間競合分析に新しい切り口を提示することができます。

以上です。

あとは肝心な具体的な方法(専門的なので、ここでは避けます笑)と、各カテゴリーにおける例が多く載っています。絶版ですが、気になる内容であれば、ぜひ探してみてください。



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