スライド10

フェミニストはもっと儲からなければならない

最近、「フェミニストは儲かる」というテーマがTwitterで話題なようです。

事の発端は、「プロ奢ラレヤー」氏という一部のTwitter界隈では有名らしい方による発言のようで、それが発展して「プロ奢ラレヤーvsフェミニスト」というトークイベントも、6/10(月)「LOFT9 Shibuya」にて開催される予定だったようです。

vsというタイトルからして「それはちょっとヤバイだろ」と思ったのですが、実際にこのイベント、発表後から荒れに荒れたようです。経緯について事実を全て把握しているわけではないので、内容が知りたい方は出演する予定だった方々の発信をご覧頂きたいのですが、当初私のところにはオファーが無かったものの、6/8(土) 23:15 に急遽出演オファーが入りました。

既に決まっていた出演者からのご用命とのことで、「それは実に光栄なことだ」と思い、早速既に入っていた予定を別日に移動するとの旨を先方に返信し、イベント当日午前中の美容室を予約したのです。ところが…ナント、その2時間半後の6/9(日)1:46に、「追加登壇者はなしの方向で変更」との連絡が入ったのです…

頂いたオファーが消滅するのは実は以前にも経験したことがあったのですが、僅か2時間半という短期間に消滅するのはさすがに初めてで、とても驚いてしまいました。逆に、特にまだ準備をしていない段階であったために、損失が美容室代だけで済んだので、良かったのかもしれませんが…

ちなみにその後、イベント自体が開催中止になってしまったようです。というわけで、本来イベントでお話しようかなと思っていたことを軽くここに記しておこうと思います。

 ◆フェミニズムはかなり儲かりにくい市場

さて、冒頭の「フェミニストは儲かる」という話ですが、研究職ではない限り、残念ながら誰もまともに稼げていないと思います。

「フェミニスト」は本来「性差別を解消し、ジェンダー平等を望む人」というのが正しい定義なので、きっと「フェミニズム活動家orフェミニズムのオピニオンリーダーは儲かる」という話が言いたかったのでしょうが、どちらにせよ誤りです。

フェミニズムを扱った専用のwebメディアも、チャレンジする人はいるものの、確固たる地位を確立するほどまだ育ってはいませんし、個人がブログを書いてもさほどPVは稼げません。

「単に彼女等彼等の努力不足なだけでは?」と思うかもしれないですが、違います。以前、webメディアを運営している編集者から聞いたのですが、タイトルに「フェミニズム」という言葉を使えば、それだけでPV数は減るとおっしゃっていました。努力云々の話ではないのです。

Twitterではフェミニズム関連の話題は度々トレンド入りすることもあり、確かに「炎上」や「バズり」は起こりやすいのですが、流動性が非常に強い傾向にあり、「人」に対して読者がつきにくく、固定の「読者層」としてはボリュームが無い界隈です。

そのため、メディアに出ているオピニオンリーダーでも、上野千鶴子氏のような別格の第一人者を除いて、Twitterフォロワー数は数万人台(2019年現在)が最高であり、これは他の界隈に比べてかなり少ないほうだと思います。

また、たとえば「Nikkei Woman Expo」のような女性向けのイベントでも、フェミニズムを扱うトークショーは全く開催されませんし、当然TVで取り上げられることはほとんどありません。

新聞は最近増えてきたものの、女性誌にも扱われる機会はほぼありません。つまり、フェミニストのオピニオンリーダーが出世しようにも、その先に「席」が無いのです。

それゆえ、「ネット上で有名になる→書籍を出版する→大きなメディアで連載を獲得する」のような、他の界隈では当たり前のキャリアコースを辿ったオピニオンリーダーも、ほとんどいないのが現状です。

このように、ビジネスだけの視点で言えば、フェミニズム関連はかなり「儲かりにくい市場」と言えるでしょう。

 ◆反フェミニズムのほうが圧倒的に儲かる現実

市場が形成されない背景には、構造上の大きな問題があります。フェミニズムの取り組みは、あくまでマイナスをゼロにするものであり、基本的にプラスの何かを生み出す活動ではありません。

また、公共性が高いために本来は社会全体や政治が解決するべき問題であると捉えられているために、「個人がお金を出す」ということにあまり馴染みがありません。

一方で、反フェミニズム的な言説は「フェミニズムが嫌い」「(人として対等な権利を有する)女性が嫌い」という人々の歪んだ感情を代弁するものであるため、彼らは喜んでフェミニストを叩き、反フェミニズム的な言説をばら撒くオピニオンリーダーにお金を出します。

固定の読者(≒信者)になり、イベントにも通って応援し、noteのような有料媒体も積極的に購入します。そうやって人気が出るからメディアにも起用されるし、書籍の話も舞い込みやすい。そして、オピニオンリーダー同士も団結してヨイショし合うのです。

一方、反フェミニズム的な言説をしっかりと叩いたところで、フェミニズムを支持する人々からお金が入るわけではありません。仮に「フェミニストVSセクシスト(性差別主義者)」みたいなイベントが開催され、論破出来るだけのフェミニズム論客が登壇しても、そもそもセクシストの人を見たくない人が多いため、お客さんが来るわけではありません。

フェミニストを叩いて信者を喜ばせてお金をもらっている人間と、支援もほとんど無くただ善意のみで戦っている人間の戦いでは、後者が不利なのは明白です。

このようにして、フェミニズムVS反フェミニズムでは、構造上フェミニズムは圧倒的に不利で、「悪貨が良貨を駆逐する」ように、インターネット上や多数派メディアでは、ますますアンチフェミニズム的な言説が席巻していっているのが現状でしょう。

◆フェミニズム活動家こそ儲かる仕事になるべきだ

ですが、当然このままでは良いわけがありません。フェミニズム活動家やフェミニズムのメディアがもっと儲かるようにしなければなりません。

たとえば、パンプスの強制をやめようという「#KuToo 」のキャンペーンを展開する石川優実さんは、世界中のメディアや政治家からも注目を集めるムーブメントに1人で育てあげるという非常に秀でた能力を持っているにもかかわらず、今も生計のためにアルバイトを続けているようですが、このままでは絶対にいけません。

優れた能力と生み出した成果に適切な報酬が支払われていないというのは、社会の仕組みに大きな欠陥があります。

一方で、フェミニズム活動家がお金"も"稼ごうと何か企画をすると、ありがちな「儲けようとしている!」「売名行為だ!」という批判が飛んで来ます。ですが、資本主義のこの世の中、儲けて何が悪いのでしょうか? 名を売って何が悪いのでしょうか?

むしろ、フェミニズム活動家に限らないですが、社会を良くしようと取り組む人たちこそ、たくさん儲けて、超有名になるような仕組みにするべきです。個人の病気を治す助けをする医師が一般の人よりも高い報酬を得られるように、社会の病理を直す取り組みをする人も高い報酬を得なければ、社会は一向に健全な状態にならないのも当然です。

そもそも、お金を儲けたい人や有名になりたい人なんて、この世に数え切れないほどたくさんいるのに、「儲けようとしている!」「売名行為だ!」と叩く人たちは、なぜ特定の人々(フェミニズム活動家等)に向けてのみ、お金を儲けることや名を売ることを非難の手段に用いるのでしょうか? 

おそらくそこに悪意や潜在的差別意識があるからでしょう。「お前は俺等より下だから儲けるな!目立つな!」というわけです。フェミニズム活動家が相手の場合は、「女は黙っとれ!」という悪意や潜在的差別意識やミソジニーが表出しているだけに過ぎないと思います。

ちなみに、私は儲けに繋がらないことはなるべくやりたくない人間なので、Twitterで絡んで来る反フェミニズム的な人は基本的にスルーする方針です。それを「議論から逃げているー!」という輩もいますが、プロの時間を拘束するわけですから、しっかりとフィーを払ってもらえればと思います。

◆皆で少しずつ活動家を支えて行こう

では具体的に、フェミニズム活動家が儲かるようにするには、どうすれば良いのでしょうか? 

私たち個人が出来ることとしては、やはり積極的に彼等彼女等が出演するイベントに足を運ぶことや、コンテンツを購入すること等、反フェミニズム的な人々が行っていることを、彼等以上にすることが大事です。

「一人一派」の精神は守りつつも、是々非々で良いから支持を表明し、もう少し団結することが必要な気がするのです。

また、最近私は「ソーシャル・アクティビスト」という制度を始めたのですが、このような新しい支援の仕組みを作り出すことも非常に重要だと思っています。

この制度は、社会課題の解決に向けて頑張る社会活動家を皆で少額支援し、育てていく仕組みです。クラウドファンディングは「事業への資金提供」ですが、これは「人間への資金提供」というわけです。

確かに、「日本には寄付の文化が無い」と言われますし、このような寄付に近い仕組みは苦戦も予想されます。ですが、アイドル等に対する「推しの文化」は、むしろこの日本に強く存在します。

なので、その視点を社会活動家に援用することで、「社会を良くする人を"推し"にしよう!」という文化が育つ可能性もあるのではないかと期待しているのです。

まだ、現在登録している社会活動家は前述の石川優実さんと私の僅か2名ですが、今後別サイトを立ち上げるにあたり、もっとたくさんの社会活動家に声をかけて行こうと考えています。そうやってフェミニズム活動家が儲かる仕組みを後方支援したいと思っています。

そして様々な儲かる仕組みがこの世に生まれるためには、この「ソーシャル・アクティビスト」に限らず、フェミニズムに興味をある人たちがもっとソーシャルビジネスについて学び、議論し、様々な事業を生み、ブラッシュアップして行くことが大切なことなのではないかなと思うのです。

私も様々なソーシャルビジネスに首を突っ込んで行きたいと思いますが、是非これを読んで頂いている方にも何か良い方法は無いか考えて頂きたいと思います。

◆フェミニズム活動家を周囲に推薦してみよう

また、フェミニズム活動家を「推す」のは何も資金的に支援することだけではありません。それと並び、重要になるのが、周囲の人に対してフェミニズム活動家を「推薦」することだと思うのです。

公共性の高い課題を扱うフェミニズム活動家は、支援者の裾野を広げることが重要です。そのためには私たち一人一人が「エバンジェリスト(周囲に分かりやすく解説・啓蒙する人)」になること、つまり、匿名のTwitterアカウントだけではなく、リアルの場で自分の気に入っているフェミニズム活動家を「この人、良いよ!」と推薦し、盛り上げることが不可欠です。

確かにフェミニズムに対して間違った理解をしている人や、嫌悪感を抱く人も、この日本社会では多い中で、フェミニズムを人に推薦することはハードルが高いかもしれません。

ですが、「私は○○さんを推している!」「この人の○○なところが良いんだよね!」「自分の体験に○○な視点を与えてくれた」「もし良かったら見てみて!」というように、人にスポットを当てた言い方をすることで、聞く相手も「でもフェミニズムって~」のような否定をしにくくなるはずです。

たとえば、新自由主義的考えに没頭する人は「新自由主義は良いよ!」とは言わず、「ホリエモンさん良いよ!」と言うでしょう。それと同じで、「人をベースで広めるやり方」のほうが、裾野を広げるには適した方法ではないかと思うのです。

私自身も、イベント等に来て下さった方から、「勝部さんのことを友達にも推薦しています!」という声を頂戴したことが何度かありました。その時はただ「ありがたい!」と思っていましたが、今思うと、実はそのように「人を推薦する活動」こそが、フェミニズムが社会に浸透する一番のカギになるのではないかと思うようになりました。

◆勝部元気を今度もよろしくお願いします

さて、今回は「フェミニストは儲かる」というテーマで書いて来ましたが、私も最近はあまり儲かってはおりません(笑)特に、これまで連載していたエキサイトニュースが終了してしまい、現在転職(?)活動中であるため、いつもより質素な生活を心掛けています。

ですので、是非前述の「ソーシャル・アクティビスト」や、このページの一番下にあるnoteのサポートもして頂けると嬉しいです。また、先日公開したAmazonほしいものリストの中には、一部仕事用のツールもリストアップしておりますので、是非ご支援頂けると大変嬉しく思います。

という感じでお願いばかりになってしまいましたが、梅雨のこの時期はレジャーに行けないため、仕込み系の仕事をガッツリして、今後は今以上に活躍したいと思っていますので、是非引き続きよろしくお願いいたします。

それから近日中に、ソーシャル・アクティビストとは別に、日本社会でガッツリとフェミニズムを推進することが出来る新しい参加型プロジェクトも始動しようと思っておりますので、是非楽しみにして頂けると幸いです。

※私はあくまで「評論家」であり、あくまでマクロな社会構造を分析するのが仕事です。ネット上のゴタゴタや特定の人物には一切興味ありませんので、イベントの経緯や個人の発言に関しては、情報提供者からの伝聞をそのまま掲載しています。

※冒頭の「プロ奢ラレヤー」氏に関する記述で、「職業に絡む発言に関しては本人のものではない」との指摘を頂きましたので、その部分に関しては一部訂正させて頂きました。この訂正に伴う本文の論点・趣旨への影響は一切ございません。なお、これについて「悪意による印象操作だ」という批判もありましたが、「プロ奢ラレヤー」氏について、私は好きでも嫌いでも無く「無関心」ですので、印象操作という面倒なことはしません。評論の趣旨に関する訂正はしませんが、人に関する情報について間違っている点がありましたら普通に訂正します。

現代の新しい社会問題を「言語化」することを得意とし、ジェンダー、働き方、少子非婚化、教育、ネット心理等の分野を主に扱っています。社会がちょっとでも良くなることを願って、今後も発信に力を注いで行こうと思うので、是非サポート頂けると嬉しいです。