個人ゲーム開発者の形です。ひさびさに自作品のゲームシステムについて語りたくなったのでゴリゴリ書いていきます。

　プシュプはスマホ１台で本格的な対戦が楽しめるパズルゲームです。上下につながった２つのフィールドで連鎖を消して攻撃し合います。
　今回は勝負の核となる「２つのプッシュ」について説明しつつ、プシュプのゲームデザインを掘り下げていきたいと思います。

お邪魔ブロックをプッシュ！

　対戦系の落ち物パズルで重要になるのが「お邪魔ブロック」です。自陣で一定量のブロックを消すと、相手陣地にお邪魔ブロックが降り注いだり、あるいは下からせり上がったりします。これが対戦ゲームとしての盛り上がりや駆け引きを生み出します。
　プシュプでは自陣のブロックを消すと、相手陣地の同じ列にお邪魔ブロックが下から押し込まれます。これによって積み上げたブロックがずれて、フィールドが流動的に変化していくのが特徴です。

　プシュプのお邪魔ブロック（色が暗いやつです）は「灰」と呼んでいます。火が付いて消えたブロックの燃えかすを相手陣地に送り込むようなイメージです。

　灰について説明する前にまず、落ち物パズルにおいて一般的に求められるお邪魔ブロックの機能を整理してみましょう。文字通り相手を邪魔するものなので、簡単に消せないことが最低要件となります。試合の間延びを防ぐためにも、攻撃し合う内に自然とフィールドがお邪魔ブロックで埋まっていくのが理想です。
　しかし自陣内に消えにくいものがあるのはプレイヤーにとってストレスになります。極端な話、絶対に消せないお邪魔ブロックが発生すれば必ず決着が付きますが、ストレスが大きくバランスが悪いと言えるでしょう。逆転が起きづらくなり、先手有利に傾く恐れもあります。

　プシュプは同じ色のブロックを４つ以上つなげて消すのが基本ルールですが、灰はただつながるだけでは何も起きません。そのまま対処しなければどんどんフィールドに蓄積していきます。しかし連鎖に巻き込めば、普通のブロックと同じ感覚で（４つ以上つなげて）消せるようになります。
　最初は灰の消し方がわからず混乱すると思いますが、慣れてくると灰を活かして効率よく連鎖を作ることも可能になります。お邪魔ブロックとして程よくプレッシャーをもたらしつつ、プレイヤーの腕前次第でリターンを増やせる仕掛けになっている訳です。
　プシュプは連鎖を作るゲームなので「連鎖しなければ消せない」という灰の性質には基本システムとの一貫性があります。ルールを煩雑にすることなく、ゲームに起伏を生む役割を果たしています。

フィールドをプッシュ！

　プシュプのゲームデザインで悩んだポイントの１つが「連鎖のパワーをどう表現するか」でした。大きな連鎖を組むのは難しいことなので、そのぶん消した際に大きなメリットが得られるようにする必要があります。

　最初はぷよぷよに倣い、お邪魔ブロックの量で連鎖のパワーを表現しようと試みました。しかし押し込む灰の量をちょっと増やすだけでもフィールドがかなり崩れるので、微調整が利きません。灰とは別のお邪魔ブロックを用意し、別のルールに基づいて妨害することも考えましたが、どう工夫しても灰システムとかち合って煩雑になると気づきます。
　フィールドに放り込む要素はこれ以上増やさず、連鎖のパワーが敵陣に伝わるようにするにはどうすればいいか。そこで頭に降ってきたのが「フィールドごと動かす」という発想でした。

　連鎖を消すとフィールドを押すことができ、対戦相手を追い込みつつ自陣を広げることができます。フィールドの移動距離で連鎖のパワーが直感的に把握できるようになりました。
　画面全体がぐいぐい動くダイナミックさが付加され、見た目もいくらか派手になりました。大きな連鎖を組めばドーンと相手を押し潰すこともでき、対戦ゲームらしい爽快感を生んでいます。

　画面を揺らすなどして、演出として攻撃のパワーを表現するゲームはよくあると思うのですが、画面全体が動くことで戦況そのものが変わるゲームは珍しいのではないかと。どちらのプレイヤーが有利なのかぱっと見でわかりやすいので、初心者に観戦を楽しんでもらう上でも効果的です。

２人でプッシュ！

　対戦系の落ち物パズルの多くは、それぞれのフィールドがバラバラに動いている感じが強く、人と戦っているという感覚は薄くなりがちです。プシュプではプレイヤーの取った行動が互いにしっかり影響し、一緒に遊んでいると実感しやすいよう工夫しました。相手陣地に直接干渉でき、より対戦ゲームらしさが増したのではないかと思います。

　プシュプという名前は、２人のプレイヤーが向かい合い互いにプッシュする様を表しています。つまり、
「プッシュュシップ」略して「プシュプ」
ということです。誰かと顔を突き合わせて遊んでほしい、というメッセージがこっそり込められています。ぜひ友達や家族と一緒に遊んでみてください。

プシュプ（App Store）