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シャブリの誤解

「すっきり辛口の白のオススメは?」
「ドライなスタイルのシャブリはいかがでしょう」

約20年前の自分が実際にゲストにシャブリを販売したときの文言だ。
巷に流布されたイメージそのまま、先輩の売り文句そのまま。
自分自身の味覚や感情など一切入ってないまさにドライな売り文句だ。
今思うとよくもまぁ恥ずかしげもなくあんな売り方ができたものである。

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恐らくシャブリは世界的に見ても最も有名な白ワインのひとつだろう。
普段飲まない人でも名前を聞いたことくらいあるのではないだろうか。

シャブリといえば
・フランス北部に位置する白ワインが有名な産地(村)
・栽培されているブドウは主にシャルドネ
・土壌は石灰質でキンメリジャンと呼ばれる
・冷涼な産地ならではの酸味の強いすっきりドライな味わい
・牡蠣をはじめとした魚介類との相性が良い

といったイメージをプロアマ問わずほとんどの人が持っているはずだ。
冒頭で駆け出しの頃のシーンを提示してあるが自分もそうだった。
当時は自分の頭で考えることがなく先輩方に言われるがままだった。
そういう意味で自分にとってソムリエ最初の何年かは完全な黒歴史である。

さて、実際のシャブリについてである。
まず第一に辛口である。これは間違いない。
そして使用されるブドウはシャルドネである。これも間違いない。
上記二つは最低限クリアしておかなければそもそもAOC法によって
そのワインがシャブリを名乗ることができないのは周知のとおりだ。

それでは実際にシャブリを飲んだ時に感じる印象について。
決して「酸味の強いすっきりドライな味わい」ではないことに気づく。
もちろん辛口ではあるのだが酸味が強い=酸っぱく感じるわけではなく
すっきりドライ=爽やかで軽やかな辛口というわけでもない。
どちらかと言えば重心は低い。口に含んでもやや粘りを感じる。

これが優れた一級畑や特級畑のモノになるとより顕著に感じられ、
冒頭の「スッキリ辛口の白」をお求めのゲストのイメージとは異なる。

またほとんどの人がシャブリを飲む際に魚介類と合わせるだろう。
実際に試したことがある人はわかると思うが決して良い相性とは言えない。
特に生の状態、例えば刺身等に合わせようものなら生臭さが上がる。
ならばと火を入れてもワインの方の質感・酸味が重くフィットしない。
魚介とシャブリを合わせるなら造り手や畑の特徴を理解せねばならない。

このようにイメージと実際が異なるワインは世界中に存在するのだが
中でもシャブリはかなり多くのプロフェッショナルが誤解している。
先入観なくテイスティングしてみると理解できるはずなので是非。

そんなシャブリを代表するドーヴィサのレ・クロ。
特級畑の中でもより果実味とボリュームを強く感じるこの畑の葡萄を
二大巨頭の他方、ラヴノー同様素晴らしいバランスに仕立てるドーヴィサ。
前述の「スッキリ辛口ではない」シャブリを体感したければまずはこちら。

世間に流布される情報に惑わされることなく、自分を信じることが大事。
また今日も美味しいワインで頭を悩ませましょう。

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