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20年間の仕事をふり返る3

【18年前: 鉄板焼 憩家】
初めて月刊商店建築さんに掲載して頂いた思い出深い案件。天正三木屋さんに続き、ここでは壁面を伝う滝を作った。

鉄板焼 憩家 ガラスカウンター


エントランスに一部生簀を兼ねた池を作り、池に渡したガラスの橋を歩いて店内に入る。水中ポンプで壁の上端まで池の水をポンプアップし、そこからオーバーフローさせて水を落とす。やはりここでも水の動きに悩まされた。

石貼りの壁全体的にまんべんなく水が流れてほしいのに、水は束になって枝分かれして落ちる。水を流した瞬間「なんでやねん」となった。オーバーフロー部のステンレス板は完全に水平を保っているはず。脚立に登ってオーバーフロー部を見てみるとステンレス板の上で水が踊っている。ステンレス表面の油分によって水をはじいていただけだった。かくして中性洗剤でステンレスをゴシゴシ洗い、油分を取り除き、ステンレス板全体に水が流れるようになった。もう一つ問題があった。滝の水しぶきがガラスの橋まで届き、橋がびしょびしょに濡れる。この状態でガラスの上を歩くのは危険。3台用意していたポンプのうち1台を止め、2台分の水流に抑えると水しぶきはだいぶマシになり、少しガラス橋は濡れるものの許容範囲となった。しかし滝の水流も2/3になり、やや迫力が失われてしまった。。。
水に限らず、毎回新しい挑戦をすると思いがけない壁にぶち当たる。そのリスクを回避するなら無難なデザイン、既存の工法の範囲で設計するしかないが、クライアントは、きっとそんな安全牌を選ぶことを望んで私どもに設計を託しているはずはない。私たちの設計スタイルに共感して下さるクライアントの夢を具現化するのが私たちの仕事だと思う。

とかなんとかカッコ良さげな言葉で締めくくってみる。

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