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日々使われるサービスにするための考察

この記事はGoodpatch UI Design Advent Calendar 2018の18日目の記事です。

私はこれまでクライアントワークを通して、多くのサービスの立ち上げやリニューアルに関わってきました。
その中でよく「日々使わせたい」というお話が度々あり、そもそも日々使われているサービスはどういったものなのか?その特徴は何か?といったこれまで私の中でも言語化していなかった領域を言語化しようと、考察を始めました。

今回は「日々使われるサービス」というテーマを、我々の生活から切っても切り離せないアプリの観点から考察していきたいと思います。

アプリケーションの分類

日々使われているサービスの考察をする前に、そもそも我々が普段どのようなアプリケーションに触れているのかを分類したいと思います。

以下は、私の周辺の人に、普段どのようなアプリケーションを利用しているのかをリサーチし、簡易的に分類分けをしたものになります。

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上記の分類は、大きく分けて「日常行為系」と「非日常行為系」に分かれます。これは便宜上このように分けていますが、大まかにいうと多くの人が日常的に行っている行為に属するものか、そうでないものかという分類となります。
これを見ると、アプリはこれまでにしていた何かしらの行為を置き換えたものになっている場合が多いことに気がつくのではないでしょうか。

とはいえ、この中で「非日常行為系」に分類されるものには、この記事をご覧になっている皆さんが日々行なっている行為も含まれていると思います。
ですので、ここからは日々行なっている行為になりやすいものの特徴を紐解いていきましょう。

日々している行為になるものと、そうでないものの差

当たり前ですが、日々行なっている行為は人によって大きく異なります。
例えば、ある人にとっては「ダイエット」や「筋トレ」をすることが日常的な行為になっていたり、ある人にとっては「ゲーム」をすることが日常的な行為になっていたりします。

そこで、日々行っている行為とそうでない行為には、どのような差があるのかを紐解いていくと、そこにはその対象行為とユーザーとの心理的な距離が関係していることがわかってきました。

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例えば、「買い物」という行為は日々誰しもがしている行為です。
そのため、大多数の人と「買い物」という行為の心理的な距離は十分に近い状態と言えます。

では、非日常行為系についてはどうでしょうか?
ここからは、日常行為系と非日常行為系に分けて行為とユーザーの心理的な距離についての考察を進めたいと思います。

日常行為を扱う場合

多くのユーザーが日々していることはそもそもユーザーとの心理的な距離が近い場合が多く、行為の置き換えをするのが比較的簡単です。

日常行為の置き換えを成功させたい場合は、これまでにしていた行動をより便利にしたり簡略化するというアプローチを取ることによって、これまで以上の利便性を提案し、結果としてユーザーの行為を置き換えることができます。

その代表例として、Amazonを考察してみましょう。

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上記は、これまでの買い物とAmazonの購買プロセスを比較した図です。

Amazonはこれまでの買い物のプロセスと比較すると、買い物に行くという行為”や“購入から届くまでのプロセス”を簡略化したり、品揃えを十分に整えながら選ぶという行為をより拡充させることによって、これまで以上の利便性をユーザーに提供し、行動の置き換えに大きく成功しているサービスです。

ここでいう利便性が上がるというのは「課題を解決している」アプローチと「これまでにない体験でプロセスを簡略化/置き換える」アプローチがあります。
後者の「これまでにない体験でプロセスを簡略化/置き換える」アプローチとしてAmazonは、Amazon Dashという手段を提供することで購入体験のさらなるショートカットに成功しています。
さらに、簡略化の視点や範囲をずらすことによって、Amazon GOという店舗型サービスで会計プロセスの簡略化を実現しています。

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非日常行為を扱う場合

それでは次に、非日常行為を扱う場合を考察していきましょう。
前述の通り、日々行われることにはその対象行為とユーザーとの心理的な距離が関係しています。

例えば、非日常行為系の「ダイエット」は習慣化する人とそうでない人が大きく分かれます。
その差を生み出す原因としてよく言われているのが、ダイエットを遂行するときの決意の固さ/意志の強さです。
決意が固い状態は言い換えると、ダイエットとユーザーの心理的な距離が非常に近い状態になっているとも言えます。

また、「結婚準備」や「チケット購入」のような非日常系のイベントごとを扱う場合は、その期間だけ求められるものになりやすいため、その期間が過ぎると途端に使われなくなるといった場合が多いでしょう。
それは、それらのイベントとユーザーの心理的な距離が近い状態が短いため、継続しづらいことが原因なのではないでしょうか。

これらの非日常系の行為を「日々使わせたい(行わせたい)」という場合には、その行為との心理的な距離の近いユーザーや心理的な距離を近づけやすいユーザーをペルソナと呼ばれるターゲットユーザー特定手法を用いてで決定することで、日々使われるためのスタート地点に立つことができると私は考えています。

まとめ

つらつらと書いてしまいましたが、最後に日々使われるサービスにするためのアプローチを日常行為系と非日常行為系に分けてまとめたいと思います。

▼ 日常行為系
多くの人がすでにしている行為を扱う分類。
ユーザーがこれまでにしていた行動をより便利にしたり簡略化するというアプローチを取ることによって、日々使われるアプリケーションやサービスにしている場合が多い。
利便性を上げる方法としては、「課題を解決している」アプローチと「これまでにない体験でプロセスを簡略化/置き換える」アプローチがある。

▼ 非日常行為系
日々行なっている行為として、人によってバラツキのある趣味に関する行為やイベントのような瞬間的に必要になるが期間は短い行為を扱う分類。
対象行為と心理的な距離が近いユーザーをペルソナとして設定し、そのユーザーのすでにしている行動を置き換え、日常化・習慣化を促していくアプローチを取ることが多い。

このように、対象行為とユーザーの心理的な距離によって、非日常行為系であってもすでに生活の一部になっていることやそのユーザーとの相性がいい行為は置き換えがしやすく、日々使われやすくなる傾向にあります。

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上記では具体的な例としてはあげませんでしたが、逆に多くのユーザーにとって生活の一部になりにくい=心理的な距離が近づきづらい行為も世の中には多く、それを無理に日々使わせようとするのは難しいでしょう。

そのため、皆さんもサービスをユーザーに対して提供する際には、

・対象行為は、多くの人が日常的に行っている行為なのか
・ターゲットとなるユーザーは誰なのか
・対象行為とユーザーの心理的な距離は近いのかどうか

という観点を持ってみるのはいかがでしょうか?

記事を最後まで読んでくださってありがとうございます。とても嬉しいです!