今、家系図作成を始めるべき2つの理由

前回、家系図を作成するための基本的なことを書きました。恐らく中には「いつか時間ができたときにやってみようか」と思った方もいたかと思います(いたら嬉しい)。

今回は「いつか」ではなく「今」家系図作成を始めなければならない理由について書きたいと思います。

戸籍の保存期間は150年しかない!

最大の理由は、自治体に義務付けられている戸籍の保管期間が150年間しかないことです。つまり戸籍制度が始まった明治時代の戸籍はもう取得できなくなっているものもあるわけです。また、今取得できる戸籍でも、自分の子どもや孫の世代の頃には取得できなくなってしまう可能性があります。

もう少し正確には、結婚や死亡でその戸籍に生きている人が誰もいなくなった戸籍を「除籍」と言いますが、その保管期間が2010年に80年から150年に延長されました。

保管期間を越えた戸籍は自治体によっては廃棄されることになります。そのため、2010年時点で80年の保管期間より古い昭和4年(1929)の戸籍は、自治体によっては廃棄してしまっている場合もあるわけです。

私の経験では昭和4年よりも古い戸籍でも今のところは全て取得できていますので、実際には保管を続けている自治体も多そうです。

しかし、いずれにしても今後取得できなくなる戸籍が出てくることは間違いないので、情報の収集は早く始めるに越したことはありません。

昔のことを知っている親戚から話を聴けるのは今しかない!

家系図は戸籍の情報をただ記載するだけではなく、「この人はこんな人だった」とか様々なエピソードを織り込んでいくことが楽しみの一つです。そのためには昔のことをよく知っている高齢の親戚から話を聴くのが一番です。

第二次世界大戦が終わった昭和20年(1945年)の2年後、昭和22年に民法が改正されそれまでの家制度は廃止されました。また、高度経済成長の中で核家族化が進み、今は「遠い親戚と会うのは葬式ぐらい」という人が多いのではないでしょうか。

戦前生まれの親戚(曽祖父母、祖父母、その兄弟姉妹)がまだ健在ならば、できるだけ早く昔の話を聴くと良いでしょう。「ルーツは実は○○にあって本家の墓もまだそこにある」とか「○○家は元々△△家に仕えた武士の血を引いていて」といった風に、想像以上に昔のことを記憶されているはずです。菩提寺過去帳なども分かれば江戸時代のことまで辿れる可能性もあります。

だいたいこういった「昔話」は親戚の法事のときに初めて会うようなオジサン・オジイサンが話していて、若い時分は興味を持たずに聞き流してしまうものです(私にも10代の頃の祖父の葬式で心当たりがあります)。しかし、いざ調べようと思っても調べられない貴重な情報です。

昔のことを知っている人が元気なうちに、是非興味関心を持って話を聴き、まとめておきたいものです。

初めて会った祖母の末弟の死に際に立ち会えた話

一つ、実際にあったエピソードを紹介しましょう。私の祖母チヨコは大正生まれの8人兄弟の長女で2011年に亡くなりました。祖母は神奈川で生まれ結婚して大阪に出ましたが、下の兄弟たちは皆神奈川に居り、私自身は幼児の頃に一度父に連れられて顔を見せに行ったきり全くの疎遠でした。(まぁよくある話ですよね)

戸籍を調べ、祖母の実家は明治~大正に富山から神奈川に出てきたということを知った私は、祖母の兄弟で唯一鬼籍に入っていない末弟カズオおじさんから話を聴きたいと思いました。

とはいえ、今もご健在なのか、病気をしているのか、詳しい話を聴ける状態なのかなど全く分かりません。そこで、父が年賀状をやり取りしている従妹(いとこ)のカズコさんに連絡することにしました。カズコさんは祖母の別の弟イサムおじの子で、カズオおじから見ると姪(めい)です。

カズオおじ始め祖母の実家のエピソードを聴きにカズコさんの家に向かう道中、カズコさんから「今日、カズオおじさんが危篤と連絡があった。合流したらすぐに見舞いに行きましょう」という連絡が入りました。カズオおじは数年前から病気で、今は自宅療養中でした。

ご自宅に伺うとカズオおじはベッドに寝ていましたが、「チヨコ(祖母の名)の孫です」というと目を開け、微かな声でしたが「オ・ネ・エ・サ・ン」とはっきりと言いました。カズオおじさんから見ると祖母は頼りになる姉だったようで、私にその面影があったようです。

その数日後にカズオおじは亡くなり、父の兄弟を代表して私が葬式にも参列しました。カズオおじさんの話や、家の昔話なども聞けましたし、予め作成していた家系図で皆さんの記憶も蘇り、葬式後の会食も盛り上がりました。

もしカズコさんに話を聴きに行く日が1カ月でも遅ければ、カズオおじに会えることは無かったでしょうし、恐らく葬式も近い身内だけで済ませ、事後に知ることになっていたでしょう。

まさに虫の知らせでした。

最後に

何でもそうだと思いますが、思い立った日が吉日です。自治体が戸籍を保管する期間、ルーツの話を聴ける高齢の親戚に限らず、情報は収集・整理していかないと失われていくものです。是非、今この時代でしっかり家系図にしておきたいものです。

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