見出し画像

個人的解釈による「複製原稿」と「複製原画」の違い、境界線はどこか?

九番街です、本日もよろしくお願いします。

さて、ここに興味を持った方がまず疑問に思った1つとして、
「複製原稿」と「複製原画」は何が違うのか?
といったところである。

出版社によって複製原画、複製原稿と銘打って販売しているが、正直言って明確な基準は示されておりません。

しかしそのことをそのまま、なあなあにしてしまってはこのコラムを作った意味もない(笑)あくまで掘り下げていくつもりでこれから書いていくつもりなので改めて興味のある方はお付き合い下さい。


僕の中では、ハッキリと判断基準はございます。

それは「得られる情報が全く違う」ということでしょうか。

「複製原画」とは?


皆さんは複製原画と聞いて、まず思い浮かべるのは、原画展などで目玉としてよく受注販売されている5万、10万しそうなお高いイメージだと思われます。
もちろん間違いではないのですが、今回見比べていただきたいが為の複製原画とは、皆さんが「複製原稿」だと思われている、物語の1ページをそのまま切り取ったかのような印刷物の方です。

まずはこの2つを見て欲しい

左:和久井健「東京卍リベンジャーズ」連載200話記念 受注複製原稿より
右:池田理代子「ベルサイユのばら」自選複製原画集より

一見、どちらも複製原稿にも見えるこの2枚
ファンにとっては額に飾ってもいいくらい名高いシーンでもある。
が、僕の中ではどちらも複製原画といえる。
(東リべに関しては”複製原稿”という商品名だが、それについての自身の考えも含めあとで詳しく説明)

雑誌とおなじ見栄えの印刷クオリティで「原稿っぽい紙」に複製された印刷物だと思ってます。
これから作者のクセやら努力や苦労のあとを感じとることは出来ないという事です。

「複製原稿」とは?

つぎにこちらの2枚を見て欲しい

左:尾田栄一郎「ワンピース」2億冊突破記念キャンペーン当選品
右:椎名高志「GS美神極楽大作戦‼」椎名高志原画展グッズ

こちらの複製原画ともいわれている2枚だが、これこそ僕の中では複製原稿として、カウントしていいのでは!?と思う原稿である。

一体なぜか?
先ほどいった得られる情報が全く違うということであり、複製原画では雑誌に載ったページと同じ表面上の情報量しか得られていないということ。

対して僕の中で複製原稿とはこういう事である。

①ベタのムラや中に隠されたベタ指定のバツ印
②ホワイトのムラ
③スクリーントーン同士の境界線
④水色鉛筆による、アシに対してのトーンの指示や落書き。
⑤劣化によるテープのなどの変色(昔の原稿ほど経年劣化でアメ色になる)
⑥当時の専用原稿用紙の再現(紙の厚さ等)
⑦吹き出し内、写植の跡や奥にチラ見せする作者直筆のセリフなど。

これらは誌面に一切載らない作者の努力の跡、作家の息が聞こえてきそうな重要な軌跡でもある。

さらに欲を出せば
⑧両面印刷やインクの滲み
⑨反転文字用に使用されたトレーシングペーパー
⑩写植は別紙を使用

など拘ると本当にキリがない。
それくらい沢山の情報を知ることが出来るのだ。

このことから分かるようにたとえ出版社がこれが「複製原稿」「複製原画」と銘打った商品を出しても、名前に関係なく

どこまで生原稿に近づけるか=複製原稿のクオリティの高さ

といったところに本来、消費者は欲しているのではないでしょうか。

それをふまえて、この2枚を見比べて欲しい。
僕の言う複製原稿はどちらをさすか。

左:「ジャンプ流!全巻購入応募者全員サービス複製原稿」(A4サイズ)
右:「創刊50周年記念 週刊少年ジャンプ展vol.2」グッズ複製原稿(B4サイズ)

鳥山明先生の代表作「ドラゴンボール」の有名なシーンです。その人気は未だに続いており、さらに海外にもファンを獲得し続けるなど、コンテンツとしても大成功をおさめた作品です。
人気であるが故にこの場面は別の企画でこうやって複製として選ばれているんですが、クオリティに関してはサイズも含めこうも差があるのが複雑な気持ちですね。

商品名としてはどちらも「複製原稿」と銘打っております。
が、どちらの複製原稿を消費者は求めているか、これは大体の方が予想がつくと思われます。

まとめ



漫画家を目指し、アシスタントの経験をされた方なら分かる初めて見るプロの生原稿。

アシスタントとして、当然の事とはいえ初めて先生の原稿に線を一本引くだけの行為でも相当緊張して手が震えたのではないだろうか?
と同時にプロの作品と自分の作品との差に何かが違うと勉強になったと思う。

些細な事かもしれないが少しでもその経験の擬似体験出来るのが「複製原稿」だと思ってます。

(もちろん生原稿が手に入ることに越したことはないが、世界で一枚の生原稿なんて恐れ多くて飾れない保存に全力を要するだろう。)

複製原画が駄目と言っているわけではなく、得られるものが違うのであって、作品やその中の推しキャラのファンにとっては複製原画で充分満たされるものがございます。

複製原画⇒心を満たしてくれる至福の1枚(クオリティにピンキリ有り)

複製原稿⇒誌面には載らない作者の努力やテクニック、メカニズムを学べる教材としての1枚

それを思うと、個人的には1枚1000円前後のリーズナブルな価格帯である複製原稿は大変興味深く、大変満足いくものではないのでしょうか。


九番街


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?