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『鎌倉資本主義』に学ぶ。日本中が、東京になる必要はない。

『関係人口』という言葉が話題になっていますが、久保家は、まさに関係人口を増やすために、平日は都市でゆったり働き、週末は田舎でのんびり働く生活をモットーにしております。働くために田舎に行くのは、子供の頃からの名残かもしれません(笑)

先日、おもしろ法人カヤックの柳澤さんが書いた「鎌倉資本主義」を読みました。すらすら読める本ですが、「なるほどな」と思えるエッセンスがぎっしり詰まった良書です。まちづくりに興味がある方や新しい働き方を模索している方は、ぜひ読んでみてください。

本日は、『鎌倉資本主義』をまとめて、そこから地方創生について考えてみたいと思います。

@近代資本主義が臨界点に達している

まずは、最初に課題の提起からこの本は始まります。
近代資本主義社会には、以下の2つの問題があるとカヤックさんは言います。

 1.地球環境破壊
 2.富の格差の拡大

いずれもよく知られた問題ですので、ここは深く突っ込まずに先へ進みます。ここで注目すべきなのは、カヤックさんは資本主義を否定していないことです。資本主義社会がダメだから、新しい社会をつくるというわけではないのです。

そもそも、資本主義社会というのは面白いゲームのようなもので、だからこそ、多くの人間がそれを受け入れてきたと述べます。でも、そのゲームバランスが偏り、多くの人が面白くないなと感じ始めているというところからスタートします。

マックス・ウェーバーが『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』によると、プロテスタンティズムは厳しい勤労倫理をもっていました。カルヴァンによると、どの人間が救済され、どの人間が救済されないかは、永遠の昔から神によって定められていることであり、このことは人間の側の善行や信仰によって変えることはできないそうです。

このような徹底した『予定説』が、人びとを「自分は救われている側なのか、それとも救われないのか?」という不安に陥れ、その不安を打ち消すために、逆説的に絶えまない世俗的勤労(労働による救済)への没頭をもたらした、というのがウェーバーの考えでした。

この労働救済の考え方は、日本では『石門心学』と親和性が有り、働くことは人間性を磨くことにつながるという教えにつながりました。しかし、資本主義のもう一つの精神である、『目的合理主義』は日本には定着しませんでした。日本人は、『働く』ことには抵抗はありませんが、その結果、お金持ちになって周りの人から妬まれることは嫌なのです。なぜなら、『お金』よりも『人間関係』のほうが大切だと思っているからです。

@面白くない世の中をおもしろくしよう!

カヤックさんはクリエーターの集団なんですね。うちは奥さんがクリエーターなので、カヤックさんの実情をよく知っているそうです。本に書かれていないことも、書けないことも、たくさんあるのだとか(笑)そりゃそうだ(笑)

それはさておき、この本の中でググッときた言葉を抽出してみました。まずは、日本中が東京になる必要ないということです。東京の簡易版、縮小版を地方で実践したところ、オリジナルに勝てるわけがないし、それで人がやってくるはずがないということです。

要するに、『脱東京』せよ!ということです。正論ですが、かなり手厳しい。クリエーターならではのストイックな要求だなと思いました。『のだめカンタービレ』で、のだめが千秋にしごかれて「むきゃーーー!」となっている姿が浮かびました(笑)

次に、ジブンゴト化すると楽しくなるということです。これはわかりやすい。モチベーションの本質です。地方に行けば、嫌でも周りの出来事が『ジブンゴト』になります。単純に競争が少ないからです。

都市では単なるオペレータでも、地方に行けばコンピュータのことなら何でも知っているスーパーエンジニアになります。色んな人から仕事を頼まれて、そのフィードバックも確実に感じられます。まちのことは、ジブンゴトなのです。

さらに、『ファブシティ』でものづくりをしたり、ゴミをなくそう運動を『ゲーム』にして地域の人を巻き込んでいく。じぶん達でゲームのルールを作る、これは楽しいことです。

東京の簡易版ではなく、地方でクリエイティブな活動をしていく。尖っている。楽しいことをすれば、さらに楽しい人達が集まって拡大していくという流れです。この増幅作用は、資本主義の性質と同じですね。

@何をするのかよりも、誰とするのかを優先する

この本で面白いなと思ったのは、何をするかよりも、誰とするのかを優先するという考え方です。

普通の人は、何か事業を考えてくださいと言われると、「何をするのか?」を最初に考えると思います。マーケティングの観点から、「誰に、何を」と考える人もいるかもしれません。

ところが、カヤックさんは誰と一緒にやるかを優先したのですね。これはおもしろい。まぁ、クリエーターの集団ですから、アイデアなんて腐るほど持っているのでしょう。何をやるかなんて大したことじゃないのかもしれません。

そして、大抵のことは『仲良し』で解決できると喝破します。これは名言で、確かにその通りだと思います。なんで今まで気づかなかったのだろうと思いましたが、本当に重要な発見というのは、当たり前過ぎて注意が向かないのだと思います。

さらに、『まちの食堂』というカタチで、社員食堂をまちで働いている人達に開放しました。これだけもすごいアイデアなのですが、その『まちの食堂』の自動販売機には『お皿洗いでランチ10円』というメニューがあります。これは素晴らしいアイデアです。

ついつい、ボタンを押したくなってしまいます。見事なアフォーダンスです。そして、人間というのは一緒に働くと連帯ができます。働くことでつながっていくというのは、日本社会でコミュニティを形成するための定石だと思います。

@好きな土地で働くと幸せになれる

最後に、カヤックさんがなぜ鎌倉を選んだかですが、単に、柳澤さんが鎌倉が好きだからです(笑)生まれも育ちも別の土地の人らしいですが、学生時代に鎌倉に行って、素敵な街だなと思い、こんな街で仕事がしてみたいなと思ったそうです。

もし、宝くじで10億円が当たったら、何をするでしょうか?旅をしたり、モノを買ったり、色々あると思いますが、最終的には、好きな土地にマンションなり、一戸建てなりを買って、そこに住むのではないでしょうか。

土地と幸せには相関関係がある。経済的な制約がなければ、誰でもじぶんの好きな土地に住んで、住めば幸せになる。しかし、よくよく考えてみれば、経済的な制約がない状態になるのは難しいけれど、好きな土地に住むだけで幸せになるのなら、住めばいいじゃないですか(笑) なんか当たり前の話ですが。

結局、本のタイトルは鎌倉資本主義ですが、○○資本主義に置き換えて、○○の部分に入るを考えたらジブンゴトになる。ジブンゴトになれば楽しくなる。楽しいことをしていると仲間も増えて、ますます楽しくなる。

もちろん、そうは問屋が卸さないでしょうけど、一日一日を楽しく生きようとしている人生は、その努力をしない人生よりも、はるかに素晴らしく充実した人生になると僕は思います。


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