コルクアートは優しさの連鎖

リハビリの休憩中は、考え事くらいしかすることがないので、これまで話していないコルクアートのことを書いてみようと思います。

そもそもコルクって何なのか。

コルク樫という木の皮を剥いで、コルクの型に打ち抜き、栓にしたもの。

産地の80%はスペインとポルトガルで、周辺国フランスやイタリア、スペインを始めとする全世界のワインに用いられています。

皮を剥がされたコルク樫は、数年の時間をかけて皮を再生する過程でCO2を吸収、繰り返し採取できるだけでなく、周辺の自然の生態系を維持したり、砂漠化を防ぐことにも一役買っているといいます。


ワインになぜコルク栓が使われるのか。

ガラス瓶が生まれる前のワインの容器は木樽だったり、さらに前は土器だったりしました。鉄道も車もない時代、せいぜい馬やロバが動力の採れたものを採れた場所で飲み食いしていた時代には、コルク栓は必要なかったのです。

やがて文明の発達とともに、ワインを持ち運びする時代が訪れ、長距離移動の為、または保存の為にガラス瓶とコルク栓の組み合わせが誕生しました。今から350〜400年くらい前のこと。フランスではヴェルサイユでルイ王朝が華やいでいた頃です。離れた国々の最高のワインが宮廷に届けられていたことも有名ですね。

コルクによってワインを密閉できるようになると、空間だけでなく例えば去年仕込んだものを次の年に楽しむというように、時間を越えることも出来るようになりました。(この期間に瓶の中でワインが変化することを、熟成と呼びます。)

コルク栓によって、空間と時間を超えていく。

空間を越えるのは、遠くにいる誰かに届けるため。時間を越えるのは、未来にそのワインを飲む誰かのため。輸送中に、また熟成中にワインを守っている”誰かのための優しさ”のような存在がコルクです。


そうしてはるばる日本にやって来たワインを僕らが手にし、

「あの仲間たちと飲もう」
「あの記念日に飲もう」
「あのレストランで飲もう。季節のメインディッシュと一緒に・・・」

提供する側のソムリエなら、
「この料理が生まれた土地のワインです。
是非ご一緒にどうぞ」
と、優しさが連鎖するのです。

ワインを飲み終わった後、1粒1粒のコルクは1本1本が、今日までにどんな時間を過ごしてきたのかを語ります。

染み込んだ色の深さはワインを守ってきた時間の長さであり、生産者の刻印はワインの生まれです。

テーブルに残されたコルクは、そこでワインが注がれ、豊かな食卓のひとときがあったことの証明でもあります。

そんなコルクひとつひとつの微妙なグラデーションを分けて、人の表情へと再構築するコルクアート。

実はワインを飲んだのは殆どが皆さまで、僕に届けてくれたのも皆さまです。

1人では毎日飲んで貯めても1年で365個。休みなしでです。僕は3年間で13枚、述べ5万個のコルクを受け取って、ひとつひとつ、ひとりひとりへの感謝を積み上げてきました。


僕がコルクアートを通じて伝えたいこと。

ワインを飲むということ、それは人と人、自然と人、そしてこれまでとこれからを、優しさが連鎖するように結んでいくということです。

もしも使い道のないコルクが余っていたり、
捨ててしまいながらも、何かに使えないかな〜と少しでも思った方は、是非コルクアート活動に参加してみてください。

飲んだり食べたり喋ったりしながら新たな作品が生まれた時、あなたもまたコルクアーティストです。

◇作品の紹介はこちら
https://note.mu/kuboblanc/n/n06b50fd2d74d

☆お問い合わせはこちら
kuboblanc@gmail.com
コルクアーティスト 久保 




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