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清流を求めて行った下呂温泉でトドを見る

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東京に戻れない二人

東京を離れて田舎暮らし6年目の夏。来年のオリンピックまでには戻る計画だったものの諸事情があり戻れそうにないので気が滅入る毎日。無性に東京が恋しくなる。

もともと私は今住んでる田舎から上京しているので慣れた土地ではある。慣れている分、ちっとも楽しくないのだった。相方は生粋の江戸っ子。不思議なことに都会育ちの方が田舎暮らしを楽しめるらしい。もっとも、この辺りは「ちょうどいい田舎」なので極端な不便さは感じずにいられるのでネオン大好きな相方でも、まあまあ快適に暮らせてるのだと思う。

東京と違い空が大きく広がってるこの田舎の青空や田園風景や夕焼けは格別に美しい。緑も多い。山も河も海も近い。野鳥や昆虫もいる。「ちょうどいい田舎」はアクセスも良い。関西と関東の真ん中に位置してるので何処へ出かけようと便利ではある。

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▲田園風景広がる ちょうどいい田舎▲

事情があって東京を一時的に離れたけれど、東京暮らしをやめたわけではなかった。二人の居るべき場所はやはり東京なのだと確信のようなものがある。早く諸事情が解決して東京に戻れる日がやって来ないものかと私は毎日のように溜息をつきながら暮らしている。

そんなわけで、この田舎暮らしを受け入れ難い私は6年間ちっとも生活を楽しんでなかった。ストレスで また心が病みそうになってる。病みそうになる一歩手前で踏ん張ってる自分。6年も離れてしまった東京に私の居場所などあるのだろうか?そんな風に諦めの気持ちも出て来てる。口にこそ出さないけれど相方だって、もしかしたら同じかもしれない。

この「ちょうどいい田舎」に根を下ろす気は さらさら無いのだけれど、もう少しここに住んでることを楽しんでもいいのでは?と6年目にして、ふと、頭を過る。

突然、始発電車に乗って下呂温泉へ

相方が土鍋でご飯を炊き小さなおにぎりを4つ握った。それを見て私は紅生姜入りの甘い卵焼きとピーマンとハムの炒め物を作った。それぞれの水筒には冷たい氷とお水。おやつも詰め込んだ。東京で私達はよく近所の公園にお弁当やおやつを持って二人で出かけたりしていたので、こういう時は自然とピクニックや遠足になってしまう。

ちょっとワクワクしてきた。

下呂温泉を選んだのは3年前に私が高校の同級生と一泊温泉旅行に行った先だったから。いつも相方とは行動を共にしていたので女友達との温泉旅行に相方がいない寂しさを感じてたから「いつか二人で行ってみたい」と話してた。その私の希望を叶えてくれたのだった。

相方との二人旅は自由気まま。

パニック障害で基本的に各駅電車しか乗れない私なので鈍行で丁寧に旅をする。小さな旅は今回が初めてではなく可愛い三岐鉄道 北勢線に乗って終点まで行って温泉に浸かってノンビリしたこともある。この時は三岐鉄道 北勢線に乗るのが目的だった。温泉はあくまでも おまけ。朝、何となく散歩の延長で電車に乗りに行ったというような無計画さがいい。相方とする旅はいつもこんな感じ。

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▲三岐鉄道 北勢線の散歩旅▲

完璧主義で心が疲れやすい私には、この自由さが安心につながる。相方は縛られるのが大嫌いな自由人。予定変更ドンと来いの人。正反対の二人は揉めると大変なんだけど(笑)お互いの欠点を補う関係になれるのが凄くいい。

二人で岐阜に行くのは初めてだった。凄く新鮮!

以前から岐阜の清流を相方に何度も話して聞かせてた。長良川の上流なんて本当に水が美しいので、それを都会育ちの相方に見せたくて、いつか飛騨高山とか郡上とか一緒に行こうって東京にいる時から話してた。電車に揺られ車窓から見える河の絶景にはワクワクしたけど鈍行列車なので地元の人には見慣れた風景らしく私達以外は誰も興奮する者がいないのには笑った。そうか、慣れてしまうものなのか。私はここに住んでも、ずっと慣れずに電車に乗る度にドキドキしそうだなと思ってしまった。

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▲JR高山本線の車窓から見える絶景▲

始発出発だったので下呂には早朝8時半着。

いつもの日常なら布団の上でゴロゴロしてる時間帯。不思議。朝から下呂駅にワープした気分!(実際には3〜4時間かけてやって来たのだけど。笑)

案内所で日帰り温泉情報を聞いて散策がてら観光スポットを目指す。途中、街中を流れる湧き水があまりにもキラキラしてて涼し気(しかも宝石の様に綺麗!)なので、思わず足を止めて眺めたくなる。夏場は子供に紛れて水遊びするのを是非オススメしたい。実際、私達はここでジャブジャブ水遊びしたのが今回、一番楽しい思い出になった気がする。清流って飽きずに永遠に眺めてられる。もし下呂に住んでたら毎日でも涼みに行ってると思うのだ。

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▲下呂温泉街に流れる清流…音も水も清らか▲

合掌村の人懐っこい鴨ちゃんは最高だった

観光スポットである下呂温泉 合掌村は、あの世界遺産で有名な白川郷などから移築した合掌造りの民家で集落を再現した博物館ということらしい。入場料(大人)800円。青空と茅葺屋根が絵になる。集落もコンパクトで多すぎず丁度いい感じ。陶芸など色々な体験コーナーも。興味のある方は是非。

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▲冬の下呂もいいけど夏の下呂も良かった!下呂温泉 合掌村は絵になる▲

私達が一番興味を惹かれてしまったのは、じつは合掌村の中で飼われてる鴨でした。鯉の池あたりでウロウロしてると思うのですが、物凄く人馴れしている鴨で物怖じせず自由に歩き回っています。触れ!と言わんばかりに自ら擦り寄って来てくれるので思わずこちらの方が戸惑ってしまいます(笑)が鴨なんて触る機会が滅多に無いので恐る恐るです。鴨の方は嫌がることなく本当にマイペース。池の鯉も物凄い勢いで口パクパクしているので、こっちはこっちで笑えるほど面白いですが(鯉に餌やりをすると とんでもないことになってました。笑)鯉の口パク以上に私達は すっかり「鴨ちゃん」に夢中になって、とんでもなく楽しい時間を過ごしました。

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鴨ちゃんを触りまくった後は合掌村の中にある萬古庵(茶房)で一服。ここから見える風景が素敵。前回は冬の2月だったけれど夏もいいなぁ。もし家を建てるなら、こんな造りの家で こんな風に景色を眺めながら仕事ができる仕事場が作れたらいいだろうなぁと思ったのを今回も思う。冬も夏も素敵。旧い日本家屋は とてもお洒落。

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▲下呂温泉 合掌村内の茶房「萬古庵」からの風景▲

お約束の観光地スイーツもお洒落だった。サイズを考えると値段が不釣合いに高すぎる「あんみつ」あまりのミニサイズに思わず吹いたほどだったけどインスタ映えするなぁと思いながら画像を撮る(インスタやってないけど。笑)真ん中の赤いのはトマト。口直しに梅干し(小梅)も付いてる。

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▲実物は かなりの小ぶり(笑)カラフルな和スイーツ▲

普段、住んでる場所が場所なだけに「松阪牛!松阪牛!」と言ってる私ですが(笑)岐阜といえば もちろん「飛騨牛」です。そんなにグルメでもない私などは美味しい牛肉を食べれば どれも同じように大絶賛になっちゃうんでしょうが(しかも 嗅覚&味覚障害)下呂温泉には飛騨牛の串焼きが道端で売ってたりするので(前回の旅行からずっと気になってた)今回は1串買ってみた。500円(税込540円)ワンコインとはいえ、なかなかの値段。で、出てきたのは小さい小さい飛騨牛が幾つか連ねて刺してある串。それを見て「マジかー」となりました。味はそりゃ美味しかったに決まってます。美味しくなかったら怒りますよ。小さすぎて倍のサイズでも良かったんじゃない?と正直思う。食べ応えがないので2度目はもうない。このサイズの串を食べるなら普通にお金出してしっかり飛騨牛 食べに行った方がいいと思う。

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▲最高ランク飛騨牛串なら相場かもしれないけど…絶対 物足りない…▲

温泉で出会ったトドおばちゃんと39デー姉妹

寄り道たっぷりして、いよいよメインの温泉へ。下呂温泉では温泉手形(湯めぐり手形)なるものがあるそうですが(好きな温泉に3回入れて期限は半年)私達は1回ポッキリの温泉ということで駅前の案内所で この日の温泉情報を聞いたところ早朝から入れるのは3カ所ほどで料金は700〜800円程度。10時以降なら格安400円ほどで入れる温泉もあるとのこと(ただし普通の大衆浴場)ホテルの場合は日帰り温泉が出来るところで1,000〜1,500円(ホテルはかなり割高!)この日は花火大会やお祭りなどの催しもある土曜日だったので15時以降は混雑が予想されるため温泉は15時までの利用をオススメするとのこと。

何処の温泉に行こうか迷った挙句、結局は 前回、宿泊した駅前のホテル「水明館」へ。ここが格別にいいというわけではないのだけれど、前回、ホテルのスタッフの方が親切だったのと一度は入った温泉なので極端に失敗しないだろうという私らしい判断(笑)で9F「展望大浴場」へ。水明館では「野天風呂」か「展望大浴場」のどちらかを選べて1,100円で温泉に入ることが出来ます(タオルとお土産&喫茶の割引券付き)女性なら「展望大浴場」のが私的にはオススメ。温泉に浸かりながら、さっきまで歩いてた下呂市街の風景が一望できて楽しめます。相方に男湯の方はどうだったか聞いてみたら、どうやら反対側の風景のようで「単に山だった…」と淡白な反応だったので、おそらく展望大浴場に関しては女湯の方のが楽しいのだと思う。

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ちなみに下呂温泉は河原で無料で入れる温泉もあります。昔は地元の人などが素っ裸(!)で入ってたようですが、現在は水着着用。時間帯も決まってるようなので興味のある方は調べて入ってみるのも楽しいかも。道行く人やホテルなどから丸見えなので物凄く見られてしまうかもしれませんが(笑)あとは足湯があちらこちらに。温泉に入れない方は足湯も楽しいです。

前回、冬の下呂で初めてここの温泉に入った時の衝撃が私には忘れられなかったのですが下呂温泉は「美人の湯」とか言われていて全国でも有名(日本三名泉)ですが、肌にまとわりつくお湯の「とろっとろ」感がじつに気持ちいい。ササッと入るだけじゃ勿体ない!たっぷりゆっくり休憩挟んで何度も入っておきたい。観光客がドドッと押し寄せる前のお昼の時間帯だったので私以外に入浴客は数人で ほぼ貸切に近い状態。ラッキー!なんて贅沢!

そこで「横たわるトド」と遭遇したのだった!!!(笑)

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トド(60代半ばの)おばちゃんは、ちょうどトドが陸に上がったかのような状態そっくりに展望窓あたりで寝っ転がって自宅の部屋にいるかのように思いっきりくつろいでました(笑)

なんか自由で平和だなぁ…

休憩を挟んで何回か繰り返し温泉を楽しんでたトドおばちゃんが帰った後、今度は30代くらいの若い母親に連れられて可愛い姉妹が入って来ました。お姉ちゃんは小学生低学年、妹は幼稚園児くらい。女の子たちはとても可愛い。温泉が熱くて なかなか入れずにいたら急に歌を歌い出した。可愛い歌を聴きながら温泉に浸かる私。何この幸せ感!(笑)

女の子たちも自由で平和だなぁ…

相方を待たせて一人で2時間近く温泉を堪能した私(もちろん着替えも含めての所要時間)小さな女の子たちはBGMのように飽きずに ずーっと歌ってる。お姉ちゃん、妹、お母さんの三人で楽しそうに歌ってる。もう貸切状態だから好きに歌ってて(笑)この平和な可愛い家族は家でも皆んなで歌っているんだろうなぁと、ほのぼのしてたら、あれ?この歌?どっかで聴いたことある??と、なった。楽しそうに歌ってた歌は…

「サンキュー♪ サンキュー♪ サンキュウデー♪」

こ、これは…!?

と思ったら妹の方が

「おっかいもの〜が〜5パーセントオフ〜♪」

と大きな声で歌ってた(笑)

この姉妹は いつもお母さんと「アピタ」で買い物してるんだなと微笑ましくなった。普段は5%OFFでお買い物をしてるけど、たまの休みに家族で贅沢に温泉旅行。可愛い庶民の生活が垣間見られて心和む時間に。

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▲心和む時間をありがとう39姉妹(面白い歌をサンキュー!笑)▲

旅のおまけの長良川花火大会

下呂温泉の上り下り電車の本数はそれほど多くはないので(1時間に1〜2本)あまり遅くならないうちに帰ることに。始発で出て来たので二人共ぐったり。帰りの車内は鈍行に揺られて景色どころではなく居眠り三昧。乗り換え数回。前回は贅沢に「特急ワイドビューひだ号」だったので名古屋まで乗り換え無しだったけれど、今回は鈍行列車旅。岐阜あたりで「本日、長良川花火大会が開催されますので車内が大変混み合っております」というアナウンスが入って初めて気づく。まさかの花火大会!!

下呂では花火まで見てたら帰れなくなってしまうということで、わざわざ見送ったくせに長良川で花火が見られるチャンスに心が躍ってしまった。滅多に無いチャンス。どうする?どうする?とか言いながら二人共に足は勝手に花火会場へ(笑)東京でも花火が大好きで よく見に行ってた二人だった。こんなチャンスでも無ければ長良川で花火なんて見に行こうとは思わなかったと思う。都内の河川敷の花火大会の混雑ぶりを知ってるだけに、この有名な花火大会がどんな混雑になってしまうのか想像が全く出来ずにビビリながらも、それでも花火が見たくて帰りの電車の心配を残しつつ会場まで行くシャトルバスに勢いだけで乗ってしまったのだった!ああ、全くの無計画!

長良川花火大会は駅から少し離れた河川敷で花火を打ち上げるため駅からは全く見えないらしい。(おそらく)毎年、花火大会専用シャトルの送迎バスが岐阜バスから運行されてるようだ。会場まで行こうとしてる花火見物客が長蛇の列に行儀良く2列にきちんと並んでるのには驚きだった。何てお行儀のいい日本人、いや、岐阜市民!

乗車料金 大人210円、乗車時間10分。

会場近くに行く市バスも別にあるようだが、このシャトルバス乗務員スタッフらが駅構内で じつに手際よく誘導をしていてサクサクと大勢の花火見物客を運んで行く。毎年恒例で手慣れているのか、あっという間に大勢の人間を効率良くさばいて行く様は見てて気持ちいいぐらい。来年、長良川花火大会に行こうと思ってる方、安心してシャトルバスに並んでいいと思う(笑)

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▲岐阜バスうちわの無料配布(大量に配っててお金かけてるなーと思ってたら…シャトル送迎でザックザクお金が入ってくる仕組みに大納得!笑)▲

行くと決めてから慌ててスマホで情報を色々調べてみると、やはり混雑する様子ばかりが目に付く。バスを降り河川敷に向かう堤防へ上がってみると…

あら?

ゆったりしてない?

花火会場ど真ん中じゃなくても充分この辺りでも構わないんじゃない?と、いうようなスペースが たっぷりある。何だろう凄く見やすい。大勢の人の頭で小さい背丈の私が損をすることなく普通に見られるスペースだらけ。よくよく見ると自分の部屋でくつろいでるような格好で芝の上を寝転がってる人が多い。ぎゅうぎゅう詰めでも無い。確かにメイン会場付近からは少し離れてるものの花火全体はよく見える。東京なら、とっくに大勢の人で埋まってる様な場所。びっくりするほど余裕のスペース。

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▲長良川河川敷はメイン会場から少し離れれば ゆったり花火が見れます▲画像では小さめに見えますが肉眼で見る花火はもっと大きく見えてます

都内で花火見物の場所取りの凄まじさや競争率の高い戦いをして来た人間からすると長良川花火大会はめちゃくちゃ穴場な気さえする。このゆったりさは都内じゃ考えられない。これで30万人?これで大混雑?いやいやいや、ゆったり見れました。人と人とが、ちっともぶつかりません(笑)都内の狭い河川敷は50万人ぐらい来場するらしいので本当に穴場としか思えない!おまけに長良川花火大会は有料席などがないので見る場所は自由!

愛知、岐阜、三重の東海三県下は車移動が常識。おそらく車での花火見物の移動は大変な混雑になってる。たまには電車移動も楽しいもの。せっかく見つけた穴場なので来年もまた電車に乗って花火を観に来よう(…かな)

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▲地元の おばちゃんたちの会話入り!地元感たっぷり(笑)▲

こうして終電間際まで楽しんだ日帰りミニ旅行。

今度は何処へ行ってみようか?

ほんの少しだけ、こっちに住んでることを楽しんでみてもいいのかもと6年目の夏の私の心の変化。リニアもやって来るし東京で暮らさなくてもいいと思える日が、そのうちやって来るのかもしれない。

久保マシン(くぼちー)


<↓おまけ>

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▲デザリング準備不足でWi-FiモデルiPadを持参するも意味がない(笑)▲


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