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突然、子どもの視界に黒い点。スターガルト病とは?

こんにちは。
窪田製薬ホールディングス広報の市川です。

窪田製薬は、”世界から失明を撲滅する”ことをミッションとし、目に関わる創薬、デバイス開発を行っています。創業者の窪田については(こちら)にまとめてありますのでご覧ください。

創薬業界は、専門用語も多く、一般的にわかりにくい業界であることから、このブログでは、できるだけ噛み砕いた情報を発信していきます。少しでも窪田製薬の開発に興味関心をお持ちいただければ嬉しい限りでございます。
(正式なリリースや最新情報はコーポレートサイトをご覧ください。本サイトではあくまでも既に発表した情報をまとめてお伝えしております。)

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今回は、窪田製薬のパイプラインの一つ、スターガルト病とエミクススタト塩酸塩についてまとめていきます。

スターガルト病とは、早い人では学童期から発症する病気で、徐々に視細胞が損傷されていく遺伝性の病気です。視野の欠損、色覚異常、歪み、ぼやけ、「目の中心部が見えずらい」と訴えることもあり、病気の進行と共に、見えない範囲が広がっていきます。

スターガルト病は、「希少疾患(きしょうしっかん)」と呼ばれる患者数の少ない病気ですが、その中でも、8千~1万人に 1 人が罹患すると言われており、米国、欧州、日本において、合計 15 万人弱の患者がいると推定されています。

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なぜスターガルト病が発症するのか。

スターガルト病は、黄斑(おうはん)ジストロフィーと呼ばれる、黄斑部に生じる進行性の病気の一種です。生活習慣などの外的要因に関わらず、遺伝子の突然変異で罹患する病気で、現在も有効な治療法がありません。

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眼球の裏側には、光を感じる神経の膜があり、それが網膜です。網膜の中心には黄斑と呼ばれる、細胞が密集している部位があります。見たり、読んだり、書いたりする機能は黄斑に集中しているのですが、非常に繊細な部位であるため、多くの疾患が生じやすい部位でもあります。スターガルト病は、一般的には、学童期から青年期に発症する病気ですが、中には成人期まで視力低下を自覚しないこともあります。

スターガルト病は、単一遺伝子疾患という、外的要因を含まない疾患なので、多因子疾患に比べると原因遺伝子が明確であるということが特徴です。

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飲み薬で目の治療を。飲むサングラス、エミクススタト塩酸塩とは?

窪田製薬のエミクススタト塩酸塩は、現在スターガルト病治療薬候補として臨床第三相試験という臨床試験の最終フェーズに入っています。
網膜には、脳に映像を認識させるために光を電気信号に変える働きをする「視覚サイクル」と呼ばれる仕組みがありますが、この視覚サイクルは、強い光にさらされると有害代謝産物を生成します。

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この有害代謝産物がたくさん蓄積されると、視覚サイクルの働きに支障をきたすだけではなく、網膜自体が損傷され、視力低下あるいは失明する恐れがあると考えられています。スターガルト病は、この有害代謝物質を排除する酵素に異常をきたしているため発症します。

街でも、遺伝性視覚障害の方が非常に濃いサングラスをしている姿を見たことがあるかと思いますが、窪田製薬の開発している「エミクススタト塩酸塩」は、「飲むサングラス」とも呼ばれ、この有害代謝産物が排出される仕組みを抑制することで、病気の治療に効果があると考えられています。

エミクススタト塩酸塩と窪田製薬の歩み

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化合物から新薬として市場に出る確率は、約1/30,000と言われています。そこから臨床第三相試験にまで進むと確率は1/2、格段に市場に出る確率は上がりますが、それでもコインの裏表どちらが出るか、と同じ確率で成功も失敗もします。

コイン

エミクススタト塩酸塩は、2016年までは、ドライ型の加齢黄斑変性の治療薬候補として開発していました。加齢黄斑変性は、スターガルト病と同様に、目の中央から見えにくくなる疾患で、欧米の失明原因の第一位となっています。日本にも数多くの患者がいることもあり、多くの期待が寄せられる開発でしたが、残念ながら、加齢黄斑変性の治療候補薬としては、求められる結果を得ることができませんでした。

※エミクススタト塩酸塩の旧名は「ACU(アキュ)-4429」。

失敗とデータを胸に、次の挑戦へ。

新薬が認可されるには、安全性薬効という二つの項目をクリアしなくてはいけません。エミクススタト塩酸塩は、加齢黄斑変性の臨床第 2b/3 相試験で、 安全性の項目はクリアしていましたが、薬効が認められませんでした。

この臨床試験で、エミクススタト塩酸塩は、仮説の根本となっていた視覚サイクルを抑制することが可能であることを証明することができました。しかし、加齢黄斑変性は、多因子疾患であることから病気の原因の特定が難しく、視覚サイクルを抑制するだけでは、病気の進行を抑制することはできなかったのです。

しかし、508名の被験者に対し、24ヶ月間の投与を行い、視覚サイクルを抑制することができ、またその安全性が認められたということは、非常に重要なデータです。現在エミクススタト塩酸塩は、単一遺伝子疾患のスターガルト病への候補薬として開発を進めています。2018年11月からは、臨床第三相試験に入り、約世界10カ国30拠点で臨床試験を開始し、約160名の被験者登録を見込んでいます。

希望

「イノベーションに前例はない」

社長の窪田が常に言っている言葉の一つです。
絶対に成功するという確証は、最後の最後、成功した瞬間までありませんが、これからも世界から失明を撲滅するために、研究開発に取り組んで行きます。

窪田製薬ホールディングス(4596)
https://www.kubotaholdings.co.jp/index.html

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