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世界の広さオレンジ一個分

海外に行ったことがない。というよりそもそもの旅行経験が少なくて、国内ですら北海道から出た回数は数える程度だ。中学の修学旅行で行った東北。高校では大阪・京都・奈良・東京に、千葉(という名のディズニーランド)、神奈川(という名の横浜)。プライベートでは小学生のころ家族で行った大阪、卒業旅行で行った京都。せっかくプライベートなのに修学旅行先ともろ被りで、僕にとっての日本はこの範囲しかないのではないかとすら思ってしまう。本当に47もある?あとは埼玉にも数回(翔んで)行ったはずだが、祖父母の家を訪ねただけなので旅行という感じはしない。

そんなだから海外なんてもってのほか。これから先も行くことはあるのだろうか。なかなか現実味がない。飛行機の乗り方を忘れた。


旅行番組とか海外の映像を見るのは好きで、時には「世界の車窓から」を延々と見続ける日もあったりする。だからあらゆる国々のスポットやグルメや魅力を全く知らないわけではない。
それでも「海外、行くとしたらどこへ行きたい?」というありふれた話題が出たとき、僕の頭に浮かぶのは結局幼少期の脳裏に焼きついた場所だったりする。

一つはクロアチア。
小学生のとき、クラスの一人ひとりに国が割り振られ、その国について調べたことをまとめて発表するという授業があった。それで僕は当時名前も知らなかったようなクロアチアという国について調べて、やたら詳しくなってしまった。アドリア海に面していて、首都はザグレブ。ダルマチア地方はダルメシアン発祥の地。うん、今でもちゃんと覚えている。
あのとき調べたこと以外はあまりに何も知らないのだけれど、それでもいつか行ってみたいと思い続けている。確か公用語としてクロアチア語っていうのが存在するはずだが、僕は頑張れるだろうか。

また一つはデンマーク。
幼少期にレゴブロックで遊んでいた人はたくさんいるだろうが、毎月雑誌が送られてくるレゴの公式クラブ「レゴクラブ」に入っていたり、レゴの歴史を網羅した公式書籍「レゴブックミュージアム」を読破していた子どもは僕のほかにどれくらいいるのだろう。創業者オーレの出生地、すなわちレゴ発祥の地こそデンマークだ。もちろん行ってみたいのだけれど、行ったところで僕には「レゴだいすき」の一本槍しかない。果たして得られるだろうか、Hygge(ヒュッゲ)。

あとはフランス。
ここに来てベタではあるが、別に凱旋門とかエッフェル塔を見たいわけではない。僕がクロアチアに詳しくなった例の授業で、フランス担当だった子が集めた資料を目にした。そこにはオレンジをチョコレートでコーティングしたお菓子が載っていて、当時の僕にはそれがえらく美味しそうに見えたのだ。今でもその写真を鮮明に覚えている。大人になって、それが日本でも買えるだろうことはわかっているのだけれど、なんとなくその事実に触れたくないと思う。あのオレンジは幼少期の僕が抱いた「海外」であり「世界の広さ」そのものだから。

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