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高千穂呪術廻戦物語

以前記載した、三毛入野命と鬼八の戦い。

この中でも書いてある通り、神武天皇との東征の際、日向へ戻られた三毛入野命は神武天皇の兄である。

現在日之影町には、三毛入野命の伝承地が多い。
その、【日之影】と名付けられた由来として、鬼八という鬼が高千穂郷において、悪さをしていて、村人も困っていた。

鬼八は三毛入野命が向かっているという情報を得て、法術を使って大雨を降らせたという。

鬼八は色々な名を持っており、山野を駆け回ることから、【走健】(はせたける)とも言われ、また鎌倉期に書かれた高千穂神社の最古の古文書【旭大神文書】には【きはちふし】(鬼八法師)と書かれている。

鎌倉時代は仏教、神仏習合全盛期であろうから、旭大神文書にも書かれている内容、また室町時代に書かれた【十社御縁起】にも【きはちほし三千王】と書かれていることからも、仏教的でおり、修験者、山伏である可能性がある。

鬼八は古くから住む地元の者で、土蜘蛛説もあるが、以前書いたように、鬼八伝説にはいくつもの時代のストーリーが合わさって作り上げられた人物と私は思うので、そのような説があってもおかしくないと思う。

さて、話は三毛入野命と鬼八の戦いに戻ろう。
足止めをくらわせようと、大雨を降らせようと呪術を使った。

これに困った三毛入野命は天に祈るのである。
そうすると、雲間から影が差し込んできたという。

鬼八法師率いる山伏集団は雨を降らせる祈雨法を使う。
これは、密教系や修験道にもみられる孔雀明王の呪文であり、密教を代表する真言宗では空海、天台宗では最澄が祈雨法を用いている。そのほかにも水天法、愛染法などがある。

これに対し、三毛入野命は天に向かって祈る、止雨法を使った。

密教における水天は戸隠山を本拠地とする戸隠権現の使者でもあるという。

高千穂神話の中の岩戸神話において、手力男命は岩屋戸を投げ、1つは戸隠へ飛んだと云われているが、なぜ戸隠!?と私は疑問に思っていたのだが、考察するに、こういった修験者が動いたということではないだろうか?何かしらの繋がりのある人物が、この2カ所を繋いでいると私は考える。

高千穂は祖母山をはじめ、諸塚山等、熊野系を始めとする修験者もかなりいたと思われる。

鬼八が住んでいたと云われる押方地区、乳ヶ窟は洞窟になっていて、ここは古くからの修験の霊場であったのではないかと考察される方もいる。

実際、高千穂神社も熊野神社に対し、灯明料を納めていたわけである。

地頭である高千穂氏が熊野社領家職として管理していたのだが、徐々に灯明料も減らしはじめ、熊野社とも関係がギクシャクしていく。

室町時代、功績を讃えられた芝原又三郎は懐良親王より領地跡安堵の令旨をいただき、ここ高千穂は元々三田井氏(高千穂氏)のものであるとし、浦上別当家の指図は無用とした。

ついに、芝原又三郎は岩戸氏に命じて浦上湛賀を攻めさせて、岩戸野方野にて殺している。

野方野にある観音堂

この浦上家は熊野の修験者でもあったという。

さて、三毛入野命の子孫としては、大分の宇佐八幡の四詞官と言われている大神とも関連がある。

また、三毛入野命の家来の中にいた田部氏もその四詞官の1人であり、大神氏は奈良県の三輪信仰として有名な大神(おおみわ)神社からの流れであり、三毛入野命の祖母と言われる大神杜女は巫女であり、奈良の大仏建立の際にも宇佐八幡の託宣により、協力し外従五位下にも叙せられなどし、禰宜に昇格するほどであったが、(三毛入野命との時代背景がバラバラだが、昔の神社の祭神は三毛入野命ではなく正一位様であった)呪詛をしたと疑われ日向へ流される事となった。

これは奈良時代の話でもあるし、縄文、弥生時代からも呪い(まじない)は行われてきたのであるから、人間生きていく中で、呪術というものは切っても切れない関係であったと思う。

大神氏は巫女的な氏族でもあり、武力もあった。その氏族が高千穂の豪族高千穂氏に子孫がいないからと大神氏の長男が養子となり初代高千穂太郎として治める。しかしながら、長男が養子に来ることは珍しいと思われ、これは支配されたと考える方が理解しやすいと思う。

これは、最終考察にも、書いたのでご覧いただきたいが、シャーマン的な巫女である大神氏、またそれを支える呪術師である田部氏。それに対し、修験者、山伏系であった鬼八。その戦いは武力的にも強い大神氏が勝ったのだった。調伏の儀も使い、従わせたとも考えられる。実際神武天皇はそういう事を行なっている。

田部氏ともう1人の家臣丹部氏は日之影大人へ移り住み、鬼八を倒した功績でカンスイ石の数珠を授かったということで、神仏習合が色濃く、本地垂迹説が全盛期でもあったであろうから、神と仏をもってして鬼八を倒したのであろう。

いや、実は数珠だけに元々は鬼八法師の物で、勝者としてそれをもらったとも考えられる。可能性はいくらでもあるものだ。

つづく

参考文献
『呪術廻戦 芥見下々著 集英社』
『【図説】日本呪術全書 豊島泰國著 原書房』
『呪術の日本史 加門七海監修 宝島社』
『呪いと日本人 小松和彦著 角川ソフィア文庫』
『神孫 豊後大神氏 木村高士著 新人物往来社』
『甦れ八幡神【八幡本宮】宇佐神宮と大神氏 小川進一著 文芸社』
『高千穂皇神の御栄え 後藤勝美著 高千穂神社総代会』
『高千穂村々探訪 甲斐畩常著 甲斐畩常発行』
『怨霊になった天皇 竹田恒泰著 小学館』



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