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高千穂呪術廻戦物語その3

さて、今までは高千穂に伝わる神事『猪掛祭』の説明。これが、呪術師とどう関係があるのかを説明してきた。

それでは、鬼八再生術、『猪掛祭』を始めた氏族は一体だれなのだろうか?

これは、私の考えであるが、猿田彦と天鈿女を祭人とする荒立神社、ここ周辺を本組地区と言うのだが、ここには室町時代の十社御縁起によると、神社の後方の山を神呂木山といった。ここは男の神様がいたというが、考古学的に発掘すると、土器が出てくることから縄文時代より生活していた形跡もあり、また高千穂町立病院付近も本組地区だが、石棺が多く出土され、石棒など祭祀に使うであろうものも出土している。そして、その御縁起には夫婦の鬼が住んでいた。ということなのである。

ここは高千穂神社の二の祝とも云われ、ここに住んでいる興梠氏は山氏と言われ、古きより住まわれたということから、鬼八再生の儀を行っていたのではないか!?興梠氏も武力もあったと思うが、シャーマン的な巫女も存在していたと思う。それが、鬼八の妻である、うのめ御前ではなかったと私は思っている。実際、巫女は験者(山伏)と夫婦になることが多かったという。修験者の鬼八と巫女のうのめということになるのではないだろうか。
現宮司の興梠氏より、以前猪掛祭は荒立神社で行われていた、道具も荒立神社のものを使っていたと聞いたことがある。

このことからもあながち間違ってはいないのかもしれない。

そもそも、日本の歴史においても呪術師が活躍した話も多い。

13世紀には2度にわたる蒙古襲来、元寇があったのだが、蒙古調伏の祈祷が全国の神社仏閣で行われて、暴風雨によって撤退させたとされている。

また、戦国時代にも山陽、山陰を支配していた尼子氏と毛利氏の間で呪術合戦が行われている。

鎌倉以降の貴族社会から武家社会となると、呪術師の立場も変わるが、戦をサポートする側となっている。

近年では、太平洋戦争において、アメリカのルーズベルト大統領を呪詛する祈祷が行われて、開始より3ヶ月後に脳溢血で亡くなったとされる。

時の権力者は、それが達成されると、今度は祟りとの戦いに一生を費やすこととなる。

早良親王、崇神天皇、菅原道真、平将門など。
未練を残したまま、また憤死した後、天変地異や疫病、皇族の死が続いたりすると、それは、自分が倒した相手の怨霊であると考えられた。

そこで、それを神にしようと御霊文化が生まれるのである。

高千穂神社の周りには水神様がいくつかあるが、これは鬼八を鎮める結界なのでは!?と考えている。

実際、猪掛祭もそういった意味合いもある。
再生の意味もあることから、五穀豊穣の意味もあるだろうし、祟りを恐れ魂を鎮める為の祭礼でもあるのだろう。

どちらにせよ、今でも続いているこの祭事が、いかに今の高千穂にとっても重要な儀式であり、呪術祈祷であるのだろうか。

道の駅高千穂の近くには三田井氏が構えた淡路城がある。
この敷地内には稲荷神社があり、荼枳尼天と言われている。

荼枳尼天は密教の神の一つで、人の死を6ヶ月前に予知し、亡くなるとやってきて死体を食べると云われる夜叉で、これを祀ることによって、並外れた利益を得ることができるとされていた。狐信仰が日本にはあった。古くから吉凶を占ったり神霊視する信仰があったという。

その狐の力を得て、自分達を守護し、強力な力を得ようとしてきた。

高千穂でもそんな信仰があっての城付近の稲荷さんなのかもしれない。

よく、家臣が殿様などに讒言をし、それを信じた殿様が、謀反の疑いをかけ、有能な家臣を殺めてしめう事が歴史を勉強する上で、よく目にする。

権力をもつと、身内との争いが始まるのは常であり、常に恐れている状態になる。

その家臣は、実は隠密であり、呪術師であり、その恐怖を増幅させ、調伏していたとも考えられるのではないかと思う。

三田井家の最後の兄弟達も、同じようなことで、有能なといわれた弟を殺める。

殺させた本人も酒に溺れて、身を滅ぼし、三田井家は滅んでしまう。

以前は、何故突然!?と思ったものだが、実は仕組まれたものだとしたら、納得もいく。

武家社会になると、仏教色が強くなるのも、やるかやられるかの時代だから、神仏にすがりたくなるのも分かる。

今回、鬼八対三毛入野命の呪術廻戦を書こうとしたら、思いの外、呪術がどのように関わってきたのかを考察する機会となってしまった。

現在のウィルスのことで、感染した人=穢れという認識が日本人に多いということが顕になったと思う。

この呪縛から解き放たれるには、もしかしたら、誰かが祈祷しているのかもしれない。

早くその日が来る事を願っている。
また、現代の呪詛として、SNSの普及により、身も知らない人を、簡単に攻撃する言葉を発信し、場合によっては死まで追い込むことがある。

言葉とは、言霊であり、SNSも使い方を間違えると呪詛になり得るという事を認識して、責任を持って発信すべきと思う。

そんな私も今年も米が上手くできるように、願うのであった。

参考文献
『呪術廻戦 芥見下々著 集英社』
『【図説】日本呪術全書 豊島泰國著 原書房』
『呪術の日本史 加門七海監修 宝島社』
『呪いと日本人 小松和彦著 角川ソフィア文庫』
『神孫 豊後大神氏 木村高士著 新人物往来社』
『甦れ八幡神【八幡本宮】宇佐神宮と大神氏 小川進一著 文芸社』
『高千穂皇神の御栄え 後藤勝美著 高千穂神社総代会』
『高千穂村々探訪 甲斐畩常著 甲斐畩常発行』
『怨霊になった天皇 竹田恒泰著 小学館』
『高千穂の民家他歴史資料 小手川善次郎著 小手川尚一郎発行』
『神々の坐す里 高千穂の神社 高千穂商工観光課監修 高千穂町観光協会発行』


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