レーズンチョコはお好き!?

#フォロワーが5秒で考えたタイトルからあらすじをつくる

すずっちさんが考えた題名



「レーズンチョコは好き?」

その一言で俺達の人生は変わった




その日も普段と変わらない1日だった

ダラダラと授業を受け、友人とフラフラとふざけた帰り道

「同じクラスの…」

信号待ちをしていた彼女は学年1の美少女

勉強もスポーツも完璧…だったら漫画みたいだが、極々普通

「あれ?同じクラスの」

知り合いを見つけた時の笑顔を見せる

クラスでも挨拶程度の仲だが純粋に嬉しかった

「ね、レーズンチョコは好き?」

唐突に差し出されたレーズンチョコ

「まあ好きだけど…」

受け取りを躊躇した

今はバレンタインではない

「あのね…」

恥ずかしそうに何かを言おうとする彼女

そこで一旦記憶は途切れた

「あ!目を覚ました!」

気がつくと見慣れぬ天井が見え、泣きそうな両親の顔

「先生を呼んでくる」

父が出ていく

「あんた事故にあったんだよ」

母の説明によると、俺の目の前に看板が落ち、一緒にいた彼女が頭を打ったと言う

「女の子の方は重傷みたい。頭蓋骨陥没だっていってた」

息子の無事は嬉しいが、息子のクラスメイトが重傷だと言う事実に母は複雑な心境で

「あの子も無事だと良いんだけど…」

いや無理だろう

頭蓋骨陥没だぞ

死んでるって

「あ、いた!」

そう思っていると当人が現れた

「いやー驚いたね!いきなり看板が降って来るなんて!警察も取り調べしてたけど建築法違反の可能性があるって!」

「え?あなた大丈夫なの?」

いつもの笑顔だが、頭には痛々しい包帯

口からも血が垂れ、腕にも包帯

「いえ満身創痍です。でもやらなきゃいけないことがあって」

グシャグシャになった包みを差し出す

「これ、手作り」

頬を赤らめた彼女が差し出し、母が歓声を上げる

だから今はバレンタインじゃない

「素直な感想を聞かせて欲しい」

母はお邪魔虫は退散とばかりに廊下に出る

きっと母の性格からして盗み聞きをしているのだろう

「何で?」

と言うか好きな奴にグシャグシャの包みを渡すか?普通

「あ!ごめんなさい!ちゃんと言ってなかったね!実は好きです」

うっかりな告白

「あ、同級生の…」

同級生のイケメンで女子に人気のある奴の名前が出る

ですよねー

俺みたいなモサイのはアウトオブ眼中ですよねー

「彼レーズンチョコが好きって言ったからレーズンチョコと一緒に告白しようと思って」

「だったら俺に何の用?」

100%試食係だろうけど

「私レーズンチョコ嫌いだから試食して欲しいの」

上目遣いでおねだり

はい可愛い

好きな子から頼られるのは正直嬉しい

しかし好きな子が他の男と結ばれる手伝いは正直嫌だ

「まあ試食なら」

断らない俺テラバカス

口に入れると

「うんまずい」

そういえば彼女は家庭科が一番苦手だと言ってたな


チョコは油分が分離してるし、レーズンは何か変なコーティング

「キャラメリゼ」

料理ドヘタが挑戦するな!

怒鳴りたいのを堪え

「市販をプレゼントした方が良いと思う」

しゅんとした彼女が俯く

「うん?」

俯いた彼女の頭部の違和感

「君…頭」

「頭?」

額から血が流れる

「あーあーあー!またか…」

父と一緒にやってきた医師がため息を吐く

「どうしました?」

「たまになんですけど、こうやって死んだのに気付かないで動き回ることがあるんです」

「医者なのに超非科学的な」

「仕方ないでしょう?ホラ!ここ見て!」

彼女を振り向かせる

彼女の後頭部には看板の角の形にへこんでいた

「おおう…」

見ていて気持ちの良いものではないが

「これで生きてるとは到底思えないでしょ?」

「ええ…まあ」

返事をしながらも彼女をチラ見する

「そうですか…私死んじゃったんだ…」

彼女も落ち込んでいた

「強い心残りがあるとこうなっちゃうんです。脳が腐るまでに解消して成仏させてあげてください」

「もしも腐ったら?」

「無駄に臭いです」

それは嫌だ

「私の強い心残り」

俺が食ってた物

「レーズンチョコと告白だな」

彼女は頷く

「俺、手伝うよ。手作りレーズンチョコ」

俺の家庭科の成績良いしな





それから俺達はレーズンチョコを作った

とにかく彼女は一生懸命だった

一生懸命だけど、昨日今日で簡単に出来るわけがないくらい彼女は料理に向いてない

神様は彼女に料理の才能の代わりにこの容姿を授けたのだろう

「やっとできた!」

うん

人間が食べても大丈夫なのが出来たね


翌日、校舎裏に奴を呼び出して告白してもらった

これで告白して相手がOKを出したら彼女は…

彼女は…


「本当に臭くなる前で良かったぁー」


暫くして奴は頭を下げ、彼女も頭を下げ笑ってこっちに走ってくる

肝心のチョコは持ったまま

「振られちゃった」

涙を堪え、精一杯笑う

「彼、ホラーが苦手なんだって」

そっちかよ!

「折角君が手伝ってくれたのに」

彼女の瞳から涙がこぼれ落ちる

「悔しいなあ。私が生の人間だったら…」

生身な

生の人間てなんだよ

「それ頂戴」

ぶっきらぼうに手を出し、レーズンチョコを貰う

うん

やっぱりまずい

見張ってたのに何でレーズンに謎のコーティングした

「キャラメリゼ」

何でだよっ!

「ぶふっ!旨かった…」

「嘘ばっかり!」

泣き笑いの彼女の体が光る

「未練がなくなったんだ」

彼女は成仏するんだ

「今までありがとう」

最高の笑顔の彼女に

「俺!実は君の事…」

好きだと言おうとしたが、彼女の体から光が抜けていった

「好きだった…」


ピクッ

ピクピクッ

彼女の指先が震える

まさか奇跡が起きた?

彼女は生き返った?

「あ"ー…」

涎を流し虚ろな瞳の彼女

「レーズン?チョコぉー」

大口を開けた彼女は俺の顔に近付き


ブチブチブチッ

嫌な音と共に食いちぎる

悲鳴をあげる間もなく俺を押し倒し、肉を食いちぎる

「レーズンチョコはぁおずぎぃー!?」

血にまみれた彼女の姿が最後の光景だった



中国の魂魄の思想



魂は天へ昇り、魄は地へ帰る

この時、魂は「神」に、魄は「鬼」と名を変える


「思いを遂げた魂は確かに成仏するが、魄は鬼になり、人を襲う。だから成仏しそうになったら逃げなさいよ。日本のゾンビって中国のゾンビと同じ構造だからね」

あれ程医師に言われたのに

そもそも彼女の頭に看板が落ちなければ

そもそもあの看板が建築法違反でなければ

いやそもそもレーズンチョコ


「レーズンチョコはお好き!?」


嫌いになった




レーズンチョコはお好き!?




終わり




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