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あなたがしてくれなくてもに学ぶ「同性に嫌われる女性像」

あなたがしてくれなくても

くだらのドラマノート

【あらすじ】
32歳OL・みちは建設会社の営業課で
働き、平凡だが不自由のない生活を
送っている。夫・陽一とは結婚して
5年目だが仲も良い。しかし、
レス歴2年。毎晩同じベッドで
寝ているが、陽一は決してみちに
触れようとはしなかった。
「魅力が足りていないのかも…」と
スキンケアなど努力を重ねるも、
約束してもすっぽかされる日々。
陽一はみちを愛していたが、いざと
なるとプレッシャーを感じて
逃げるようになっていた。
一方、みちの上司・新名は優秀で
ルックスもよく、ファンも多い
愛妻家。理想の女性である楓と
結婚し、献身的に支えているものの
楓はかなりのバリキャリ女性。
プライベートを犠牲にして仕事に
没頭しており、新名をぞんざいに
扱ってしまうことも…。
均衡が取れていたはずの二組の夫婦。
しかし、みちと新名が共通の悩みを
抱えていることに気がついた時、
少しずつ均衡が崩れていく…

ホームページ参考

今の時代このような分け方をするのは
好ましくないのかもしれないが、
やはり同性に嫌われる同性というのは
ある程度存在するように思う。

中でも、「女性に嫌われる女性」と
聞くと、すぐにイメージが浮かぶ人も
多いのではないだろうか。

「あなたがしてくれなくても」には、
それを体現したような様々な
キャラクターが登場してくる。


《北原華》

武田玲奈さんが演じた華ちゃんに
キャッチコピーを付けるのなら、

「打算的な恋愛体質」

といったところだろうか。
華ちゃんはかなりの自信家だ。
新名とお近づきになれる可能性を想定し
社員旅行に2万円の下着を新調するし、
不倫も辞さないスタイルに驚くみちに、
「説教とかいいんで」と平然と言う。

それでいて、いざみちと新名が互いに
惹かれ合っていることを知ると、
思いのほかあっさりと身を引いて、
次の相手を探しに行く。

彼氏と喧嘩して、みちの家で泣いて、
ご飯を食べたかと思ったら、勝手に
住所を教えていた彼氏が迎えに来て、
あっさり帰って行き、家の前でキスを
するしないのやりとりを始める。

最終話で、妊娠した華が新名に
「ニーニャ様の子どもじゃなくて残念です」
と言ったシーンにはさすがにゾッとした。

恋愛体質で、自分の得になると判断した
相手にしか媚びない。典型的な女性に
嫌われるタイプの女性だ。

この手のタイプは、誰に何と言われても
まったく響かないことが多い。誰かが
「倫理観がない」と言おうものなら
「羨ましいの?僻んじゃって可哀想」
とか普通の顔で返しそうだ。
味方にいれば心強いけど、敵になると
厄介だし、夫や恋人を近付けたくない。

そんないっそ清々しいほどの華ちゃんを
演じきった武田玲奈ちゃんは魅力的だった。


《三島結衣花》

さとうほなみさんが演じた
結衣花にキャッチコピーを付けるなら、

「体育会系トラップ女子」

といったところだろうか。
結衣花には化粧っ気があまりない。
さらに、夜道を気遣った陽一に対して、
「元ガードマンなんで」と返すほど、
女性を意識させないような言動が多い。

その上、陽一に対して
「ちゃんと奥さんのこと見てます?」
「結婚して妻になったら、夫以外誰にも
 見てもらえなくなるんですよ?」
と奥さん側の立場から意見するシーンが
かなり見受けられた。ボーイッシュな
体育会系でなおかつ女子の味方。

…に見えるが、全然違う。
奥さん側に立ったような発言をしながら
妻がいる陽一にキスはするし、
前の不倫相手の奥さんに訴えられた最中
既婚者の陽一に抱きつく。

「覚えておいた方が良いですよ?
 不倫は妻を変えるって」と言いながら
陽一と身体の関係を持つ。それでいて、
陽一の元を立ち去るときに言った台詞が
「奥さん大事にしてくださいね」だ。
どの口が言ってるの…?と視聴者の
大半が思ったに違いない。

一見、華ちゃんのようなタイプが1番
同性に嫌われそうなイメージだが、
本当に厄介なのは、結衣花のように
最初は女性を意識させないような
振る舞いをしておきながら、ここぞと
言うところで女性をチラ見せする
タイプではないだろうか。

「あたしら男友達みたいなもんだから」
「こいつのこと男だと思ってないから」
「彼女ちゃん可愛いのによくこいつと
 付き合ったよね笑」
みたいなテンションで来る夫や彼氏の
女友達ほど信用できないものはない。

これまた、この時代にはそぐわない
言い回しかもしれないけれど、男性が
男勝りな女性がふと見せる色っぽさに
弱いのは紛れもない事実だ。

ボーイッシュと色気を、見ているだけで
腹が立つほど良い塩梅で演じきった
さとうほなみさんの演技が光りすぎてた。


《吉野みち》

奈緒さんが演じたみちに
キャッチコピーを付けるとすれば、

「放っておけない儚げ女子」

といったところだろうか。
陽一とレスになって早2年。
自分に魅力がないのかと思い悩む姿は、
視聴者目線から見ても支えたくなった。

しかし、第10話のラストあたりから、
みちに違和感を覚えはじめた人も
多いのではないだろうか。

陽一の事で悩みながらも、同じ悩みを
抱えていたことで、少しずつ新名の
優しさが拠り所になっていたみち。

しかし、お互い離婚したにも関わらず
第10話のラストで「1人で生きていく」
決意をしたみちは、新名からの告白を
断って、立ち去る。

この時点で、
「新名の優しさにつけ込んだだけでは?」
「陽の当たらない恋に酔っていただけ?」
というみちに対する疑惑が生まれる。

さらに最終回。
新名が自分に本気で想いをよせたことが
1番の要因で、夫婦関係を解消した
新名の元妻・楓の恋愛はもういいという
話を聞きながら、悪びれる様子もなく
「格好いい~」と口にした。
楓は「バカにしてる?」と返すが、
「いやいや、本気で思ってます」とみちは
返し、また数分後に同じくだりをする。

小学校の国語の授業で習った
「少年の日の思い出」という作品の

「そうか、つまりきみはそんなやつなんだな」

というエイミールの台詞を思い出した。
ああ、エイミール…君はあの時、
こんな気持ちだったのね…。

華ちゃんのように分かりやすく媚びる
あざとい子よりも、普段はサバサバと
振る舞いながら、ここぞという時に
女性を出してくる結衣花タイプが嫌だと
思いながらこのドラマを見てきた。

しかし、自立したいと思いながらも
どこか危なっかしくて放っておけず、
自分との関係が原因で夫婦が破綻した
上司の元奥さんに「格好いい~!」と
普通に言えるみちが実は1番、たちが
悪いのかもしれない。

前のドラマでは、自分よりも年上の
気難しい漁師たちを束ねる女社長を
格好良く演じきっていた奈緒ちゃんが
この作品では、1人では立てなそうな
女性を演じているのを見て、
その憑依っぷりには圧倒された。

《新名楓》

この作品で1番同性からの支持を
得るだろう役は、田中みな実さんが
演じた楓だと思う。
キャッチコピーを付けるとするのなら、

「自立したバリキャリ女性」

といったところだろうか。
仕事に対しての志が高く、自身の今後の
キャリア目標もしっかり定まっている。

仕事と家庭に追われて、余裕がなくなり
後輩に強く当たってしまったとき、
「嫌なところが出てる…」と自覚して
謝りに戻るところがもう信用できる。

しかも、義母のお葬式で、みちに対して
「よかったら手合わせていってください」
と言うシーンがあった。いくら自分が
原因で始まった関係だとしても、夫の
不倫相手にそんな言葉を掛けられる
懐の広さはもう人として尊敬できる。

元々は、どちらかというと華のような
あざといキャラクターでブレイクした
田中みな実さんだけど、楓役はこれまで
演じたどの役よりも似合っていたし、
アナウンサーとしての経験からか、
周りに気が回る姿に説得力もあった。
そして何よりも嫌みがない綺麗さが
仕事が出来る女性という役どころに
ハマりすぎていた。本当に綺麗すぎた。

しかし、やはり男性目線から見ると
楓は自立しすぎていて、萎縮したり
寂しさを感じてしまうのだろう。
どちらからも支持を得ることがかなり
難しいことがよく分かる。


《川上圭子》

楓と同じくらい、同性の支持を
得そうなキャラクターが楓の上司で
編集長の圭子だ。
キャッチコピーを付けるのならば、

「頼れる憧れバリキャリ上司」

といったところだろうか。
楓と同じく仕事へのガッツがあり
なおかつ、後輩である楓からの
信頼や憧れも厚い。

新名とのことで仕事も上手く
立ち行かなくなってしまった楓に
編集長が掛けた言葉、

「自分の心壊れてまで一緒にいる
 ことになんの意味があるのかな?」

という台詞は登場人物はもちろん、
視聴者の中にも刺さった人は
多いのではないだろうか。

泣いている楓の背中をさすって、
言いづらいことも伝えてくれる
格好良い上司像がMEGUMIさんに
ピッタリで凄く素敵だった。


お世辞にもギスギスすることは
ないとは言えない女性社会。
そこに存在する等身大な女性を
かなりリアルに描いていたし、
その全員タイプが違うからこそ
没入感があるドラマだった。

リアルな人間関係はもちろん、
自分の憧れの女性像、
苦手な女性像を見付けたいとき
このドラマを見ようと思う。

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