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平成の終わりに振り返る「私のメイド・執事研究とネットと同人誌」 その5 ネット環境の変化(同人誌製作とネット活用) 前編

その4までで、これまでのメイドや執事研究でどのような資料を使ってきたのかを書いてきました。アプローチする資料の方向性は時代が変わっても大きく変わりませんが、ネット環境の変化によって資料へのアクセスのしやすさが劇的に変わったことが、平成の間にあったことだと思います。

同じ観点で「同人誌」という媒体そのものは大きく変わっていませんが、ネットによってその周辺環境は大きく変わったと思います。ここでも、「当たり前に思えること」を中心に、自分が見てきたものや体験してきたことを書いていきます。

同人誌入稿の変化

同人誌を作る基礎的な部分での変化は、直接の紙原稿からデジタルへ移行したぐらいでしょうか。同人誌を作った経験がある友人がいたり、合同誌に参加したりと、自分の同人誌を作る前に一定の知識はありました。

※私の同人誌原稿は、テキスト+図表+イラストなどで構成されています。

●1. 漫画原稿用紙に糊付けして入稿

パソコンは導入されていたので、プリンタで原稿を印刷して、それを漫画原稿入稿用の台紙に糊付けするというアナログなことをしていました。この原稿と、同人誌即売会などでもらった印刷所のパンフレットにある「印刷依頼書」に手書きで情報を記載して、両者を同封して宅急便で入稿しました。

友人から教わった最初の印刷所は都内になかったので宅急便入稿で、その次に別の都内の印刷所には直接持ち込みました。三ヶ所目となるサンライズパブリケーションは東京に支社に持ち込みました。

●2. デジタル入稿

2000年代前半のいつぐらいかに、デジタルデータを早くから受け付けていたサンライズパブリケーション(以降サンライズ)に切り替えました。これにより、原稿もデータ、申し込みもデータで済むという嬉しい状況が生じました。当初は手書きで行っていただいていたイラスト原稿も、この頃にはデジタルデータで受け取るようになっていきました。

あと、一時期のサンライズは決済手段に、クレジットカード・楽天市場経由がありました。カード決済でお金の支払いが延期でき、同人イベントで頒布した分でも支払える状況なので、お金があまりない頃には助かりました(今は公式サイトでのクレジット決済を使っています)。さらに、楽天市場経由なのでポイント還元される状況でもありました。

同人誌即売会申し込みの変化

基本的に同人誌即売会への申し込みも、上記のように「アナログ→デジタル」でした。

●1.手書き・郵送

2000年に初めて申し込んだコミケや、2004年から参加し始めたコミティア、これに制服系の帝國メイド倶楽部を加えて、ほとんどが郵送での申し込みでした。申込書をアナログで入手し(コミケは申込書を買う、コミティアはイベント会場のチラシやネットでダウンロード)、お金を振り込み、その領収書や支払いが分かる情報を添えて申し込んだように記憶しています。

●2.デジタル申し込み

2006年ぐらいに、コミケの申し込みでデジタル受付する https://portal.circle.ms/ が加わりました。コミティアなども対応して、circle.msが対応している同人誌即売会は、こちらでしか申し込んでいません。

(A) サークルカットを手で加工して糊付けしなくて良い。

(B) 申し込みから決済完了まで、家で完結する。

(C) 過去の申し込み履歴が残っており、過去の申込番号やサークル情報を呼び出せる。

(D) コミケの当落通知をネットで教えてくれる。郵送より早い。

これが出た時は、とても嬉しいものでした。今にして思うと当たり前に見えるかもしれませんが。あと、コミケの当落発表日時の18時は繋がりにくい状況もあったと思いますが、メールの事前登録で教えてくれるのも良い改善でした。

ネットの活用(アウトプット編)

私が初めて買った同人誌はアニメ雑誌の同人誌通販欄経由でした。そんな時代から変化し、自分が同人活動を始めた頃にはネットが始まっていたので、ネットがメインになります。資料のインプットは既に書いているので、情報のアウトプットメインにて。

●1. ホームページの時代

2000年ぐらいに同人活動を開始し、ホームページでの情報発信を始めました。ただ、あくまでもアウトプットは同人誌がメインだったので、目的は限定的でした。

(A)日記を書いてモチベーションを上げる。
(B)好きな作品を紹介する。アフィリエイトで、自分が紹介したものが売れると嬉しい。
(C)同人誌を紹介するページを作る。
(D)気になるサイトを紹介する。

あと、掲示板も使っていましたが、あまり記憶に残っていません。

●2. ブログの時代/はてぶの時代

2004年から、「はてなダイアリー」を使い始めます。ホームページはFTPでいちいちアップロードしなければいけないので面倒でした。ただ、ブログの使い方は大きく変わっていません。

この時に自分の資料のインプットも増えてきており、ブログでのアウトプットが最も増えていた時期に思います。特に楽しかったのが英語版のDVD『MANOR HOUSE』の紹介で、アフィリエイト経由で20〜30枚以上売れたと思います。Region 1で英語版しかないにもかかわらず、です。

この時代はコメント欄やweb拍手で内容への反応をいただいていたと思います。

もうひとつ、新しい刺激が「ニュースサイトからの紹介」と「はてなブックマーク」でした。仕事でアクセス解析をやっていたので、流入が増えた場合の原因特定は日常的なものでした。その中で、よく紹介してくれるサイトがいくつかありました。そのうちの一つの主催者の方とは、その後、交流が生まれました。

「はてなブックマーク」に関しても、面白かったですね。

(A)反響が可視化される。大きいとモチベーションになる。
(B)後述するTwitterのように書き込みしやすく、アカウントで個性が認識できる。
(C)書き込みの中に、参考になる・補完されるものも多い。

この時に、「まずはネットでわかっていることを書いてみる」、そして不足している部分や自分が気づかぬ視点を学ぶ、というのを実践した気がします。

●3. 初期SNSの時代

SNSはmixiを主に使っており、面識がある人メインでした。自分でもコミュニティを立てることもありましたが、基本的には見ていることばかりでした。「好きなテーマだけで人と繋がれる」「コミュニティの規模の大小の差がある」ことなどは面白かったです。

ただ、あまりネットでの交流を主眼にしていませんでした。読まなければいけない本が山ほどあり、仕事もベンチャー企業で忙しく、他に別の趣味も持っていたためです。

「ネットで情報発信とアカウントが紐付きやすいか」は、コミュニティ形成に重要で、その本質的なところが広がったのはTwitterのように思います(はてなダイアリーやはてぶも)。

●4. 私が使っていないサービス(動画、イラストなどのサイト)

2006年のニコニコ動画や、2007年のpixivなどの「コンテンツを発表するプラットフォーム」については、自分がどちらの発表素材も持っていないので、主に見る側としてにとどまりました。

正確な日付を忘れたのですが、コミティアでこのサービスの強さを見ました。最初にpixivがコミティアと共催でイベントを行った際にはあまり人通りも多く見えず、コミティアでもイラストのみの同人誌はあまり混んでいなかった印象があります。それが数年で、一気に変わったように思います(イラスト投稿SNSではTINAMIもありましたが)。また、ニコニコ動画で漫画を発表していた作家がコミティアに初参加した際、そのサークルに来る人たちは若い人たちでした。

同人誌即売会で同人誌を通じてファンが生まれるだけではなく、プロ作家や著名人のようにネットでの活動が先にあり、そこで知ったファンが同人誌即売会に来る、という流れが2000年代後半にはできるプラットフォームが育っていったように思います。

●5. Twitter

私がTwitterを使い始めたのは2009年ぐらいで、きっかけは会社の同僚に進められてだったような気がしています。ただ、劇的に使い勝手が変わった感じもしました。

(A)同人誌の読者の人が可視化される。感想が読める。
基本的にホームページやブログがメインだったので、自分の本を買っている人がどういう人か知る機会は少ないものでした。同人誌即売会で、「どこで興味を持ったのか?」を教えてくれる人がいたり、「どこが好きか?」を自分で聞いたり、あるいは感想を下さる方のメールだったり、というところでした。

それがTwitterによって、挨拶の時にアカウントを教えてくれたり、会場に行くと教えてくれたり、感想を呟いてくれたりと、変わりました。顔を知っていた「常連の人」の顔とアカウントが一致することも増えました。

(B)「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」
講談社から『英国メイドの世界』を出版した時、フォロワーが増えました。フォローされることで、フォローした人の属性が垣間見えるのは、同人誌即売会での交流で得たものと同様です。特に驚いたのが「メイド喫茶クラスタ」からのフォローでした。店長・店員から、喫茶に通う人まで様々でした。

この時の縁がきっかけで、オフ会に行ったり、メイド喫茶同人誌に寄稿したりとする機会が生まれました。

(C)ブログを書く機会が劇的に減る
日々、簡単にアウトプットできる先が増えてしまったことで、ブログの更新機会が尋常ではなく減りました。以下、ブログの記事数の変遷です。仕事が忙しかったことも影響していますが…… Twitterで熟考しなくなる、過去の自分が必要としない情報も入ってきてその情報にリソースを取られる、というのもあると思います。

▶ 2019 (2)
▶ 2018 (8)
▶ 2017 (10)
▶ 2016 (10)
▶ 2015 (5)
▶ 2014 (18)
▶ 2013 (16)
▶ 2012 (28)
▶ 2011 (131)
▶ 2010 (128)
▶ 2009 (191)
▶ 2008 (382)
▶ 2007 (260)
▶ 2006 (216)
▶ 2005 (328)
▶ 2004 (199)

●6. 情報発信:note

2018年ぐらいにnoteも使い始めました。UIがシンプルなのと、人により多く読んでもらえそうなので。このテキストもnoteを使っています。

課金できるのも研究資金を得る意味で大きいですが、まだそんなに設計ができていません。

●7. 個人サイトへの回帰

WordPressで個人サイトの運営が多少楽になったので、回帰しました。英国メイド研究の資料や、自分の出版情報、メイドブーム考察テキストなど、アーカイブとして残しておきたいものについてはこちらの方がカスタマイズがしやすいと思ったからです。ただ、モバイルに適した気に入ったテンプレートがなかなか見つからないのが悩みです。

メイド研究や執事研究

メイドカルチャー史専用

そして、唐突に思い出しました。使っているさくらネットがブログサービスを始めたので、超短編小説を公開していたことを。小説家になろうなどでの発表は考えていたものの、あまり行えていませぬ。

長くなってきたので、これも前後編で。次は以下を想定しています。

・電子書籍の活用(パブー)
・ネットの活用(一緒に原稿を作る編)
・同人誌即売会の変化
・委託の変化(イベント内委託から、同人ショップへ)

終わるかな?

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