見出し画像

英国旅行記2016年9月 Shugboroughへ

旅行記を書き忘れていたのでまずは2016年の英国旅行から書き始めます。

最初の目的地はカントリーハウスのShugboroughです。StaffordにあるLichfield伯爵家の屋敷で、私がこの屋敷を知ったのは、(1) 最初期に購入した家事使用人研究資料『The Country House Servant』の著者Pamela Samborrok氏がここでキュレーターをしていたということと、(2)NHKで放送した1900年の中流階級家庭の暮らしを三ヶ月体験する『THE 1900 HOUSE』で家事を体験する場だったこと、そして(3)アニメ『英國戀物語エマ』のメルダース家の外観のモデルになっていたこと、によります。

滞在先はStaffordで、そこからバスでだいたい40分ぐらいで行くことができます(Google Map)。バスを降りて入り口を進んでいくと、農場があります。羊の群れも歩いています。

1. Walled Garden

入場して最初の訪問地は、Walled Garden、壁に囲まれた英国の庭園・菜園です。私たち日本人には「秘密の花園」で馴染みがある場所です。

壁に木が打ち付けられたようになっていますが、狭い面積を有効活用し、日照を最大化するためにこうした技法が用いられます。

ガーデナーのボス・ヘッドガーデナーの家です。立派ですね。

こちらが裏手のガーデナーの寮・作業場への入り口。

2. 屋敷ShugboroughのUpstairs(主人エリア)

Walled gardenを出てから、数百メートルを歩いて屋敷へと向かいます。

そして玄関から入ります。

そこからprivate tourでガイドの方に伴われて、屋敷の中を散策します。屋敷ツアーはマイペースで見られず、撮影時間も限られるのであまり好きではないのですが。

天井と対になっている絨毯の模様。こういうインテリアは好きです。

使用人用の部屋への階段?記憶が曖昧です。

寝室。

ドレッシングルーム。

ブレックファストルーム。窓際にトワイニングの紅茶箱。

キッチンは近代化。屋敷の2階にあるので、かつての地下にあるようなものではなく、利便性を考慮して生活空間として使うものへ。

家事使用人の呼び出しベル。ここも近代化。

3. 家事使用人エリア(Downstairs)

Shugboroughのメインは屋敷本体よりも、この家事使用人エリアです。とにかく様々な設備が保全されています。ただ、屋敷の地下にあるわけではなく、Servants' quartersという使用人用の離れになっています。このおかげで、最も充実している家事使用人の職場エリアとなっています。

こんな感じで建物に囲まれた中庭。

コーチハウス。色々な馬車が展示されています。

中庭の使用人用トイレ。

こんな感じでシンプル。夜は使いたくないです。

壁に貼ってあった19世紀の家事使用人たちの職位階層図(レポートライン)。最上位に伯爵家、その直下はLand Agentとそのチーム、そこにトレジャリー(財務)、ビルダー・プランタ(建築、木工、家事など)、ファームベイリフ(農場管理者)、ゲームキーパー(猟場管理人)、ハンツマン(狐狩りの管理者)、ガーデナー(庭園管理人)、そしてハウススチュワード(家令。家政統括)がダイレクトレポートでした。

このハウススチュワードの下に、上級使用人であるバトラー(室内の男性使用人統括)、シェフ(フランス人料理人、料理部門統括)、ハウスキーパー(家政メイド統括)、ガヴァネス(女家庭教師)、ヴァレット(主人の身の回りの世話をする近侍)、そしてレディーズメイド(侍女)がいました。

この屋敷ではハウスキーパーのレポートラインに、ナース(乳母)、ハウスメイド、スティルルームメイド、ランドリーメイドがいました。

4. キッチンとスカラリー

そして本命のキッチンとスカラリー(洗い場)です。

窓際でメイド役の人が作業中。

とてつもないことに、キッチンレンジに火が入っています。熱い。

動画を。

隣に小さめのレンジ。

別角度からメイドさん。料理を実演しています。

入ってきた入り口を振り返って撮影。天井が高いのは温度が上がりやすい場所であり、換気・温度管理のため。

流し。

窓際の食器を乾燥させるための棚。

こちらが食品保管庫。

狩猟で得た鳥を管理するゲームラーダー。

執事の部屋だったような。

使用人が食事をしたり、集ったりした使用人ホール。席次あり。

ハウスキーパーの保管庫。

執事が管理する銀器保管庫。

5. ランドリー

冒頭で取り上げたPamala Sambrook氏の本は「ランドリーメイド本では?」と思えるほど、ランドリーメイドの情報が充実していました。その充実する知識のバックグラウンドとなっていたのが、このエリアです。私にとっては、知識で得たことを実地で見る機会になりました。

洗い場。お湯を沸かして衣類を入れます。

窓際の洗い場。

洗濯板。

ローラーで脱水・伸ばす。

こちらが蒸気がこもり、水浸しになる部屋ならば、奥に衣類を乾燥させたり、アイロンをかけたりする部屋があります。

タイツも干せる足型でOK?

白タイツでOK?

アイロン。

アイロンとモブキャップ(奥)。

フリルのモブキャップ。

こんな風な襞の作り方。

そのアイロンを熱するためのアイロン用ストーブ。熱そう。

真ん中の大きな器具はシワを伸ばす器具。石を重しにしている。

6. 潜入・メイドの寝室

別角度。

洗面器とかヒップバス。

プライベートの荷物管理用の箱。

興奮しすぎて手ブレしまくった、ハウスメイドボックス。ハウスメイドが掃除をするときに必要なブラシなどを持参するための箱。

ハウスメイドの制服と遭遇。尊い。1890年代。

別角度から。レースがすごい作り込み。

これがランドリーメイドの制服、だと?(1880年代) 尊い。

メイドキャップ。20世紀。よく見えない。。。

おまけ。フットマンのかぶったカツラ(1920年代)。

7. そのほかいろいろ

展示エリアにはほかに、当時の教室や薬局、街並みなど色々と残っています。

教室。『赤毛のアン』などで見たような?

子供部屋とおもちゃ。ピンボケがひどい。

薬局。

パッケージ。

仕立屋さん。ここもピンボケ。

LYONS TEA SHOP?

そして厩舎。

さらにビールの醸造所。でかいです。屋敷はビールを作ることもありました。

Pamela Sambrook氏は、この屋敷のビール醸造で本を書いています。

8. 屋敷の庭園から

最初のWalled gardenとは異なり、主人たちが散策する・鑑賞する庭園。屋敷の定番コースなので、最後に必ず行きましょう。

そして撤収。

と思いきや、まだ行く場所があります。農場の施設が別にあるのです。

アップ。右下が屋敷。

9. 農場の建物

こっちにもキッチン。施設の方達が実演中。

食器乾燥の棚もありますね。

そして、デイリーメイドが働いたであろう、デイリーです。ここ、本当に使っているので、学校で牛乳をこぼしたときに使った雑巾の臭いがします。

床は水はけが良い石材を使い、水で洗い流せるようになっています。

そして作業台も大理石で熱を持たないようになっています。

バター作成の攪拌用の樽に、押しつぶす用の器具です。

水の排水溝。滑りやすいので気をつけての標識も。

意外にも上の階に行けます。プチ屋敷。

そしてここにも使用人部屋。

ちょっと狭い。

別角度。天井も低い。

建物を通り抜けると、中庭があり、厩舎や作業場になっている。

猫。

馬車の車輪を製作する職人の作業場。

馬車の備品などもここでメンテナンス。

アヒルの王国。

馬が噛むので気をつけろ、という警告がある厩舎。

恐る恐る覗いてみると、中にいたのは、お前なのか!(弱々しい)

他に牛もいるけれど、ここでは不在。デイリーがあるぐらいなので、牛乳もここで自給自足なのです。

あとは農場のくらしの博物館的な展示に。そしてそこにはデイリーメイドコスプレセットが(一応、農家の妻の服もあり)。

お仕事セットも展示しています。

あと水車もあって、粉挽き小屋にもなっています。

おじさんたちが粉を挽いています。しかも買えます。

そして終了。

もう一度、羊。

牛も。

終わりに

というところで、だいたい朝10時には到着して周辺を散策して11時に開場、そこからキッチンガーデンを散策してから屋敷へ向かい、主人たちの生活エリアを散策してだいたい1時間ぐらいです。

そこから使用人エリアを2周ぐらいして、屋敷の表の庭園を歩き、そして農場・厩舎などを訪問して、3〜4時間ぐらいの滞在でしょうか。Shugboroughは屋敷本体がややモダンな生活エリアとなっているので、本命は家事使用人エリアになっています。

こうして振り返ると、自然も多く、動物も多く、いろいろと体験できる屋敷らしさが溢れている場所でした。

続編



いただいたサポートは、英国メイド研究や、そのイメージを広げる創作の支援情報の発信、同一領域の方への依頼などに使っていきます。