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Mashup Awards 2017の審査を終えて

リクルートが主催するハッカー達の祭典、Mashup Awardsが今年も幕を閉じました。なんだかんだで3年くらいかな、決勝戦の審査員をやらせて頂いてるのですが、毎年エッジのたった作品を純粋に楽しんでいるのと同時に、テック界隈の現場の人達の色んな肌感を感じさせてもらってもいます。感想。

ハードウェアが普通に

今年の感想は、とうとうハードウェアプロトタイピング(いわゆるデジタル体験のアイデアを実現する動く物理的な試作)が当たり前になって来たなというのが一番かもしれません。もちろんハードウェアプロトタイピングそのものはずっと前からやってる人は多いんだけど、今年はもう「モノ作っててすごいね~」的な感想が完全に場から消え失せてる感じ。そのくらいハードウェアプロトが普通になってます。ラズパイやarduinoは当たり前、FusionPCBやP板使ってオリジナル基板作るのも珍しくない。優勝チームもElephantechのP-Flex使ってたし。決勝に残ったものがほとんどハードウェアでした。これはMAに限らず、世の中が画面内で出来ることの先を期待している、google,amazon,facebookもハードウェアに来てることともちろん無関係ではないですよね。時代はハードウェア再定義のフェーズ。(IoTとはあえて言わない。あれ、モノのインターネットって変な和訳されてて原義と違うとおもってるので)

チーム戦の時代

MAが始まった当初はAPIを組み合わせる(いわゆるMashup)コンテストだったので、GoogleMapにこれこれおきましたとか系ばっかだったらしい。私が審査に加わったときもやたらとTwillioで頑張るアイデアばっかだった記憶があります。その時代はAPI組み合わせてWebアプリケーションを作るだけでみんながそれなりに驚いてくれた時代でした。ただ各言語やプラットフォーム上で、様々な高機能のライブラリやAPIが充実しまくるうちに、ちょっと面白いアイデアは一日で実装してSNSで披露されるようになりました。そうすると本当にみんなを驚かせられるものはハードウェアなどの実装コストが重いもの(少人数で具現化は大変なやつ)になっていき、その実現のためにすごいやつで構成されたチーム総力戦の時代になってきています。これは実ビジネスの世界と一緒ですね。よほどの局地戦でもない限り、凄腕エンジニアやデザイナーが一人で戦局をひっくり返すことはもう難しい。

デザイナー参加者少ない

そんなハードウェア、チーム戦の時代にMAに足りてないなぁと思うのはデザイナー系参加者。ハードウェアがアイデアとして増えてきているのもあるし、私自身がコアがインダストリアルデザイナー(工業デザイナー)なのもあり、プロダクトデザイナー系参加者がコミュニティに入って来るのを期待してたりします。インターフェースやUXのデザイナーもあんまりいない感じがします。コミュニティに本職デザイナー増えたら各作品の仕上がりや体験のスマートさが一段上がる気がする。デザイナーはアイデアの文脈やコンセプトを整理するのも得意なのでプレゼンもわかりやすくなるだろうし、製品化できるアイデアも増えるんじゃないかな。まだ多くのアイデアが、「技術屋視点が強すぎる動作モック」で終わってしまっているので(MAは作りたいものを作る場でもあるのでそれはそれでいいんですけどね)。今年優勝したチームはリーダーがデザイナー&エンジニアだったからかやっぱりクオリティが一段違ったし。技術すごいんだけど、プレゼンや文脈がよくわからんという惜しいチームは毎年多い。そして実ビジネスの現場でもそういうスタートアップ未だに多い(あんなにスタートアップ界隈の経営者やテックジャイアント企業がデザイナー大事だぜ!って言いまくってるのに、創業メンバーや重要ポジションにデザイナーがいなかったりする)。そして、このテック時代にもかかわらず、デジタル苦手なデザイナーも多いので、勉強も兼ねてMAに参加するといいんじゃないのかなぁ。そうすると色々コミュニティが繋がって社会に色々良い影響が還元されそう(経験談として、コードもかけて、メカもインフラもテックビジネスもチームマネジメントもわかるデザイナーになると引き合いすごく多いですよ)。

コミュニティという存在

そんなMAは来年から運営主体をリクルートではなく、新設する社団法人に移すらしい。MAのコミュニティは日本全土に存在してて、公共性が高くなったという理由もあるようです。MAの運営チームが今みたいなMAコミュニティ作ったのは本当にすごい。エンジニアカルチャーのコミュニティって貴重だなぁといつも思う。コミュニティで作られるオープンソースのソフトウェアやコミュニティがお互いに課題を解決し合うあの文化。多分他の職域の人ではわからない、ユニークでかけがえのない文化。こういうあやふやな人の集まりから生まれた技術やコンセプトが我々の暮らしを実は支えてるんですよね。あんま知られてないけど。

とりあえずMA参加者と運営の皆さま、お疲れ様でした。
(トップの写真は、なぜかコンセプトが牢獄だった会場のフォトブースでいつもの審査員チーム。はてな栗栖さん、コーヒーミーティング山本さん、BASEえふしんさん、リクルート麻生さん、と私)

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